「家具以外」に進出も頭打ち、業績不振の「ニトリ」に起死回生の策はあるのか?

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2025年12月23日 06:00  ITmedia ビジネスオンライン

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出所:ゲッティイメージズ

 家具販売大手のニトリホールディングス(HD)が苦戦している。コロナ禍では巣ごもり需要により業績を伸ばしたが、2024年3月期にピークアウトし、2025年3月期は前年比で3.6%の増収になったものの、営業利益は5.3%のマイナスとなった。今期も半期時点で減収減益だ。


【画像】融合店舗の「ニトリホームズ」


 国内のピークアウトは以前から予想されていたため、ニトリHDは島忠の子会社化や海外展開など、多角化を進めてきた。だが、いずれも不調である。家電や調理器具といった家具以外を強化しているが「強力なライバル」がいる分野であり、実店舗ではその迷走ぶりがうかがえる。


●成熟市場の家具業界で、2000年以降に台頭した


 1967年に札幌市で創業したニトリは2000年以降の成長が著しく、現在は国内外に1000店舗超を展開する。通期として直近の決算である2025年3月期の売り上げは約9289億円と、1兆円をうかがう勢いだ。


 国内家具市場の規模は1991年に3兆円のピークを迎えたが、バブル崩壊後は低価格化が進み、現在では1兆円ほどまで縮小している。衣料品の低価格化に合わせてユニクロが台頭したのと同様、ニトリは低価格化時代に家具を安く提供することで、消費者の支持を集めた。2015年以降は駅周辺の商業施設に出店し、都市部を強化している。


 ニトリは家具の設計・製造や物流、販売までを一貫して手がけることにより中間コストを削減し、低価格化を実現している。小ロット品は国内の家具メーカーから調達するが、売れ筋の商品は東南アジアの自社工場で大量生産するなど、調達網を使い分けている。


●ここ数年は成長が踊り場に陥った理由


 ニトリの事業単体で見ると、コロナ禍では巣ごもり需要がけん引したうえ、積極的な出店や首都圏でホームセンターを展開する島忠を完全子会社化したことで売上高が大幅に拡大した。


 しかし、ニトリHDの成長は既にピークアウトしているといえる。2023年3月期は決算期を変更し、2025年3月期は会計基準を変更しているため単純比較できないが、減益が続く。


 今期は売上高が前年比6.4%増・営業利益も同じく15.4%増を同社は予想しているが、半期時点でそれぞれ1.8%減・6.9%減と目標達成は難しい状況だ。国内ニトリの既存店業績は4〜11月累計で、客数前年比92.4%・売上高同96.6%と前年を下回っている。


 人口減少が進む国内でこれ以上の需要拡大が見込めないと言えばそれまでだが、近年の業績悪化は物価高も影響している。食料品の価格が高騰する中、比較的必需性の低い家具の買い控えが起きた。


 また、家具は引っ越し時に購入するものである。近年では引越者数の減少が顕著で、その影響も受けたと考えられる。海外事業では、中国大陸の店舗数が2025年3月期末時点の100店舗から、9月末には79店舗まで減少した。大型店で集客しようとしたが、中国では景気悪化で消費控えが進んでおり、その影響を受けたようだ。


●「家具以外」に進出も、なかなか伸び悩む


 もっとも、国内における家具需要の減少は以前から予想されていたことであり、ニトリは家具以外を強化する作戦を打ち出してきた。店内では食器類やカーテンなども販売している。だが、食器・日用品雑貨のジャンルでは「無印良品」や「3COINS」などの強力なライバルが存在する。ブランド力では無印良品の存在感が大きく、ニトリの雑貨は家具のついで買いや安さ目当てで買うものと位置付けられる。


 家電も注力分野の一つだ。2009年度に小型家電を販売し始め、近年はプライベートブランドで大型家電も販売している。2022年には家電量販店大手エディオンと資本業務提携を結んでいるが、報道によると家電の年間売上高は300億円に留まり、主力商材にはなっていない。


 筆者の所感では、ニトリの大型家電は相場より2〜3割安いものの、ネット販売や家電量販店次第では同じ価格帯で日本国内メーカーの同等製品を購入できるケースもあるため、あまり優位性はないように見える。


●島忠の「ニトリ化」も悪手?


 2021年に取得した島忠事業も業績は芳しくない。


 島忠は家具屋とホームセンター機能を兼ね備えた店舗で、ニトリHDは商品の相互補完や、プライベートブランド開発の強化、物流機能の共同利用によるコスト削減などのシナジーを見込んでいた。2021年8月期末時点で61店舗を展開していたが、2025年9月末時点で52店舗と減少している。不採算店を閉鎖したほか、一部店舗をニトリに切り替えた。


 ニトリHDはナショナルブランド商品を削減し、プライベートブランド商品を投入するなど、島忠の「ニトリ化」を進めてきた。しかし、島忠に来店する客はニトリの商品を求めていないため売り上げが伸びず、失敗した経緯がある。


 島忠は高価格帯のカリモク家具を扱うなど、低価格志向のニトリとは価格帯が異なる。一般的に日用品・家具・家電など、異なるジャンルの商品を一店舗で販売する場合、コンセプトを明確にするためには価格帯をそろえなければならない。「ニトリ化」後の島忠は、両者の商品を混ぜたことでコンセプトがぼやけてしまい、購買を促せなかったと考えられる。


 筆者は2カ月前に島忠ホームズの三郷中央店を訪れたが、ホームセンターらしい工具などの商品が少ない一方、ニトリの家電や雑貨、ニトリプライベートブランドのレトルトカレーも販売しており、何を打ち出したい店舗か明確に把握できなかった。島忠をどういう店にしたいのか、そのコンセプトを明確にする必要があるだろう。


 国内のニトリは人口減少の影響を避けられない。海外事業を伸ばせるのか、または島忠の収益を改善できるのか、ニトリHDは厳しい岐路に立たされている。


●著者プロフィール:山口伸


経済・テクノロジー・不動産分野のライター。企業分析や都市開発の記事を執筆する。取得した資格は簿記、ファイナンシャルプランナー。趣味は経済関係の本や決算書を読むこと。



このニュースに関するつぶやき

  • シマホのニトリ化は明らかに失敗だよ。駐車場を見れば分かるが、来客数が桁違いに減っている。シマホは毎週行ってもいいが、ニトリは年に一度でいいからねぇ。
    • イイネ!14
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