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「なぜ月曜日だけ、あいつはあんなに仕事が遅いんだ……」
あるIT企業の課長が、そうこぼした。チームの若手社員が、月曜日だけ明らかにペースを落としているという。メールの返信は遅く、会議での発言も少ない。火曜日以降は普通に働くのだが、月曜日だけ別人のようだと。
「本人に聞いたら、『月曜は最低限の仕事だけにしてます』って、悪びれもせずに言うんです」
課長は困惑を隠せなかった。いま若者の間でひそかに広がっている「頑張らない月曜日」という働き方である。
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そこで今回は、この「頑張らない月曜日」の実態と副作用について解説する。若手の働き方に違和感を覚えているマネジャーは、ぜひ最後まで読んでもらいたい。
●「ベア・ミニマム・マンデー」とは何か?
「頑張らない月曜日」の正式名称は「ベア・ミニマム・マンデー(Bare Minimum Monday)」という。直訳すると「最低限度の月曜日」である。
米国のTikTokクリエイターであるマリサ・ジョー・メイズが2023年頃に提唱し、SNSを通じて広まった。月曜日は心身の負担を抑え、必要最低限の業務だけをこなす。そうすることで、長い一週間を乗り切ろう、という考え方だ。
背景にあるのは、米国で長く続いた「ハッスル・カルチャー」への反動である。仕事至上主義を美徳とする働き方が、コロナ禍を機に見直された。燃え尽き症候群(バーンアウト)の原因として批判が高まり、柔軟な働き方やプライベートを優先する価値観が支持されるようになったのだ。
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また、週末明けの憂鬱(ゆううつ)、いわゆる「ブルーマンデー症候群」への対処法として考えられた、ともいえる。日曜の夕方から月曜にかけて気分が沈む。その苦しさを和らげるために、月曜日の負荷を意図的に下げるのだ。
●日本の若者にも静かに広がりつつある
この考え方は、日本の若い世代にも浸透しはじめている。
月曜日だけリモートワークを選び、カフェで軽めの業務だけをこなす若手社員が増えているという。本人たちに悪気はない。「ペース配分をしているだけです」という感覚だ。
確かに、週5日を均一のエネルギーで走り続けるのは難しい。月曜日にセーブして、火曜日以降に本領を発揮する。そう考えれば、合理的に聞こえなくもない。
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だが、本当にそうだろうか?
●月曜日に力を抜くことの「副作用」
頑張らない月曜日には、見過ごせない副作用があると私は思っている。
業務の遅延とアウトプットの質の低下
月曜日に先送りした業務は、火曜日以降に上乗せされる。結果として週の後半に負荷が集中し、質が落ちる。ペース配分のつもりが、単なる先送りになっているケースは多い。
周囲への負担増加
チームで仕事をしている以上、1人が月曜日にペースを落とせば、その分を誰かがカバーすることになる。本人は「自分のペース配分」だと思っていても、周囲から見れば「月曜日だけサボっている人」と見られても仕方がない。
週全体のリズムが崩れる
ゆっくり始めて徐々にギアを上げる。一見すると合理的だが、実はこれが最も非効率なやり方なのだ。
この3つの副作用は、本人が自覚しにくいところに厄介さがある。「自分を守るための工夫」が、いつの間にか「自分の評価を下げる行動」「非効率的な姿勢」に変わっている。そのことに気づかないまま月曜日を過ごしている人は少なくない。
●F1に学ぶ「スタートダッシュ」の重要性
ここで、F1レースにたとえて考えてみたい。
F1で最も楽に勝てる方法は何か。それは、予選でポールポジション(先頭位置)を勝ち獲ることである。
ポールポジションからスタートすれば、前に誰もいない。自分のペースで走れる。無理な追い抜きも必要ない。タイヤの消耗も抑えられる。つまり、最初に全力を出すことが、結果的にレース全体を楽にするのだ。
一方で後方からスタートするとどうなるか。前の車に阻まれ、オーバーテイクのたびにリスクを負う。タイヤもブレーキも消耗が激しい。追い上げのために、レース後半でさらにエネルギーが必要になる。
仕事も全く同じである。
月曜日に力を抜いて、火曜日から徐々にエンジンをかける。これは後方グリッドからスタートするようなものだ。週の後半になるほど負荷が増え、金曜日には疲弊している。
何事も最初が肝心だ。月曜日の午前中に集中して重要な仕事を片づける。これが「ポールポジション戦略」である。最初に全力を出すからこそ、週の後半に余裕が生まれる。
●本当の「ペース配分」とは何か
誤解のないように言えば、私は「月曜日から無理をしろ」と言いたいわけではない。
大事なのは、力の入れどころを間違えないことだ。月曜日に最低限の仕事しかしないのは、ペース配分ではない。単なるスロースタートである。
本当のペース配分とは、週の前半に重要度の高い仕事を集中させ、後半に負荷の軽い業務を回すことだ。月曜日の朝こそ、最も判断力が求められる仕事に取り組む時間にすべきである。
「頑張らない月曜日」を実践している若者に伝えたい。あなたが避けている月曜日の負荷は、消えるわけではない。火曜日以降の自分に押しつけているだけなのだ。
●週のレースは月曜日の朝に決まる
F1ドライバーは、予選に全力を注ぐ。なぜなら、スタート位置がレース結果の大半を決めるからだ。
ビジネスパーソンにとっての予選は、月曜日の午前中である。ここで勢いをつけられるかどうかが、一週間の成果を左右する。
もし本当に力を抜く日がほしいなら、月曜日ではなく金曜日にすべきだ。月曜日にセーブするから、火曜日以降に皺寄せが来る。木曜、金曜には疲れ果て、週末も回復しきれない。悪循環である。
逆に、月曜日から全力でスタートし、週の後半に向けて負荷を下げていく。金曜日は頑張らず、週末は好きなことをしてリフレッシュする。そして月曜日、また全力でスタートダッシュを切る。このサイクルのほうが、はるかに効率的だ。
「頑張らない月曜日」ではなく、「頑張らない金曜日」。この発想の転換が、一週間を最も楽に走り抜ける方法だと私は考えるが、どうだろう。
著者プロフィール・横山信弘(よこやまのぶひろ)
企業の現場に入り、営業目標を「絶対達成」させるコンサルタント。最低でも目標を達成させる「予材管理」の考案者として知られる。15年間で3000回以上のセミナーや書籍やコラムを通じ「予材管理」の普及に力を注いできた。現在YouTubeチャンネル「予材管理大学」が人気を博し、経営者、営業マネジャーが視聴する。『絶対達成バイブル』など「絶対達成」シリーズの著者であり、多くはアジアを中心に翻訳版が発売されている。
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頑張らない月曜日、若者に広がる(写真:ITmedia ビジネスオンライン)45

頑張らない月曜日、若者に広がる(写真:ITmedia ビジネスオンライン)45