なぜアパホテルは「同じ部屋で4倍の価格差」で、東横インは「連休でも値上げしない」のか

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2026年04月14日 05:10  ITmedia ビジネスオンライン

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ホテルの価格はどう決められているのか

 ホテル業界では、週末に1万円以上する部屋が、平日には数千円程度で予約を取れる場合がある。その日の需要に合わせて価格を変える「ダイナミックプライシング」(価格変動制)が一般的だからだ。


【拡大画像】東横インは「原則ワンプライス」を掲げる


 代表例が「アパホテル」だ。ビジネスホテルにもかかわらず、繁忙期には高級ホテル並みの価格に設定することが多い。対する「東横イン」は価格に上限を設けて大幅な変動がない「原則ワンプライス」にこだわる。両社は運営方法やターゲット層が異なり、その違いが価格設定の差につながっているようだ。


●都市部では宿泊価格が高騰


 昨年、都市部における宿泊価格の高騰が話題になった。ホテルでは観光客数や為替、周辺施設の相場に合わせて価格を変動させるのが一般的なため、インバウンドの増加に伴い価格が上昇した。都内では週末のビジネスホテルの客単価が2万〜3万円を超える事例も見られた。


 2025年11月に、中国政府が日本への渡航自粛を呼びかけたことで中国人観光客が減少し、宿泊価格は落ち着きを見せた。しかし、今でも週末に1万円以下で泊まるのは難しく、1万5000円以上が相場だ。一方、平日なら6000円台で泊まれる部屋も現れる。同じ施設でも日程によって価格変動が大きく、ダイナミックプライシングが普及している。


 東横インは「原則ワンプライス」を掲げ、「平日・日曜」と「土曜・休前日」の2パターンで価格を固定している。都内の施設では平日は8000円台、週末は約1万円と曜日ごとの差が小さい。そのうえ、ゴールデンウイーク期間中でも2万〜3万円以上に跳ね上がることはなく、通常時と同程度の価格で提供している。


 しかし、繁忙期や週末は他社より安いため予約が埋まっていることが多く、消費者から見ると直前に利用するのは難しい。


●東横インが価格を固定する狙いは?


 ワンプライス制度に関して、東横インは「ビジネス出張でもプライベート旅行でも『予算内で泊まれる価格』を上限価格とする」という方針を示している。


 公式Webサイトでは同社の調査結果を引用しつつ、プライベート目的では平均1万5000円、ビジネス目的では平均1万2000円を、それぞれ予算内で泊まれる価格の目安としている。実際に都内のシングル料金は、おおむねこの範囲内に収まっている。


 東横インが価格を固定するのは、顧客に安心感をもたらし、常連客を獲得するためだ。特にビジネス利用の客を重視しているため、出張手当の範囲内に抑える狙いがある。


 少し前のデータだが、財務省が2023年に公表した出張旅費規程のアンケート調査によると、国内宿泊料の平均額は約1万1000円で、おおむね1万4000〜1万5000円が上限額だ。宿泊料金を1万5000円以上にしてしまうと、ビジネスパーソンが利用しにくくなる。


 インバウンドが増えている昨今の状況は、ホテル業界にとって稼ぎ時だ。だが、東横インはコロナ禍以前からインバウンドに注力していなかったこともあり、宿泊客に占めるインバウンド比率は約10%と、業界全体(約25%)を下回る。ビジネス利用の常連客を失わないために、価格を固定しているのだ。


●アパホテルは3〜4倍の価格差


 対するアパホテルはダイナミックプライシングを採用し、同じ部屋でも価格変動が大きい。


 池袋駅北口店における5月のシングル宿泊料金を調べると、月曜や水曜などの最安日では1万円を下回るのに対し、土曜日には2万6000円を超える日もある。執筆時点での最安値(6000円)と最高値(2万6200円)の差は4倍以上だ。


 宿泊料金については各施設の支配人に決定裁量を与えており、価格は店舗によって大きく異なる。「稼げる時に稼ぐ」というのがアパホテルのやり方だ。


 東横インと比較すると、アパホテルは直前でも駅前一等地の部屋を予約できることが多い。その代わり、単価は2万〜3万円以上になっている場合がある。


 2010年代後半には極端な価格変動が批判され、炎上することもあった。メディアが実施したアンケート調査で、大手ビジネスホテルの中で満足度が最下位になったこともある。それでもアパホテルはダイナミックプライシングを継続している。


 2月に亡くなった会長・元谷外志雄氏はメディアの取材や著書で「資本主義市場経済では値段は需給で決まる」という趣旨の主張をしており、原価に基づいて価格を決めるやり方には否定的だった。


●インバウンド比率にも差


 アパホテルのインバウンド比率は3割超と、東横インより高い点が特徴だ。また、元谷外志雄氏の保守的な政治信条から、中国・韓国よりも米国・台湾の客数が多い。宿泊期間が長く、単価の高い欧米・豪州客の多さはアパホテルの強みとなっている。


 インバウンド客にとって、日本のホテルの相場は分かりにくいものだ。旅行の時しか利用しないため、価格が大きく変動してもブランドイメージの毀損(きそん)につながりにくい。


 また、円安の影響で日本の物価は他の先進国に比べ、1.5〜2倍程度安いと見られている。欧米客にとって2万円を超える価格は高値ではなく、大幅な価格変動があったとしても受け入れられる範囲に収まっている。


 経営体制を比較すると、東横インは直営主義であるのに対し、アパホテルは直営とFC(フランチャイズ)の両軸で展開している。約14万室(アパ経由で予約可能な他ブランド施設「アパ直参画ホテル」を含む)のうち、1万室を加盟店が運営している。


 近年、老朽化した施設や集客に悩む宿泊業者によるアパグループへの加盟が相次いでいる。加盟店が支払うロイヤルティーは売上高の4%以上だ。こうした事情も施設ごとの価格差をもたらしている。


 インバウンドの増加で他の宿泊施設も価格変動が大きくなり、アパホテルに対する批判の声は、以前ほど聞かれなくなった。むしろ上限を設定する東横インの方が珍しい施設になりつつある。国内のビジネス客かインバウンド客か、両社の価格戦略の違いはターゲット層の違いに基づいているのだ。


●著者プロフィール:山口伸


経済・テクノロジー・不動産分野のライター。企業分析や都市開発の記事を執筆する。取得した資格は簿記、ファイナンシャルプランナー。趣味は経済関係の本や決算書を読むこと。



このニュースに関するつぶやき

  • 個人的には^^ 同じ部屋で^^ 高くなるのは^^ 感じが悪いから^^ 原則ワンプライスというのを^^ 支持したいな^^ まあビジネスとしては^^ 儲けられるときに^^ 高くするよな^^
    • イイネ!2
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