限定公開( 5 )

集英社の夏のコミックスフェア「ナツコミ2026」で配布される限定特典「描き下ろしメタキラカード」が、フェア開始前からフリマアプリなどで高額転売されている問題。
集英社はすでに、「ゲーム用カードではない」「サインは印刷」といった異例の注意喚起を行い、書店への問い合わせを控えるよう呼びかけています。しかし、特典配布の最前線に立つ書店の現場では、すでに限界に近い状況が起きているようです。
おたくま経済新聞でも先日この騒動を取り上げましたが、その後、フェア対象店舗で働く現役書店員の真琴さん(匿名)から、現場の切実な声が寄せられました。今回は、想像以上に厳しいその実情を紹介します。
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編集部が真琴さんと最初に接触したのは、フェア開始前日の6月30日のことでした。真琴さんはその時点で、連日寄せられる問い合わせや店頭対応に、すでに疲弊している様子でした。
「ここ数日、電話がかかってきたと思えば、ナツコミに関する内容ばかりで正直、疲弊しておりました。例年、この様な状態にはなっていなかったので困惑しております……」
集英社は公式に「書店への問い合わせは控えてほしい」と呼びかけていますが、その要請もむなしく、現場には営業時間前の早朝から問い合わせの電話が相次いでいたといいます。通常業務に加えて電話対応にも追われ、店舗側は対応しきれない状況に追い込まれていたようです。
問題は電話だけではありません。店頭でも、不穏な空気が漂い始めていました。
真琴さんによると、店頭にある新刊すべてをレジに持ってきた客に対し、店舗側が購入数を制限したところ、「制限があるとは書いていなかった」と強い口調で抗議されるケースもあったとのこと。また、日をまたいで何冊も購入していく客も目立つようになっていたといいます。
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こうした状況を受け、真琴さんはフェア開始前から「何か起こる気しかしていない」と話し、大きなトラブルに発展することへの不安をにじませていました。
例年の「ナツコミ」といえば、集英社のコミックスを購入した際にステッカーやカードなどの特典が付いてくる、期間限定のフェアという位置づけでした。あくまで「おまけ」として楽しまれてきたものであり、これを目当てに大きな混乱が起きることはありませんでした。
ところが今回は、配布特典である「メタキラカード」、特に「ONE PIECE」デザインがフリマサイトで1枚7000〜8000円で取引される異常事態に。これを受け、来店客の動きは大きく変質してしまったといいます。
真琴さんが勤務する店舗では、フェア開始を前に、トラブル防止のため配布方法を急きょ変更。例年は来店客が絵柄を選べる形式でしたが、今回は「ランダム配布」に切り替えたそうです。
一方で、新刊には購入制限が設けられていたものの、既刊、つまり過去に発売されたコミックスには購入制限がありませんでした。この“抜け道”ともいえる状況が、現場にさらなる混乱をもたらすことになります。
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「走って来店したり、人を押しのけて物を取ろうとした人もいたりしました。事前に『100冊買いたい』と言っていた人は、本当に当日2回来店されて、合計200冊近くを買っていきました」
目当てのカード(特典)を大量に入手する目的とみられる形で、コミックスが文字通り「200冊」も爆買いされていく光景。さらに、少しでも早く、多くの特典を手に入れようとするあまり、店内で他の客を押しのけ、コミックスを奪い取ろうとする極めて危険な一幕も発生していました。
また、「ランダム配布」と聞いた途端に立ち去る客や、何度説明しても理解されず、会計の途中で絵柄を選べないと知って購入をキャンセルする客もいたとのこと。こうした対応が繰り返されることで、現場の疲弊はさらに深まっていったようです。
翌日も、メタキラカードを目当てにした来店や問い合わせは相次ぎ、フェア開始からわずか2日目にして、カードの在庫は早くも底をついてしまったといいます。
本来であれば、読者に本との出会いを楽しんでもらうためのフェア。しかし今回、特典を目的とした異常な買い占めや、それに伴う店頭の混乱が相次いだことで、現場には大きな負担がのしかかることになりました。
こうした状況に対し、真琴さんは一人の本を愛する書店員として、強い疑問と切実な悲しみを口にしています。
「会社として既刊を売りたいという気持ちは理解できますが、この様な買い方を容認して良いのか甚だ疑問です……。今日買われていった本が、無下にされないことを願っています」
本来、「ナツコミ」は漫画作品や書店との新しい出会いを楽しんでもらうためのフェアだったはずです。
それが今回は、一部の転売目的とみられる人たちの標的になったことで、本来の主役であるはずの「本」が、特典を手に入れるための手段のように扱われてしまっています。カードだけを目当てにコミックスが大量購入されていく光景は、本を愛する書店員にとって、決して看過できるものではありません。
さらに、7月13日発売の「週刊少年ジャンプ」33号には、連載29周年を記念した「ONE PIECEカードゲーム」が付録として付くことも発表されています。
こちらも大きな反響を呼ぶことが予想されており、真琴さんの勤務する店舗には、すでに数件の問い合わせが入っているそうです。
「自分が直接対応したわけではないので、詳細は分からないのですが、問い合わせが何件かあったみたいです。もう……今から憂鬱です……」
連日の問い合わせ対応によって書店員を疲弊させ、店頭では一般の来店客を危険にさらし、本当にその本を読みたい人や、純粋にカードを楽しみにしているファンの手にも届きにくくしてしまう。今回の騒動は、特典付き販売が抱えるひずみを改めて浮き彫りにしています。
大量に売れれば、版元や販売側にとっては数字上の成果になるのかもしれません。しかし、その裏で現場に負担とリスクが集中しているのであれば、現在の販売・配布のあり方は見直されるべき局面に来ているのではないでしょうか。
<参考・引用>
ナツコミ2026公式X(@shu_natsucomi)
少年ジャンプ編集部公式X(@jump_henshubu)
(山口弘剛)
Publisher By おたくま経済新聞 | Edited By 山口 弘剛 | 記事元URL https://otakuma.net/archives/2026070304.html|
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