限定公開( 8 )

フィギュア、アーティストのグッズ、応援うちわ──。
本来なら手元に置いておきたいはずの「好きなモノ」を、あえて預ける人が増えている。寺田倉庫(東京都品川区)が運営する宅配型トランクルーム「minikura(以下、ミニクラ)」では、預かるモノに占める趣味系カテゴリーの割合が上昇し、直近の調査では衣類を上回った。なぜ、好きなモノを家に置かない人が増えたのか。
ミニクラは、寺田倉庫が2012年に開始した宅配型トランクルームサービスだ。専用ボックスを取り寄せて荷物を詰め、集荷を依頼すれば、倉庫で保管される。月額料金は1箱当たり320円からで、申し込みから取り出しまでがWeb上で完結する。自宅にいながら箱単位で「倉庫」を持てる仕組みだ。
会員数は2020年からの5年で、約1.6倍に拡大。1人当たりの保管数も伸びており、平均は約8箱となっている。要因について、寺田倉庫ミニクラグループのリーダー浅見開氏は「コロナ禍の影響が大きかった」と分析する。
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在宅時間が長くなって自宅の狭さを実感した人と、巣ごもり生活の中で新たな趣味を見つけ、モノが増えた人。この2つの流れが重なり、需要を押し上げたという。
その後も、都市部で住宅の狭小化が追い風となっている。LIFULL HOME'Sの調査(2025年)によると、首都圏の中古マンションで、問い合わせがあった物件の平均専有面積は、2020年からの5年間で約6.5平方メートル、畳4枚分ほど縮小。価格高騰を背景に、より狭い物件へ需要が移っている。
「狭小住宅への関心が高まったことで、ミニクラの認知も広がり、利用してもらえるケースが増えた」と浅見氏は説明する。部屋は狭くなる一方で、持ち物は増えていく。その受け皿として会員数を伸ばしてきたミニクラだが、ユーザー数だけでなく、預けられるモノの“中身”も、この数年で変化している
●「趣味のモノ」が増加
ミニクラはもともと、衣類や布団、季節家電など、かさばる生活用品の保管先として利用が広まった。実際、2024年10月時点で最も多かったのは「衣類」(26.7%)で、「趣味のモノ」(20.1%)は3番手だった。
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ところが、2026年の調査では、1位に「書籍・書類」(28.2%)、2位に「趣味のモノ」(28.0%)がランクインし、趣味系カテゴリーの存在感が増している。「最近は趣味のモノも訴求するようになり、預けるモノが洋服だけでなく、思い出のモノや趣味のモノへと広がった」(浅見氏)
具体的に預けられているのは、フィギュア、アーティストのグッズ、ぬいぐるみ、アイドルの応援うちわなどのほか、DVDやCD、アニメ関連のグッズも多い。いわゆる「推し活」のためのモノが、倉庫の棚に並ぶようになった。
背景には、趣味への支出の拡大がある。アニメやフィギュア、アイドルなどの「オタク」市場は、矢野経済研究所によると、2020年度からの4年間で市場規模が約50%拡大した。最新調査でも、2024年度は主要17分野のうち15市場が成長しており、勢いは続いている。
預けられるモノの変化は、事業の構造も変えた。衣類が中心だった頃は、衣替えシーズンの4〜5月に依頼が集中し、繁閑差の大きいビジネスだったが、「趣味のモノは衣類ほど季節による利用の偏りがなく、年間を通して利用されるケースが多い」(浅見氏)という。
●なぜ、大事なモノほど「家に置かない」のか
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衣替えのように出し入れする衣類と違い、趣味のモノは、長期間保管する目的で利用されることが多い。1箱預けた人が、2箱目、3箱目と利用を増やしていく。取り出す頻度は高くなく、一度預けると、そのまま長期間保管するケースが多い。しかし、大事なモノほど手元に置いておきたいはずなのに、なぜあえて預けるのか。
前提として、収納の問題がある。利用するきっかけで最も多いのは「収納問題」(2024年10月調査)だ。ユーザーはマンション住まいが70%を超え、都市部の集合住宅で暮らす人が中心で、限られた住空間では、増え続ける趣味のモノを収め切れない。
また、大切なモノだからこそ預けるという動機もある。クローゼットの中は、夏場だと湿度が80〜90%になることもあり、モノの劣化を招く恐れがある。その点、ミニクラの倉庫は温度28度以下、湿度65%以下で管理されるため、フィギュアや思い出の品を「良い状態のまま持ち続けたい」というニーズに応えている。
加えて、ミニクラのMONOプランでは、預かったモノを1点ずつ撮影し、ユーザーはスマホでいつでも確認できる。「手元になくても、スマホで預けているモノを確認できる。所有している実感を損なわずに預けられているのではないか」と浅見氏は分析する。
利用後の変化について、ユーザーからは「物理的な解消」(63.2%)のほか、「精神的な解消」(17.4%)という意見も寄せられる。部屋が片付き、気分がすっきりする。預けることで、住空間と気持ちの両方に余白をもたらしているようだ。
●住む場所と、好きなモノを置く場所
モノを家の外に預けるサービスは以前からあったが、宅配型の登場で、箱単位で気軽に預けられるようになり、利用のハードルは大きく下がった。住空間が狭まり続ける都市部で、家の外に「もう一つの置き場所」を持つことが、現実的な選択肢になりつつある。
ミニクラのユーザーは関東圏が80%近くを占め、都市の住環境と密接に結びついている。浅見氏も「首都圏の狭小化や地価の上昇が進むトレンドの中で、貢献できる部分が広がっていくのではないか」と、さらなる伸びしろを見込んでいる。
部屋からモノが減ることは、関心が薄れることを意味しない。家は狭くなっても、好きなモノを手放したわけではない。住む場所と、好きなモノを置く場所を切り分ける。それは「モノ離れ」ではなく、趣味との距離を保つ新しい付き合い方といえそうだ。
(カワブチカズキ)
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推しグッズ 預ける人増えている?(写真:ITmedia ビジネスオンライン)23

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