全国で建設が進むデータセンター。写真は関西電力の通信子会社オプテージ(大阪市)が今年1月に運用を開始した曽根崎データセンター(同社提供) 人工知能(AI)の普及で需要が急拡大しているデータセンター(DC)の建設計画を巡り、各地で住民との摩擦が生じている。住民側の懸念は排熱や騒音、日照権の侵害など住環境への悪影響。規制・制度の不備も反発の背景にある。大量のデータを処理するAI向けDCは大型の設備や膨大な電力が必要で今後、地方での建設が進むとみられる。住民との合意形成は不可避の課題だ。
電子情報技術産業協会(JEITA)は、DC関連サービスの国内市場は2025年の4兆3453億円から30年に5兆6540億円に拡大すると予測。総務省によると国内のDCの約9割が東京圏や大阪圏に集中し、「地方分散の重要性が高まっている」(NTT西日本の担当者)という。
一方で、DCの建設ラッシュに伴い、目立ち始めたのが住民との摩擦だ。大規模施設が集積し「データセンター銀座」とも呼ばれる千葉県印西市では今年3月、北総線千葉ニュータウン中央駅前での建設計画を巡り、近隣住民が建築確認の取り消しを求めて提訴した。
原告側は、建築確認時の用途区分でDCが市の地区計画で駅前の建設が認められていない「工場」や「倉庫」ではなく、「その他」と扱われたことを問題視。原告の一人は24時間365日稼働するDCは「実態は工場や倉庫」と指摘。「計画段階で十分な説明がなかった」との声も上がる。
同様の訴訟は隣接する同県白井市でも提起されている。相次ぐDC建設と住民とのトラブルについて、ニッセイ基礎研究所の島田壮一郎研究員は、ごみ処理場の建設などの際に、公益性と立地地域の負担感が衝突する「NIMBY(ニンビー)問題」と共通する構造があると分析する。
NIMBYは「わが家の裏庭にはお断り」を意味する英語からの造語。DCはデジタル社会を支える重要な社会インフラだが、住民は直接施設を利用しているわけではなく、「地域に立地する理由が生活実感として伝わりにくい」(島田氏)のが特徴。建築基準法上の定義が明確でないなど規制・制度の整備も十分とは言えず、住民側は住環境への影響などを把握しづらい面もある。
業界団体の日本データセンター協会は5月、事業者向けの指針を策定。立地検討段階での近隣住民や自治体との丁寧な対話を呼び掛けた。島田氏は「住民が早い段階で計画に関わることのできる仕組みづくりが必要だ」と強調する。

千葉県印西市のデータセンター建設を巡る裁判後、記者会見する原告側関係者=5月19日、千葉市