「寝ていない自慢」の上司が職場を壊す――睡眠不足という感染症と「3つの行動管理」

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2026年07月27日 12:20  ITmedia ビジネスオンライン

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睡眠不足が引き起こす負の影響は、本人だけにとどまらない

 7月20日、高市早苗首相が自身のXで「総理就任以来、0〜3時間睡眠が常態化」していると投稿したことが大きな波紋を呼んでいる。


【画像】パフォーマンスの低下を自覚できていない可能性がある


 高市首相は2025年11月の参院予算委員会でも、最近の睡眠は「大体2時間から、長い日で4時間」と答弁している。素直に読み取ると、首相就任以来9カ月にわたって0〜4時間という睡眠時間が続いていることになる。


 責任ある立場にある人にとって、睡眠不足は本人だけではなく組織全体に負の影響をもたらす。本稿では、睡眠不足が引き起こす仕事・健康・組織への影響と、実行すべき3つの行動管理について解説する。


●睡眠不足かつ、働きすぎている可能性


 厚生労働省の国民健康・栄養調査(2023年)によると、睡眠時間が6時間未満の人は男性が38.5%、女性が43.6%で、男性の30〜50代に限ると4割を超える結果となった。


 また、経営層に目を向けると「働きすぎ」な実態がうかがえる。過労死等防止対策白書の調査では、週60時間以上働く法人役員は9.3%に上る。これは、いわゆる「過労死ライン」(月平均80時間以上の時間外労働)に相当する水準だ。


●「パフォーマンス低下」は自覚できない


 睡眠不足による真のコストは、単なる眠気や疲労感ではない。


 睡眠不足に関する代表的研究であるヴァン・ドンゲン氏らの実験では、1日6時間睡眠を2週間続けた被験者の認知機能は、「2日間徹夜した状態」に匹敵する水準まで低下した。


 注目すべきは、眠気の度合いが途中で頭打ちになったことである。被験者は「多少眠い」程度にしか感じていないのに、客観的な成績は下がり続けていたのだ。慢性的な睡眠不足の状態では、眠気に慣れ、能力だけが低下する。


 「自分は多少寝ていなくても大丈夫」という感覚は、実は強がりではなく本心なのだ。だからこそたちが悪いともいえる。特に「判断の質」そのものが成果物である経営者や管理職にとって、これは致命的な問題といえよう。


 もちろん健康上のリスクもある。睡眠時間が6時間未満の状態が続くと、脳卒中や心筋梗塞、糖尿病、うつ病などのリスクが高まることが多くの疫学研究で示されている。代替が難しい経営者の身体に、睡眠不足は深刻なダメージを与えうるのだ。


●睡眠不足は「伝播する病」


 ワシントン大学のクリストファー・M・バーンズ教授らの研究では、リーダーの睡眠不足が翌日の高圧的なマネジメントにつながり、部下の仕事への意欲(ワーク・エンゲージメント)を低下させることが示されている。寝不足の上司は、無自覚のまま職場の空気を悪化させるということだ。さらに、上司や経営者が寝ていない様子を見せることが、「睡眠は仕事のために犠牲にするもの」という無言の圧力にもなる。


 まとめると、経営者や管理職の睡眠不足は個人の問題だけではなく、判断力・健康・組織文化の3方向に波及する経営リスクといえるのだ。


●「行動管理」はできているか


 もっとも、睡眠不足の全てが問題なのではない。繁忙期や突発的な危機対応で一晩眠れないことは誰にでも起こる。問題があるのは、睡眠不足が常態化したときである。


 ヴァン・ドンゲン氏の実験が示したのは、睡眠不足が「負債」となって蓄積することだ。毎日少しずつ削られた睡眠は返済されないまま積み上がり、しかも眠気の感覚だけがまひしていく。疾患リスクが高まるのも、短時間睡眠が常態化したときだ。


 ここで、一般的な体調管理を思い出したい。例えば、感染予防を尽くした上でインフルエンザにかかってしまった人を「体調管理がなっていない」と責めることはしないはずだ。責められるのは、感染リスクを認識しながら対処しなかった場合だ。


 睡眠も同じである。例えば、育児や介護、突発的な危機対応など、どうしても睡眠が削られてしまうことがあるのは仕方がない。しかし経営層や管理職における“慢性的”な睡眠不足は、マネジメントや自己管理の不手際を表すシグナルとなる。


 睡眠不足による仕事の質低下に気づかず、自己判断に頼り、何も改善の手を打たないことは、リスクを放置することと同義だ。


●「測る・直す・守る」 3つの行動管理


 睡眠不足の解消には「行動管理」が必要だ。以下、3つの具体策を紹介する。


「測る」


 自分の感覚に頼らず、なるべく客観的な指標で自分を「測る」ことだ。睡眠時間を記録する、ミスの件数や手戻りの頻度といった成果などを定期的に見直す。よく眠れた週と眠れなかった週で自分の仕事の質を比較することが重要だ。


「直す」


 睡眠不足が慢性化しているなら、原因の多くは業務設計にある。業務の分散や優先順位付けなど、睡眠不足を解消するための見直しをする。


「守る」


 例えば、「寝不足の日に重要な意思決定をしない」といったルールをつくり、守ること。ミスが許されない航空・医療分野においても、重要な判断の延期や、複数人でのチェック体制といったリスク管理体制がとられている。


 自由な裁量には、自己管理という責任が伴う。組織のトップに立つ者であればなおさらだ。睡眠不足を周囲に漏らす前に、多少無理をしてでも睡眠をとることが、プロフェッショナルに求められる姿勢ではないか。


著者プロフィール:村上 ゆかり


コラムニスト。1児の母。リクルートにて人材業界で法人営業、面接、面談フォロー実績数百件を経験。人事役員などと伴走しさまざまな人事課題に向き合う。広告業界にて5000人集客イベント企画&事務局経験、福祉業界では人事管理職として新卒及び中途採用を1人で設計から実務まで担当し年間約120人採用を達成。国会議員秘書約4年半を経験後、フリーで活動を始め、執筆のほか企業の人事採用コンサルタントなどを手掛ける。アンガーマネジメント講師。



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