限定公開( 4 )

トヨタのアルファードの中古車価格が下がっている。高い残価設定を武器に、残価設定クレジットでたくさんのユーザーを獲得してきた人気車種だが、そろそろ飽和状態のようだ。
アルファードは国内の道路や駐車場にぎりぎり対応できて、ボディサイズやデザインによる迫力、そして広い室内空間がもたらすぜいたくさが魅力だ。
そんなLクラスミニバンの実用性とステータスに心を奪われているユーザーに残価設定クレジットを勧め、3〜5年後に良質な中古車として再び販売する。これにより高い中古車価格を維持して収益性を高めたのは、トヨタディーラーが構築した見事なビジネスモデルだ。アルファードの人気をつくり、支え続けたのは、やはりトヨタディーラーの販売力によるところが大きい。
しかし、中古車が供給過剰になってしまったことで、さすがにアルファードの残クレ販売も限界を迎えたようだ。
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●アルファードの中古車、5年間の価格と在庫を見てみると……
インターネット上に掲載されているアルファードの中古車の平均価格と在庫車数について、直近5年間の変化を調べると、その飽和ぶりがよく分かる(グーネットの掲載情報から算出)。
先代モデルの30系アルファードがデビューしたのは2015年。しかし、2021年には6年が経過していたにもかかわらず、中古車数は少なく、価格も非常に高かった。そのため買い取り価格も高く、残クレを利用すると、かえって利益が出る「逆ザヤ」現象が発生した。
そして、残クレでアルファードを購入するユーザーが急増したのである。実際に中古車市場を見てみると、現在最も数が多いのは2021年式で、2019年、2020年、2022年式と比べるとほぼ2〜3倍の在庫数で1200台以上となっている。
2022年式が少ないのは、まだ残クレの契約途中のユーザーも多いことが影響しているだろう。
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2021年のアルファードの平均価格は430万円前後だった。この高い価格は、その後3年間にわたって維持された。しかし、2024年後半からは、価格が下落傾向に転じている。ここが転換点で、以降、中古車価格は下がり続け、一方で中古車の在庫が積み上がっていった。
現在の30系アルファードの中古車在庫数は約3800台となっており、平均価格は365万円。2024年までのピーク時と比べると65万円値下がりしており、この1年強で在庫車数は2700台も増えている。価格下落が在庫のダブつきによることは明白だ。
残価より高く買い取っていた店舗も、中古車価格が下落傾向になると、査定価格を抑えざるを得ない。業者オークションに流しても、希望額に届かなければ落札されず、価格を下げて再度出品するか、不良在庫となってしまうからだ。
トヨタディーラーが残価を高く設定して買い支えても、中古車市場が値崩れしていると、残クレ終了時の査定を厳しくせざるを得ない。そうなると、30系からの乗り替えで、残クレを利用して現行の40系アルファードを購入するユーザーは減っていき、リセール狙いで新規購入するユーザーも減るだろう。
「アルファードバブルははじけた」と判断するのが妥当なのである。
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●トヨタ車のリセールバリューを高めたビジネスモデルとは
自動車ディーラーは新車を販売し、メンテナンスを引き受けるところだと思っている人も多いだろうが、その収益の源泉は多岐にわたる。
新車販売や車検整備などがメインであることは間違いないが、自動車保険をはじめとする保険サービスも手掛ける。また、トヨタはKDDIと関係が深いことから、店舗で「au」の携帯電話も扱っている。
そして、中古車販売では下取り車を再販売する。それも認定中古車や人気モデルを集めることで、新車よりも高い利益率を狙えるのだ。
早く現金化するために業者オークションに出品するケースも多いが、特にトヨタディーラーの場合は自前で中古車販売拠点を持っており、そこで販売することで再び車両販売の利益が得られる。
それだけでなく、中古車価格を維持するために高く下取りし、しっかりと点検整備をして高品質な保証付きのディーラー認定中古車として販売している。そのため、一般の中古車販売店におけるトヨタ車の価格もそれに影響されて高くなり、リセールバリューを維持できているのだ。
もちろんクルマ自体の品質が高くなければ、このビジネスモデルは通用しない。まずトヨタ車という高品質な商品が存在するからこそ、実現できた収益構造なのである。
●アルファードに代わる“ドル箱”は何か
アルファードの中古車価格が下落しても、トヨタディーラーの収益への影響は非常に限定的だろう。というのも、トヨタディーラーはアルファード以外にもたくさんの売れ筋モデルを抱えているからだ。
以前紹介したノア/ヴォクシーは、Mクラスミニバンの横綱的存在であるし、ランドクルーザーシリーズも鉄板の人気車種だ。
価格は安いがルーミーやライズも販売台数が多いだけに、収益にしっかり貢献している。新車販売では利益が少なくても、車検整備やその他のサービスで顧客をしっかりつなぎ止める手段になるからだ。
とはいえ、残クレ利用によるアルファードのお得な購入が難しくなると、ユーザーを引き留めるための手段を講じることになるだろう。アルファードという高級ミニバンを日常的に乗り回していると、それ以上の満足感を愛車に求めたくなるものだ。
それには、アルファードオーナーの家族構成の変化なども考える必要がありそうだ。まだ子どもが小さい家族であれば、育児用品の買い物やドライブ旅行などでは荷物も多く、Lクラスミニバンの恩恵を十分に感じるだろう。
しかし子どもも大きくなり、一緒に出かける機会が減ると、大きなミニバンである必要性は小さくなる。オーナー自身がアルファードの堂々としたスタイリングが気に入っていても、必要性が下がれば、クルマを選択するときの優先順位は低くなる。
また、「買い替えは無理でもアルファードに乗り続けたい」という残クレ利用者は、現在のクルマをクレジット契約でそのまま乗り続けるケースも増えるだろう。しかし、それはディーラーにあまり利益をもたらさないし、乗り続けるにも限度がある。
10年落ちとなった高級ミニバンは、もはや「高級車」としての価値を失い、減価償却が進んだ大型車に過ぎない。
では、残クレアルファード勢の需要はどこへ向かうか。やはり、ランドクルーザーシリーズではないだろうか。
●ランクル、パジェロ、サファリ……高級SUV人気が再燃か
日産は、ジャパンモビリティショー2025でエルグランドなどの新型車を披露しただけでなく、海外で販売している高級SUVのパトロールを、サファリの名とともに日本市場に復活させる計画を明らかにした(すでに生産しているモデルを2027年に投入、というスピード感のなさにはがっかりしたが……)。
三菱もパジェロを復活させることを明言し、オーナーズイベントで一部のオーナーに試作車を見せて感想を募った。
セダンは空間効率の低さによって淘汰(とうた)され、SUVがそのポジションに収まったことは明らかだ。そして最近、高級SUVの需要が高まっている。
ということは、ランクルの上位モデル、もしくはランクル300シリーズの後継モデルが登場すれば、それに飛び付く人が増えそうだ。レクサスLXではなく、ランクルで高級感と野性味を併せ持つモデルが導入されれば、爆発的な人気になるのではないだろうか。
パジェロやサファリも一定の人気を得るだろうが、ランクル人気を押し上げる材料となってしまう可能性もある。
以前のオフローダーブームは、ディーゼル人気やアウトドアブームの影響も大きかった。SUVが幅広い年齢層に浸透した今では、SUVよりも本格的な4WD(クロスカントリー車とも呼ばれる)が、憧れの存在として君臨している。
気候変動の影響もあり、自然災害が増えている今、災害時にも頼れるイメージのオフローダーが再び注目されれば、その影響も大きくなりそうだ。
(高根英幸)
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