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アパレル大手、パルグループホールディングス(HD)の300円均一店として、1994年に1号店をオープンした「3COINS」。女性に人気の雑貨店として知られ、2020年に200店舗を達成するとコロナ禍でも店舗網を拡大。10月末時点で335店舗を運営し、売上高も年々増え続けている。
【画像】こんなに高額な商品も売ってるの!? 「3」COINSならぬ、「30」COINSな商品などを見る(全7枚)
快進撃はなぜ続いているのだろうか。背景には、店舗の大型化や脱・カワイイ路線が影響しているようだ。
●近年の店舗網・売上拡大が顕著
CIAOPANICやmysticなどのブランドを手掛けるアパレル大手のパルグループHD。3COINSは1994年に1号店をオープンした、食器や日用品、洗濯用品やヘアアクセサリーなどをそろえる雑貨店である。主に20〜40代の女性から支持を受けている。いわゆる「製造小売り(SPA)」であり、製品はオリジナル品を販売し、主に海外で生産している。首都圏では駅チカの商業施設、地方ではイオンモールなどに店を構える。
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最初はわずか10坪と小さな店舗から始まったが、2004年に売上高10億円を達成すると、2008年には50店舗を達成し、2013年には100店舗を超えた。直近では300店舗を超えており、近年の好調ぶりには目を見張るものがある。2020年2月期から2024年2月期まで、3COINSの売上高・期末店舗数は下記のように拡大している。
売上高:257億円→269億円→379億円→489億円→630億円
期末店舗数:199→211→230→268→306
●脱・カワイイ路線を進める
それなりの歴史があるチェーンが、同じやり方を続けて再成長するのは難しい。近年、3COINSは2つの大幅なリブランディングを行っており、これらの施策が再成長につながったと考えられる。その一つが「脱・カワイイ路線」だ。
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300円均一の雑貨店としてヒットした3COINSだが、2019年ごろには売上高の成長が鈍化した。以前の3COINSといえば、ピンクや水色など、かわいらしさを強調するカラフルな雑貨が多く、悪くいえば「あからさまに女性受けを狙った」ような品ぞろえであった。競合の台頭もあり、消費者はこうした路線に飽きたとみられる。
その後、アプリで30〜40代の支持を受けていることが判明すると、同社はかわいらしさをイメージさせる路線から、商品の実用性を重視する路線に切り替え、商品のリブランディングを行った。具体的には、金属や木目、単色などシックな色合いで使い勝手のよさそうな雑貨を取りそろえた。現在の店舗で色味の強い商品は少なく、かつてのかわいらしさを打ち出したようなコーナーは限定的だ。店舗のイメージカラーも、以前の明るい黄緑色から現在の淡い抹茶色に変更した。
●大型店「3COINS+plus」への転換
脱・カワイイ路線の他に実施したのが大型店「3COINS+plus」への転換だ。以前の3COINSは60〜70坪程度だが、3COINS+plusは100坪以上の面積があり、9月のオープン時点で「国内最大店舗」をうたったイオンモール広島府中店に至っては約280坪である。
どのような違いがあるのか比較するため「3COINS プラーレ松戸店」と「3COINS +plus 西銀座デパート店」を訪れた。
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松戸店はイトーヨーカドーも入居する駅チカの商業施設「プラーレ松戸」の一角にある狭い店舗だ。調理器具や洗濯用品、日用品の他、女性が使うアクセサリーなどをそろえる。いずれもチープな感じはなく、実用的なデザインだ。全体的に300円の商品が多いが、少し質の高そうな商品は500円や1000円に設定している。高価なものでは2000円の鍋があった。
対する西銀座デパート店は、全体的に広い印象を受けた。大型化している分、より多く陳列していると思いきや、通路は通常の3COINSより広々としていて歩きやすい。商品の幅も広く、松戸店にはない菓子やレトルトカレーといった食品や、トラベルグッズなどを取り扱っている。「3COINS MEN」と称する男性向けコーナーもあり、500円の小銭入れや、高いものだと5000円のヘッドホンを陳列している。
筆者の主観も含むが、手に取りたくなるような商品は300円より高く、気になる中で300円の商品を見つけるのが難しかった。3COINS+plusの競合は、大創産業の300円ショップ「Standard Products」よりも、無印良品に近いといえるのではないか。3COINS全体では、2015年ごろから祖業の300円均一を取りやめ、現在では4割が300円より高い商品である。価格の高い高品質の商品も、近年の好調をもたらした可能性がある。
●今後も大型店へのシフトが進みそう
3COINSと3COINS+plusを数字で比較すると、前者のアイテム数が3000前後であるのに対し、後者は4000アイテム。客単価も、3COINS+plusが約1000円で、3COINSより120円高い。購入点数は後者の方が2割多いという。
都内47店舗の内訳では、3COINSと3COINS+plusが半々(12月17日時点)。しかし、10月末時点で3COINS+plusはすでに全体の8割弱を占めている。近年では大型店の新規出店を進めたほか、既存店を3COINS+plusに切り替える形でリニューアルを進めている。地方では今や、従来型の3COINSを探す方が難しい。近年の好調は規模拡大のほか、3COINS+plusへの転換に伴う客単価の上昇も寄与していると考えられる。
カワイイ路線を取りやめ、食品など商品ジャンルも広げた3COINS+plusは、もはや以前のような300円均一業態ではない。500円、1000円以上の商品も取り扱い、日用品関連では無印良品に近い業態となっている。リブランディングした3COINSがどこまで伸びるのか注目が集まる。
●著者プロフィール:山口伸
経済・テクノロジー・不動産分野のライター。企業分析や都市開発の記事を執筆する。取得した資格は簿記、ファイナンシャルプランナー。趣味は経済関係の本や決算書を読むこと。
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