セブンもファミマも取り組む「無人コンビニ」はなぜ、普及しないのか 実際に行って分かった「限界」

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2025年08月12日 06:00  ITmedia ビジネスオンライン

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無人コンビニは今後、どうなっていくのか?(写真はファミマ!!サピアタワーS店、筆者撮影)

 店員がいない「無人コンビニ」が都内に出現している。JR東日本の「NewDays」は、キャッシュレス専用のセルフレジを置いた無人店舗を展開。陳列や清掃は店員が行うが、従業員は常駐していない。


【画像】セブンなどの無人コンビニ(計4枚)


 セブン‐イレブンも工場やオフィス内での出店を想定したコンパクト店舗を開発した。より先進的な例では、無人店舗などを手掛けるTOUCH TO GO(東京都港区)が店内のAIカメラを基に、客がレジでスキャンしなくても商品を検出するレジシステムを開発している。


 これらの店舗、技術は人手不足の解消に貢献するといわれているが、課題も多いとみられ、全国的な展開に至ってない。国外に目を移すと、米中では事業者の苦戦も見られる。実際に店舗を訪れ、国内で普及する可能性を考えていく。


●首都圏に無人店を展開するNewDays


 JR東日本の駅ナカコンビニとして知られるNewDaysは、首都圏に無人店舗を展開している。新宿駅構内にある新宿新南口店もその一つだ。


 同店舗は駅ナカの狭い角地にある店舗で、棚数は10個程度。およそ半分がおにぎり、パンなどの軽食を主とする棚で、残りの半分は飲み物類の棚だ。マスク、文房具などの非食品を並べる棚は1つだけ置いてある。レジは3台あり、全て現金不可のセルフレジだ。


 店の裏が倉庫となっており、店員は陳列の際しか姿を見せない。店外には「CASH LESS・SELF CHECKOUT SHOP」の記載があり、ステンレスの内装はどこか近未来感を覚える。


 同様の店舗は首都圏の随所にあり、千葉県の松戸駅構内にもある。新宿店と同じような商品構成で、現金不可のセルフレジが2台ある。筆者が訪れた際は店員が清掃していた。レジは無人化できるが、陳列と清掃の無人化は現時点で実現できていないようだ。


 JR東日本は2019年7月、武蔵境駅にセルフレジ専用キャッシュレス・無人店舗の1号店を出店した。キャッシュレスの最大のメリットは運営者側が現金を収集する必要がない点だ。駅ナカならSuica利用客も多く、現金不可でも客離れが進む心配はない。


●セブンは工場・オフィス内のコンパクト店舗


 セブン-イレブンは工場やオフィスなど、福利厚生の一環として利用できる「コンパクト店舗」を開発した。専用アプリを立ち上げて入店用のQRコードを読み込み、スマホで商品のバーコードを読み取りながら、アプリ上で決済する仕組みだ。店舗面積は最低50平方メートルと、通常店の4分の1程度。商品数は最大1200程度と通常店の半分弱だ。コンビニコーヒーも店内に設置する。


 セブン-イレブンジャパンとフランチャイズ契約を締結した運営者が、オフィス・工場施設と売店の業務委託契約を結び、運営するシステムをとっている。社食などの福利厚生施設を運営する企業がフランチャイジーとなり、工場内に出店する事例がある。


 施設内の就業者人数は最低500人以上、電気設備・給排水設備があるなど、出店にはいくつか条件があるものの、日本電子やアイリスオーヤマ、三井物産など大手各社への出店が進んでいる。


 現状、施設内出店に限定していることから、コンパクト店舗が一般の路面店として成功する可能性は低いだろう。入店するたびにスマホアプリを起動し、自身で読み取るのは客にとって面倒だ。また、公共料金の支払いなど、従来店にあるサービスや機能を狭める必要もある。


●無人決済店舗に行って分かった「限界」


 JR東日本スタートアップとサインポストが2019年に設立した合弁企業のTOUCH TO GOは、無人決済店舗システムの「TTG-SENSE」を開発している。導入店舗ではAIカメラや重量センサーを活用して客の購買行動を追跡。取得した商品を自動でレジに表示するため、客はスキャン作業が不要である。


 高輪ゲートウェイ駅構内にあるTOUCH TO GOの店舗を訪れた。天井には至る所にカメラを設置してあるが、それ以外は普通のコンビニと同じような店舗だ。


 飲料のほか、食品はパンやサンドイッチ、菓子類など軽食がメインである。AIカメラで読み取りやすくするためか、商品同士の間隔は通常のコンビニよりやや広めだ。セルフレジでスキャンする必要はなく、AIカメラが読み取った情報を基に会計金額を算出する。2台あるセルフレジでは現金も使用可能である。


 スキャン不要な点を謳っているが、精度は完璧ではないようだ。筆者は高輪店で飲み物を1つ手に取った後、菓子を取り出して戻し、パンを1個手にとった。つまり、飲み物1つとパン1つでレジに向かった。だが、レジにはパンが2つと表示されていた。レジには修正機能があるため、それを使用し、修正して会計した。


 一部報道によるとTTG-SENSEの初期投資額は90万円で、月額システム利用料は50万円から。時給1200円と仮定すると、月額料金は店員1人で416時間、およそ17日分だ。人件費を削減できた例もあるとしているが、普及させるにはさらに料金を下げる必要があるのではないか。


 同社はファミリーマートと資本業務提携を結んでおり、2021年に出店した「ファミマ!!サピアタワー/S店」では無人決済システムを導入している。「S店」とは、近くにある店舗のサテライト店という意味で、規模が小さい店舗を意味する。2023年には大阪府の病院内に「ファミリーマートTouch To Go i-Mall店」を出店した。いずれも路面店よりは狭く、同システムの展開は現段階で小型店に限られる。


●「無人コンビニ」は流行するのか、しないのか


 中国では2017〜18年にかけて無人コンビニブームが発生したが、収束した経緯がある。システムの導入コストが人件費を上回ったことや、品ぞろえに魅力がない点が主な要因だ。現状のシステムに対応するには店舗を小型にした上で商品数を絞り込む必要があり、売り上げで有人コンビニに勝てなかったとされる。結局、レジ業務のみを無人化した店舗が生き残った。


 米国ではAmazonが2016年に「Amazon Go」の1号店を出店した。AIカメラが商品と顧客を自動で認識し、両者をひも付け、後日請求する仕組みだ。そのため、客はレジに並ぶ必要がない。一時は31店舗まで増えたものの、治安や不採算店の問題から閉店が相次いだ。誤請求に関するクレームも消費者から多く発せられており、信頼性にも課題がある。


 海外の事例を踏まえれば、無人コンビニが国内で主流となることはなさそうだ。そもそも前述の通り、清掃・陳列などの業務は人手に頼っている。レジ業務も完全無人化は難しい。Amazon Goのような精度の課題があるほか、精度を上げるには商品数を絞り込む必要があるため、店舗の魅力が薄まってしまう。路面店での展開は難しく、従来通り小型店に限られるだろう。


●著者プロフィール:山口伸


経済・テクノロジー・不動産分野のライター。企業分析や都市開発の記事を執筆する。取得した資格は簿記、ファイナンシャルプランナー。趣味は経済関係の本や決算書を読むこと。



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  • バ〜カ!・・・これ、事業者のメリットは分かるが、客にとってはどんなメリットが?客商売で「お客ファースト」じゃない業態が成立するとでも?これを考えたヤツ心底バカ!
    • イイネ!11
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