限定公開( 21 )

ハワイの定番スイーツ「マラサダ」が、じわじわと人気上昇中だ。
楽天市場では、マラサダの2024年の年間流通額が前年比約2倍に増加。専門店も増えていて、2023年に誕生したマラサダ専門店「THE MALASADA TOKYO(マラサダ トーキョー)」は、現在6店舗に拡大している。
2008年に横浜市で開業したマラサダ専門店「レナーズ」は、ハワイ・オアフ島に本店を構える老舗「Leonard's BAKERY(レナーズベーカリー)」の日本1号店で、週末は行列ができる人気ぶりだ。
ハワイアンカフェ「アロハカフェパイナップル」は2021年から本格展開しており、2025年9月に開業した大阪・梅田の新店舗ではマラサダを看板メニューとして売り出し、2カ月で約9200個を販売した。
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とはいえ、食べ慣れない人からすると「マラサダとドーナツの違い」がよく分からないかもしれない。アロハカフェパイナップルを運営するHOPE社(大阪府豊中市)の宮崎(正式には崎の異体字で、右上が立)優氏は、「製法というより、“揚げたてを食べる”という文化の違いが大きい」と話す。一方、レナーズを営むフォレスト社(横浜市)の木村友彦副社長は、「ドーナツというより揚げパンに近い製法だ」と言う。
なぜマラサダの注目度が上昇しているのか。アロハカフェパイナップルの宮崎氏とレナーズの木村氏に取材した。
●本場ハワイの味を日本で売る
1952年にハワイで開業した老舗ブランド「レナーズベーカリー」は、開業当初からオリジナルのマラサダを販売し、「レナーズといえばマラサダ」と言われるほどの有名店に成長した。ハワイのスイーツとして知られるが、実はマラサダの発祥はポルトガルだという。
横浜のレナーズは、本場レナーズの味を伝承する唯一の国内店舗で、ハワイ好きの間では知られた存在だという。
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「現地でマラサダを食べたとき、給食の揚げパンのようだけれど、食感は非常に軽くて新しいスイーツだと感じました。この味を日本でも売りたいと思い、全くコネクションがないなかでレナーズのオーナーにあの手この手でアプローチしたんです。オーナーを日本にお招きして日本市場の状況を見てもらい、コミュニケーションを続けるなかで、『君たちとなら』と許可をいただきました」(木村氏)
木村氏は、共同創業者のメンバーと2人で現地に出向き、オーナーからマラサダのレシピを直々に伝授された。それから15年以上が経過した現在も、秘伝のレシピは2人しか知らないそうだ。
レナーズのマラサダは、原材料から生地を手作りし、作り置きは一切していない。ドーナツよりパンに近い製法で、生地を冷凍して寝かせた後、発酵させて、成形して揚げる工程を踏む。
開店と同時にマラサダを揚げ始め、揚げたてを提供するのが基本だ。添加物を使用せず、生地を油の中に沈める揚げ方をすることで、外側はカリッと中身は口の中でとろけるような軽い食感になるという。定番に期間限定を含めた4種類を販売しており、一番人気は中に何も入れないシンプルな「シュガー」だ。
●催事では1〜2時間待ちの行列も
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2008年の開業後は、メディア露出などの影響で急成長した。その後は安定した売り上げを維持し、コロナ禍明けからは再び伸長している。2024年の売上高は前年比で123%、2025年は11月下旬時点で同約140%と右肩上がりに伸びている。
「みなとみらいという場所柄、近隣の方が頻繁に来店するのではなく、半年や1年に1回来店するリピーターが徐々に増えて、売上増につながっています。全国の百貨店などで実施されるフェアにも多く出店していて、そちらも盛況ですね。顧客層は、ハワイでマラサダを食べたことがある40代以上の方が圧倒的に多いと思います。他のスイーツ店と比べると男性も多い印象です」(木村氏)
週末は600〜700人が来店し、ピーク時は約40分の待ち時間が発生するという。催事での反響は、それを上回る。2024年7月に阪急うめだ本店で実施された「阪急ハワイフェア2024」では、初日の開店前に約600人が行列を作り、やむなく途中で販売を終了した。翌日からは整理券で対応したそうだ。
「フェアでは、お一人さま6点までの制限をかけています。どのフェアも約1週間の会期中、開店から閉店までお客さまが一度も途切れません。整理券を配布した『阪急ハワイフェア2024』では、配布から8時間後に購入という方もいましたが、97%ほどが来店しました」(木村氏)
これほどの人気がありながら、常設店は長らく1店舗のみ。だが、店舗拡大そのものを否定しているわけではない。
「海外のスイーツということもあり、日常に溶け込むスイーツではないと思うんです。非日常とリゾート気分が融合したエリアなど、お客さまのニーズを満たせる場所があれば前向きに検討していきたいです」(木村氏)
ただしフランチャイズではなく、直営店にこだわる。製造工程を完全にマニュアル化するのが難しいためだ。「天候による気温や湿度の変化に合わせて、日々の微調整が必要なんです。このあたりの言語化が難しいので、品質維持のために直営店で考えています」(木村氏)
●ハワイアンカフェでは「マラサダ」が一番人気
2021年から事業を展開するアロハカフェパイナップルでは、開業当初から販売しているマラサダを、新店舗の「看板メニュー」として売り出すことにした。
「当社は“地域密着型”として、関西エリアの郊外に複数店舗を構えてきました。ただ、新たな挑戦として、2025年9月に初の“都心型店舗”である『梅田茶屋町店』を開業しました。座席数が少ない都心店では、テークアウトでも食べてもらいやすいようマラサダを看板メニューの一つに設定しました」(宮崎氏)
2021年11月、ハワイに本店をオープンしたアロハカフェパイナップルは、その後に国内での開業を進め、梅田茶屋町店を加えて国内9店舗を展開する。「本場ハワイ」をコンセプトにしており、「ハワイで食べられているマラサダの味を日本で提供したい」と宮崎氏は言う。
「私は、“揚げたて”を食べる文化と“ふわもち”の食感こそマラサダだと考えています。当社では、ハワイの味を再現しているマラサダ専門店にレシピを伝授いただき、ふわもちの食感を出すことができました。梅田茶屋町店では、9時、11時、16時に揚げたてを提供しています」(宮崎氏)
同店では8種類のマラサダを扱うが、揚げたての提供は中身にクリームが入っていない「プレーン」と「シナモン」のみとなる。ハンバーガーやパンケーキ、アサイーボウルなどさまざまなメニューがあるが、一番人気はマラサダで開店から2カ月で約9200個を販売。11月1日からは、土日祝のモーニング限定でマラサダを食事として楽しむ「マラサダサンド」の販売も開始した。
「ターゲットは40代以上の女性で、若年層のようにSNS経由での拡散が起こりづらいためか、現状は近隣や通りがかりの方の来店が中心です。販売数は正直もう少し伸びてほしいところです。ただ、揚げたてを食べた方からは『とてもおいしい』と好評です」(宮崎氏)
●なぜマラサダ人気が高まっている?
マラサダのヒット事例は大手企業でもある。トリドールホールディングスから分社化したKONA’S(東京都渋谷区)が運営するハワイアン カフェ・レストラン「コナズ珈琲」では、こだわりのマラサダを店内とテークアウトで販売する。プレーンから食事系まで多くの種類を扱い、好評だ。
2025年7月には、丸亀製麺とコラボした「丸亀うどーなつ アサイーベリー味」の発売を記念した連動企画として、「マラサダ(アサイー)」を販売。コナズ珈琲では、これまで一部店舗のみでマラサダを販売していたが、同製品の発売を機に全国展開している。
ファミリーマートでは、2025年7月に実施したハワイフェアで「マラサダ(マカダミアチョコホイップ)」を発売。発売初週で50万個を販売し、ファミリーマートのパンカテゴリ内で週間の売上個数1位を記録した。
トレンドとまでは言えないものの、マラサダの知名度や人気は年々高まっているようだ。背景に、どんな理由があるのか。
「近年の売上増は、物価高などでハワイに行きづらくなったこととドーナツブームが関連しているのかなと思います。当社のマラサダは製法としては揚げパンですが、お客さまの多くは『ドーナツ』の部類だと考えていて、『ドーナツがトレンドだからマラサダも食べてみたい』と興味を持ったのかもしれません」(木村氏)
一方で、宮崎氏は「本場のマラサダの食べ方は、それほど浸透していない」と見解を示した。
「ハワイ好きな方は当然知っているのですが、そうでない多くの方の認識は、『ハワイのドーナツ』にとどまっているのかなと思います。カフェの運営を通じて、揚げたてを食べるマラサダの文化を根付かせたいですね」(宮崎氏)
ドーナツのトレンドは、「生ドーナツ」を中心に続いている。この波に乗って、マラサダの人気もより高まるかもしれない。
(小林香織、フリーランスライター)
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