92歳と95歳が本気の“殴り合い” 介護施設入居者たちの「鉄拳8」対戦が国内外で話題

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2025年12月29日 12:10  おたくま経済新聞

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92歳と95歳が本気の“殴り合い” 介護施設入居者たちの「鉄拳8」対戦が国内外で話題

 一般社団法人ケアeスポーツ協会が11月24日に開催した、大人気格闘ゲーム「鉄拳8」の大会「第12回ケアeスポーツTEKKEN8」。


 その中で92歳と95歳のプレイヤーが本気の“殴り合い”を繰り広げる動画が、SNSなどで注目を集めています。


【その他の画像・さらに詳しい元の記事はこちら】


■ 高齢者向け「ケアeスポーツ」の一環として「鉄拳8」の大会が開催

 「いくつになってもやっぱり勝ちたい」をキーワードに、健康増進を目的とした高齢者向けのeスポーツ「ケアeスポーツ」の普及を行っている一般社団法人ケアeスポーツ協会。


 東海地方の介護施設「あみーご倶楽部」では、入居者を対象に定期的な大会も開催しており、70〜80代を中心に、将棋やオセロで腕を競い合っています。


 そうした中、SNSなどで注目を集めているのが、2025年11月24日に開催された「第12回ケアeスポーツTEKKEN8」です。


 タイトルからも分かる通り、バンダイナムコグループが手掛ける3D対戦格闘ゲーム「鉄拳8」を取り扱った大会。シングルエリミネーション(トーナメント戦)方式で、8名の参加者による優勝争いが行われました。


 オンライン対戦で行われた今大会はYouTube上でライブ配信が行われ、現在はアーカイブが公開中です。加えて各プレイヤーの試合部分だけを切り取った動画も、順次公開されています。


 高齢者たちが華麗なボタンさばきでキャラクターを操り、迫力の攻防を繰り広げる様は国内外を問わず話題に。特に、92歳と95歳が相まみえることになった第3試合の動画の再生回数は、3万回を超えています。


■ 92歳と95歳の「鉄拳8」対戦がYouTubeで公開

 92歳の酒井さんは祓魔術使いのキャラクター・クラウディオ、95歳の横田さんは古武術使いのキャラクター・風間準を選択。大会ルールに則って試合時間60秒、3ラウンド2本先取で戦いました。


 画面端にワイプで映る2人は、ゲームキャラクターたちにも負けない勢いでボタンを連打。大会特別ルールである職員からの“アシスト”を受けつつ、次から次へと強力な技やコンボを発動していきます。


 激闘の末、試合はストレートで2本勝ち取った92歳の酒井さんが勝利。次の戦いへと駒を進めました。


 ワイプを隠せば戦っているのが90歳超えの方々とは思えないほど、見応えある2人の対戦。


 コメント欄には「世紀の大喧嘩」「いいバトルだ」といった日本からのコメントはもちろんのこと、「The beauty of Tekken(これが鉄拳の素晴らしさ)」「This is awesome(最高だ)」といった海外の方からのコメントも多数寄せられています。


 大会はその後、最高齢対決を制した92歳の酒井さんが、決勝で74歳の杉山さんを下し、優勝。参加時に表明していた「優勝トロフィー、いただいていきます」のコメントを実現するというドラマチックな展開で幕を閉じました。


 それにしてもいったいなぜ、高齢者の方々が「鉄拳8」をすることになったのでしょうか。


 オセロや将棋と比較すれば「鉄拳8」は1タイトルだけかなり異質。そもそも「鉄拳8」に限らず格闘ゲームはルールやシステムが複雑ですし、難易度も相当高いはずです。


 にもかかわらず高齢者の方々が「鉄拳8」を始めるに至ったわけ、また今回激闘を繰り広げた最高齢の2人の普段の様子などを、協会の広報担当者の方にうかがってみました。


■ 広報担当者が明かした格闘ゲーム導入の経緯

――「ケアeスポーツ」の1つとして「格闘ゲーム」が選ばれたのはなぜなのでしょうか?


 ケアeスポーツの本来の目的は、勝って嬉しいという感情や負けて悔しいというマインドがよりよい明日に繋がるというものであり、格闘ゲームはより感じてもらえると思い、第8回ケアeスポーツ大会でエキシビションマッチという形で開催しました。


 当時ゲストで招待した元中日ドラゴンズの平田良介選手との試合を通じて手ごたえを感じ、第11回を境に鉄拳8のみに絞ったという経緯です。


――格闘ゲームはさまざまなタイトルがありますが、その中から「鉄拳8」が選ばれた理由はあるのでしょうか?


 弊協会広報の私が、普段は「鉄拳8」のプロゲーマーとして活動をしております。


 そのご縁もあり社内職員も「鉄拳8」に触れる機会が多く、初心者でも気軽に遊べる“スペシャルスタイル”なら高齢者の方でも遊べるのでは?となったことがきっかけです。


――スペシャルスタイルというのは?


 各ボタンにキャラクターの強い技が振り分けられ、初心者でも気軽に格闘ゲームの爽快感を味わえる、というものです。


――なるほど、そういう特別なシステムがあるからこその「鉄拳8」なのですね。高齢者の方々はどういった経緯で「鉄拳8」を始められるのでしょうか?


 まずは施設内でゲーム体験という形で開催します。そこで実際に皆様がゲームを遊んでみて、という流れです。


――今回最高齢対決となった酒井さんと横田さんの対戦は非常に見応えがあって楽しかったです。普段のお2人の様子についてお聞かせください。


 酒井様も横田様も、好奇心旺盛で普段からイベントや施設内の家事をよく手伝ってくださる方です。


 職員が「鉄拳8」をやろうと誘うと一緒に楽しまれる方々です。


 お互い認知症の症状があり、「鉄拳8」のこともよく忘れられますが、いざプレイすると昨日のようにプレイされます。


――身体に染み付いている、という状態なのですね。大会参加者の方々は必殺技やコンボなどのシステムも把握されているのでしょうか?


 このボタンを押すと強い!ということは把握しており、必殺攻撃(レイジアーツ)の使い方などは特に狙ったりしているように感じます。


* * *


 「あみーご倶楽部」は施設によっては職員大会も開催されるなど、「鉄拳8」をより身近に感じることが出来る取り組みなども実施。入居者が「私もやりたい!」という気持ちになるための工夫を行っているとのことです。


 画面を隔てれば、そこにいるのはただの1人のプレイヤー。


 今夜あなたを完膚なきまでに叩きのめす相手は、ひょっとすると90歳を超えているかもしれません。


 誰もが平等に拳を交えることができるeスポーツや格闘ゲームの魅力を、改めて知ることが出来る取り組みでした。


<記事化協力>
一般社団法人ケアeスポーツ協会公式X(@careesports_mie)
一般社団法人ケアeスポーツ協会公式サイト(careesports.com) 
一般社団法人ケアeスポーツ協会公式YouTube(@CAREe-sports)


(ヨシクラミク)

Publisher By おたくま経済新聞 | Edited By YoshikuraMiku | 記事元URL https://otakuma.net/archives/2025122901.html

このニュースに関するつぶやき

  • おじいちゃんおばあちゃんで格ゲーと言うのがこれまた熱い。老いてこそ人生というフレーズがあったけど、アクティブな人生で老後を迎えるのは本当に一番幸せだと思う。
    • イイネ!6
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