【インタビュー】「タイバニ」最新作で生まれた"進化"とは? - 米たにヨシトモ監督が語る『劇場版 TIGER & BUNNY -The Rising-』

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2014年02月07日 21:01  マイナビニュース

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●完全新作『The Rising』のはじまりの物語
今や人気アニメ作品としての地位を確立した感のある「TIGER & BUNNY」。その劇場版第2弾となる『劇場版 TIGER & BUNNY -The Rising-』が、2月8日より全国公開される。


昨年公開された『劇場版TIGER & BUNNY The Beginning』はTVシリーズの1話〜2話に加え、2.5話にあたる新作エピソードを盛り込んだ内容であったが、今回公開される『The Rising』は、TVシリーズの終了から数えると約2年5カ月ぶりとなる"完全新作"。「タイバニ」はこれまでにも舞台やゲーム、コミカライズなど多方面に展開されている人気作品であり、TVシリーズ最終回の"先"を描く内容に寄せられるファンからの期待は大きい。


ただ、現状、予告編やあらすじにて、TVシリーズ最終回では互いの絆を再確認したワイルドタイガー(鏑木・T・虎徹)とバーナビー・ブルックス Jr.がコンビを解消し、別々の道を行くかのような示唆がなされている。そのため、これまで同作品を追ってきた熱心なファンであればあるほど、大きな期待とわずかな不安が入り交じっているのが正直なところではないだろうか。


今回は、そんな『The Rising』を手がけた米たにヨシトモ監督に、その制作秘話や、『The Rising』への想いについてお話をうかがった。


――最初に、『The Rising』の構想はいつ頃から練られていたのでしょうか?


TVシリーズが終わった後くらいから、映画を作りたいという企画はあったとうかがっています。


――2作品になるという構成も当時から決まっていたのでしょうか?


その当時から、2作品制作するという方向で動いていました。まだ内容はふわっとしていたのですが、脚本の西田征史さんがやりたいストーリーを出していただいて、ふたつのプロットをいただいたんです。ひとつは、TVシリーズ初期でやりきれなかった部分をしっかりと描く内容で、昨年公開した『劇場版 TIGER & BUNNY The Beginning』(以下、『The Beginning』)にあたるもの。もうひとつは、TVの後の話をフォローする、今回の『The Rising』にあたる内容でした。


劇場作品を1本を作るだけでも、多くの場合3年くらいはかかるんですね。通例からすると非常に短い時間で、先ほどお話ししたプロットを用いた劇場版を2本作り上げることに全力を注ぎました。


ただ、サイドストーリーとして、TVシリーズを虎徹・バーナビーそれぞれの視点で振り返る総集編BD/DVDに新作パートをつけていて、劇場制作と同時並行でその監督もやらせていただきました。……続きを読む


●新キャラクター・ゴールデンライアンに込められた桂正和氏のこだわりとは?
――新たに登場したゴールデンライアンについてお伺いします。すでに数多くの個性豊かなヒーローが登場している中で、バーナビーの新バディとしてあえて新キャラを登場させた狙いは?


演出的な部分で言えば、もともといたヒーロー達の関係性を立たせることができたキャラクターだといえます。ライアンがいることで、彼らの絆がより鮮明になりましたね。個人的に、ライアンはとても気に入っているキャラクターです。


――例えばどんなところが?


俺様キャラではあるんですが、おいしいポジションにいるところでしょうか。制作を進めていく上で、どんどん存在感を増していきました。


――ゴールデンライアンは、バーナビーの新バディとしてどうしても虎徹と比較される立場だと思います。キャラクターデザインや性格などを固めていく上で込めた工夫をお聞かせください。


ライアンには関係各所からさまざまな思いが寄せられたので、"みんなが思っているライアン像"を追求しながらも、ぶれない部分を模索して、今の形にたどり着きました。特に、ライアンがこの能力を使うときの羽や光り方などにはこだわって、何度もディスカッションを重ねました。


実は、『The Beginning』にもワンカットだけライアンが出てきて出演しています。『The Beginning』を見返して、彼を探していただければと思います。


――ライアンは重力の使い手なのに羽が生えているのが逆説的というか、不思議なデザインですよね。


これは(キャラクター原案・ヒーローデザインを担当した)桂正和先生が発案されたものです。ライアンはタイガーとの対比としてライオンをイメージして作っていったんですが、翼が付いたことでアポロンメディア(ワイルドタイガー、バーナビー、ゴールデンライアンが所属する企業)を象徴する石像、グリフォンに近い形になりました。結果、「アポロンメディアを代表するヒーロー」というイメージになりましたね。


制作サイドとしては可能な限り、桂先生の意向にそうように努力したいという気持ちがありました。集合絵にゴールデンライアンを入れると、どうしても羽根の後ろに別のキャラが隠れて見えなくなってしまうなど、画面レイアウトが難しくなります。ですので、ゴールデンライアンをかっこよく見せつつも、画面レイアウトのバランスをとることに専念しました。桂先生のデザインを生かしていこうと決めていましたので、工夫に工夫を重ねて画面内での実現に力を入れました。……続きを読む


●米たに監督、タイバニ最新作映画としての"進化"を語る
――今作から、各キャラクターの私服姿が一新されました。このタイミングでの変更はどういった意図で行われたのでしょうか?


桂先生に「季節も春の設定ですし、同じ洋服を着たきりだとあまりにもアニメっぽいので、服を着替えさせてほしい」とお願いしたんです。


そうして桂先生からあがってきたデザインは、髪型などを含めてキャラクターデザインそのものにも変更が加えられていました (笑) 我々としては、桂先生が提案するキャラクターデザインを採用した方がより良くなる、という思いから、全面的なデザインの変更を行いました。桂先生の設定画のイメージにより一層近づけようとの考えから、瞳の大きさなども非常にリアルな方向にシフトしているんです。


――頭身や顔の作りが実際の人間に近い作りになっていますが、それは桂先生のデザインに寄せていった結果だったのですね。


作画のこともそうですが、話し合いの結果、総合的な意味で実写に近づける方向を取ることに決めました。この作品はTVシリーズまでは何だかんだ言ってもアニメ的なイメージではありました。そんな中で、今回から写実的なキャラクターデザインを採用したのは、決してTVシリーズを捨てるということではなく、そこにより成長を上乗せするような形で実現していきたいという意図があるためです。


ただ、キャラクターデザインを写実的にしていくと表情作りが難しくなり、微妙な顔の表情の変化で、意図したところと違う見え方になってしまうこともあり苦労しました。今回、TVシリーズに登場したのと同様の演技も出てくるわけなんですが、そこについても従来通りの表現ではなく、この方針に沿ったものに変更しています。


――なるほど。確かに予告編からは、ストレートなアニメ的表現というより、洋画に近いような印象を受けました。洋画のような表現を行うにあたり、作画の負担に増減はあったのでしょうか?


苦労も多かったですが、高いクオリティでそれを実現する方法論を作り上げなげら、完成に近づいていった、という状況です。


――そこまでして「より実写映画に近いアニメ」という方向性を打ち出していったのには、どういった思惑があったのでしょうか?


まず、(TVシリーズではなく)映画であるということ。そして、これまでのファンの方々に加え、もっと多くの方に観ていただきたいという想いと、もっとグローバルなところを狙っていきたいということから、実写に寄せた作画を行っていきました。


――グローバルというと、海外展開も視野に入れているということでしょうか?


海外展開もそうですし、国内でもより多くの人が入り込めるような要素も入れていったほうがいいのでは、ということですね。


――そういった"進化"のための要素は、作画の変更以外に何があるのでしょうか?


アクションが多くなっているところです。タイバニって、ヒーロー物ですが必ずしもアクションがメインではないんですよね。


――はい、ジャンルこそヒーロー物ではありますが、群像劇の色合いが強いですよね。


タイバニは戦闘を見せるのではなく、心理を見せる作品なんです。『The Beginning』もその部分にはこだわっていまして、最後に派手な戦闘をもってくるのではなく、心理で盛り上げるという方向にしているんです。なので、今回の『The Rising』は、これまでのタイバニとはちょっと違ってきているのですが、劇場作品であることを強く意識して、そういう要素も取り入れたというところです。


――アクションが多くなり、実写映画に近づけていると聞くとハリウッド映画を連想するのですが、ハリウッド風の演出も取り入れたのでしょうか?


はい、そういうことですね。映画としての完成度は高くなったと思います。


でも、より多くの人が入り込める要素とは言いながらも、既存のファンを置き去りにすることはしたくないので、制作中は新しい要素を入れつつも、これまでのファンを裏切らない形にするためのバランスを取るのがとても大変でした。やっぱり、ファンは一番大事にしたいですから。


――最後に、この記事を読んでいる読者に一言お願いします。


これまでのタイバニと異なると感じる部分もあり、先ほど申し上げたような多くの方々の想いが詰まったものになっていますが、今まで応援してくださったファンの方を何より大切にしようと心がけて制作してきた作品です。多くの方に楽しんでいただけたらと思っております。


――ありがとうございました。


○『劇場版 TIGER & BUNNY The Rising』


■作品紹介
一度引退を決意したものの、ヒーローに復帰したワイルドタイガーこと鏑木・T・虎徹とバーナビー・ブルックスJr.。"マーベリック事件"によりオーナー不在となったアポロンメディアは、新たにカリスマ実業家のマーク・シュナイダーを新オーナーに迎え、会社の立て直しを図る。その一環として、シュナイダーはバーナビーを1部リーグへ復帰させるが、その相棒は彼がスカウトした新ヒーロー・ゴールデンライアンだった。バーナビーとゴールデンライアンの新コンビの活躍を見た虎徹は2部リーグでの自身の活躍を誓うが、彼には厳しい現実が待っていた。時を同じくして、シュテルンビルトでは街に古くから伝わる女神の"影"があらわれたことをきっかけに、奇妙な事件が起こりはじめていた。果たしてこの事件の真の"目的"とは――謎に翻弄されるヒーローたちにさらなる危機が襲いかかる。


■CAST・STAFF
<CAST>
平田広明 / 森田成一 / 中村悠一 ほか
<STAFF>
企画・原作:サンライズ / 監督:米たにヨシトモ / 脚本・ストーリーディレクター:西田征史 / キャラクター原案・ヒーローデザイン:桂正和 / 配給:松竹/ティ・ジョイ
(c)SUNRISE/T&B MOVIE PARTNERS


(杉浦志保)



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