劇場版「黒執事」小野大輔インタビュー 「シエルとセバスチャンは2人でひとつ。そのスタートを演じられたことがうれしい」

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2017年01月26日 18:23  アニメ!アニメ!

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劇場版「黒執事」小野大輔インタビュー 「シエルとセバスチャンは2人でひとつ。そのスタートを演じられたことがうれしい」
19世紀末のイギリスを舞台に、悪魔のセバスチャンと契約を交わした少年シエル・ファントムハイヴ伯爵。女王の命により裏社会で起こる恐ろしい事件を解決していく、今も原作の連載が続く大人気コミックの、アニメ化作品『黒執事』。テレビシリーズはこれまでに3作が放送され、OVAも制作されている。アニメ開始から8年、いよいよ初の劇場版アニメ『黒執事 Book of the Atlantic』となってスクリーンにお目見えした。

主人公セバスチャンを8年に渡り演じ続けているのが、声優の小野大輔。人間の感情が理解できない悪魔を演じ続けてきた小野だが、この劇場版でのセバスチャンは「ご褒美のよう」に感じたという。ストーリーは、原作で単行本4巻に渡って描かれた「豪華客船編」。主要キャラクターが集い、それぞれに見せ場がある、『黒執事』世界の中でもスペシャルなエピソードだ。この劇場版は小野にとっても、セバスチャンの新たな一面を知るスペシャルな機会となったようだ。
[取材・構成:大曲智子]

『黒執事 Book of the Atlantic』
http://www.kuroshitsuji-movie.com/

■セバスチャンが初めて抑制を解く物語

――原作でも人気の高い「豪華客船編」のアニメ化、しかも『黒執事』初の劇場版アニメ化となりました。

小野大輔(以下、小野)
「豪華客船編」は、『黒執事』ファンのみなさんが本当に待ち望んでいたエピソードだと思います。「豪華客船編」という名の通り、とてもスケールが大きいストーリー。『黒執事』が持つ、ホラーにアクション、コメディの部分などすべての要素が詰め込まれている。この1本を見れば『黒執事』の魅力がすべてわかるといっても過言ではないような、そんな“全部盛り”なストーリー。それを劇場版として公開できるということが、一演者としても、作品の一ファンとしても、とてもうれしく思っていますね。

――今回のセバスチャンは余裕のない必死の形相で戦うなど、今までとは違う表情を見せます。アニメ開始当初は感情を置いてくる演技をされていたそうですが、今回のセバスチャンはどのように演じられたのでしょう?

小野
阿部記之監督が音響監督も務められたんですが、今回のセバスチャンを演じるにあたり、「これまでは極力、感情表現をしないよう演じてもらったけど、今回は存分に熱量を乗せてください」と言ってくれました。それは阿部監督の思いでもあり、枢やな先生の思いでもあったんです。今回は葬儀屋(アンダーテイカー)という強大な敵が現れ、セバスチャンもピンチに陥ります。息が上がり、感情があらわになる。8年演じてきた中でずっと抑えてきたものを、「逆に出してください」と言ってもらえた。それって僕にとってはご褒美のような感覚でしたね。これまでずっと演者として乗せたくなる部分を乗せずにやってきた。スタッフのみなさんと築いてきた絆や、作品の重みを土台にしながら、ようやく「感情を乗せてください」って言ってもらえたことが、本当に嬉しかったんです(笑)。


――2008年から現在まで8年間セバスチャンを演じてこられて、小野さんの中で変化したことはありますか。

小野
技術的な面で言うと、セバスチャンのおかげで低音が安定して出せるようになりました。最初に演じたときは「とにかく低く、抑揚を抑えて、感情を出さずに演じてください」と再三言われていたので。今だから言えるんですけど、当時はそれがすごく苦しかったんですよね。このまま何も感情を表現できない役なのかなって思った時期もあって、実はすごく悩んだキャラクターなんですよ。でも悩んだことで、引き算をする勇気が持てた。それ以降にいただいた役柄も、この経験が反映されていたように思います。セバスチャンを演じたことによって、声の幅が広がり、演じられる役柄も増えた。昔だったらできなかったような、たとえば年齢を重ねた役や、すごくタフな役もいただけるようになった。一生物の役をいただけたんだなって改めて感じています。

――今作でセバスチャンは、死神のグレルとロナルド、そして葬儀屋(アンダーテイカー)とも戦います。アクションシーンが多い作品でもありますね。

小野
枢先生からも「今回は熱量を存分に出してください」というメッセージをいただいていたので、これまでのセバスチャンとしては類を見ないぐらい、アクションにアドリブをたくさん乗せています。死神のグレルやロナルドももともと躍動的なキャラクターなので、彼らもアクションがさらにエネルギッシュになっていますしね。自分としても、「セバスチャンが本気で戦うとこういう息が出るんだ」って思ったほどでした(笑)。


――小野さんが特にお気に入りのシーンはありますか?

小野
今作の見どころは、主要キャラクターがほぼほぼ出てくるということだと思います。そしてもうひとつは、原点回帰。シエルとセバスチャンが出会った頃のことが回想シーンとして出てくるんですが、そこがすごく好きですね。シエルに「今日からお前はセバスチャンだ」と名付けられたセバスチャンが「前任の執事の名前ですか?」と尋ねると、シエルは「いや、犬の名前だ」と答える。セバスチャンは心の中で「とんでもなく性悪なガキに仕えることになってしまった」と毒づく。その一連の流れが、あぁすごくセバスチャンとシエルだなと。この会話から始まったんだなって思うと、8年間積み重ねてきてよかったなって改めて思ったんですよね。

――主人と執事という関係性が始まった瞬間ですね。

小野
人間の魂の気高い部分とその裏腹な部分、表裏一体で描くのが『黒執事』。それがこの回想シーンで垣間見ることができる。今でこそ完璧に見えるセバスチャンも、最初は貴族社会のことを何も知らなくて、シエルから教えてもらっていたということも今回わかります。そして逆に、悪魔の力で成せることをシエルに与えていった。シエルとセバスチャンは2人でひとつ。表裏一体となるそのスタート地点を演じられたこと、そしてそれを見れたことも、何度も言っちゃいますがうれしかったんです(笑)。だから今回、演じていてずっと楽しかったんですよね。

(次ページ:■同じキャラクターを長く演じる喜び)

■同じキャラクターを長く演じる喜び

――セバスチャンを演じるとき、小野さんはどのように気持ちを作るんですか。

小野
最初のうちはずっと、自分ひとりで演じているように思っていました。感情がないし、技術的にも自分だけでこの役を構築しなきゃと思っていたので。でも第1期の途中あたりから、ひとりで背負っていても完成しないなって気づいたんです。だから今では、久しぶりに『黒執事』に入るときには、シエルを筆頭に周りのみなさんの声を聴くようにしています。一人で物を作るとてきめんに、自分の中でしか作っていないものになってしまう。逆にぶれてしまうんですよ。これって、キャラクターの関係性に似ているかもしれない。セバスチャンも、悪魔でいる時はひとりだっただろうけど、シエルと出会ったことによって彼はここにいる。シエルがいなかったらここにいないわけですから。セバスチャンとシエルはふたりでひとつ。だから坂本真綾ちゃんの声を聴くことで、セバスチャンが自分の中に降りてくるんです。


――こうして小野さんに『黒執事』のお話を伺うと、小野さんの作品愛、キャラクター愛が伝わってきます。8年同じキャラクターを演じるって、どのような感覚なんでしょう?

小野
ラジオやイベントなどで10年続けているものはあるんですけど、ひとつのアニメ作品で8年も共に歩んでいる作品というのは、ほかにないんですよね。僕が一番長く関わっているアニメです。そして座長として真ん中にずっといさせていただいている。でも枢先生をはじめ、作品に関わるスタッフのみなさん、『黒執事』が好きなんだなと思わせてくれることも、ずっと変わらない。新シリーズの制作が決定するたびに、そして再びセバスチャンを演じるたびに、『黒執事』に関わる喜びが増していく。それがすごく幸せなんです。

――長く続くことでファンも増えていきますしね。

小野
8年もやっていると、他の現場で若手から「『黒執事』好きなんです」って言われることも多いんですよ。そんな人気の作品に関われて、しかも原作が今も連載されていて、どんどんアニメ化されていく。これってとても嬉しいことですよね。昔すごかったではなく、今もあり続けているんですから。

――しかもこれだけ長く続いていながら、作品のパワーが衰えることがないですよね。原作も世界観により深みが増し、謎も深まっています。小野さんは作品の一ファンでもあるとのことですが、小野さんがファンとして感じる『黒執事』という作品の魅力ってどういうところだと思われますか。

小野
この「豪華客船編」は『黒執事』の魅力を全部詰め込んでいると言いましたが、『黒執事』という作品全体もまた、コミックが持つ要素すべてを持っていると思うんですよね。まず今回の映画自体がホラー&サスペンス。そこにまずアクションが入り、シリアスな人間ドラマも入る。もちろん『黒執事』に欠かせないユーモアも入っている。エンターテインメントを凝縮した作品だなと思います。人間の美しい部分と泥臭い部分もしっかり描くし。僕、いつか枢先生に聞きたいと思ってることがあって。セバスチャンの「あくまで執事ですから」っていうセリフを、「ただ言いたかったんですよね?」って聞いてみたいんです(笑)。『黒執事』ってあのセリフがすべてだと思うんです。ダジャレであり、様式美でもありますから。

――確かに、あのセリフに『黒執事』のすべてが詰まっていますね。

小野
決めゼリフがある作品って今のご時世なかなかないと思うんですが、『黒執事』は必ず決めゼリフを言う。素晴らしいエンターテインメントだなって思うんですよね。ファンを裏切らないということだし、水戸黄門の印籠のようなもの(笑)。だからずっと続いているんじゃないかなって、最近改めて思っているんです。

――シエルの魂が欲しいというセバスチャンの思惑が、あの一言に凝縮されているという。

小野
これは僕の憶測ですけど、枢先生は「あくまで執事ですから」が言いたくて1話目を描いたと思うんです。でも今回の映画で描かれたシエルとセバスチャンのなれそめを見ると、すでに「あくまで執事ですから」を地で行っている。このセリフを軸にストーリーがどんどん肉付けされて、いろんな方向に広がったのかなと思いましたね。シエルとセバスチャンって表面的には美しい主従関係に見えますけど、あの決めゼリフは「悪魔だからわかっておけよ」「なめるなよ」という恐ろしい台詞でもある。『黒執事』をよく知らない人でも、まず思い浮かべてくれるセリフです。第1話からその様式美と恐ろしさを10年間ずっと描き続けてくれている枢先生には、本当に頭が下がる思いです。

――最後に『黒執事』ファン、そして劇場版『黒執事 Book of the Atlantic』を観るすべての方にメッセージをお願いします!

小野
これまでずっと応援して下さった皆様に必ず満足していただける、『黒執事』の集大成です。作品の魅力が全て詰め込まれているので、まだ『黒執事』を見たことがない方も楽しんでいただけるようになっています。『黒執事』が好きな方って、きっと一生この作品を愛してくださると思うんですよね。僕にとっても一生物の作品。これから先もずっと携わっていきたいです。

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