「ムシューダ臭い」と言われるのが悲しい--エステー社員が語る衣替えと防虫

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2017年05月02日 13:14  マイナビニュース

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●虫食い穴の見分け方は?
新たな気持ちで2017年を迎えたのが昨日のことのようだが季節が過ぎるのは速く、既に1年の半分近くが経とうとしている。筆者宅のクローゼットを開けるともう1カ月くらい着ていない冬服が未だに場所を取っており、読者の皆様の中にも「衣替えなどとうに済んだわ」という人もいれば「もうしなくてもいいかなって思ってる」みたいな人もいるだろう。今回はどちらの人にも役に立つ情報を紹介したい。

服の「虫食い」である。気づけば服に小さい穴が空いていたという経験はないだろうか(筆者はあった)。というか、虫食いがそもそも何なのか皆さんご存じだろうか(筆者はよく知らなかった)。今回は、衣類用防虫剤「ムシューダ」を製造するエステーのムシューダ担当・高野豪(たかのつよし/「高」ははしご高)さんに虫食いについて基本から教わってきた。

○本当に「虫」が服を食べている

――よろしくお願いします。僕も含めて現代っ子は服の「虫食い」という現象にあまりピンときていない気がして、「そもそも虫食いとは?」というところからお聞きできればと思うのですが
意外と「菌」や「カビ」みたいなイメージを持っている方が多いみたいなのですが、「虫食い」は文字通り「虫」が服の繊維を食べることによって発生します。主に「ヒメカツオブシムシ」「ヒメマルカツオブシムシ」「イガ」「コイガ」の4種類の虫の幼虫がその犯人ですね。このセーターに空いている穴、これが虫食いです。

――僕もこういう穴がセーターに空いていた経験があるのですが、引っかいて空いてしまった穴とはどう見分ければいいのでしょうか
引っかいて空いた穴との見分けは確かにつきづらいのですが、引っかき傷の場合は穴の周りから糸がピョーンと飛び出ていたりしますよね。虫食いの場合、虫が繊維そのものを食べてしまうのでそういった痕跡がなく穴が空きます。

それから……、衣類害虫は食べた繊維と同じ色のフンをするので、穴の周りに色のついた粉のようなものが散っていたらほぼ間違いなく虫食いですね。

――フンかぁ……。発見した時のショックが大きそうですね。どういう服が食べられやすいのでしょうか
動物性繊維のものがよく食べられますね。よく「高い服ほど食べられやすい」といいますが、ウールやカシミアが大好物で、次に綿や麻など植物性の繊維が好まれます。

――「高い服ほど〜」というのは、普通のウールよりもカシミアが好んで食べられるということでしょうか
そうですね。たぶん、カシミアの方が食べやすいんですよね。肌触りがいいということは、繊維が柔らかいということなので。人にとっての高級素材は虫にとっても高級食材なんです。

○家の中で繁栄してしまうことも

――贅沢な虫ですね
今日は元気なヒメカツオブシムシの幼虫を持ってきましたので、実際に見てみてください。

――うわ! 思ったより大きい
さきほど挙げた4種類の中では、この虫が一番大きいですね。幼虫で7mm〜10mmほどあります。暗いところが好きなので、こうやって明るいところに出すと布の下に潜ってしまうんですよ。ほら。

――こいつに服を食べられているんですね……嫌だな……
ヒメカツオブシムシの生涯は1年間で1サイクルなんですが、幼虫の期間が約10カ月あるんですね。服を食べるのは幼虫だけです。で、脱皮を繰り返して大きくなって、約10カ月経つとサナギになって成虫になります。

――成虫になるとどうなるんですか
服は食べませんが、卵を産みますね。服に。

――嫌すぎる
衣類害虫は気温15度〜25度・湿度60%以上の環境を好むのですが、今は住宅環境が良くなっているので、夏や冬も一年中この環境を保っている家が多いですよね。なので、衣類害虫も家の中で孵化と成長のサイクルを繰り返してしまう状態になりがちです。

――最悪ですね。衣類害虫は、最初はどこから家の中にくるのですか?
成虫が外から家の中に侵入して、卵を産み付けることで虫食いが起こるケースが多いと思います。カツオブシムシの成虫は人に近いエリアに生息しているので侵入を完全に防ぐのは難しいですね。窓の隙間とかドアの開閉とか洗濯物とか、経路はたくさんあるので……。

――そこで防虫剤の出番というわけですね
そうなんです。

次のページでは、「ムシューダ」に代表される防虫剤の賢い使い方や、誤解されがちなことを紹介しよう。

●防虫剤の正しい使い方って?
○防虫剤は具体的に何をしているのか

――また基本的なことを聞くのですが、防虫剤って殺虫剤とは違うんですよね?
成分自体は、殺虫剤にもよく使われるものを配合しています。直接的に虫を殺すわけではないのが殺虫剤と違うところですね。瞬間的な効果よりは、長い間効き続けて衣類を守ることが大切なので。

――なるほど。虫にはどのように効くのでしょうか
他社製品のことは申し上げられませんが、当社が販売している「ムシューダ」ですと、防虫成分が広がり幼虫の動きが止まります。活動が鈍くなり、繊維を食べられず最終的には餓死してしまう。難しい言い方をすると「食欲減退効果」ですね。

あとは、「成虫を寄せ付けない効果」「成虫が産んだ卵を孵化させない効果」もあります。

――特に防虫剤を使うべき時期はありますか?
有効期間も1年ありますし、1年中使ったほうがいいかと思います。先程も申し上げたように、衣類害虫は気温15度〜25度・湿度60%以上で活動が活発になります。春から秋にかけて……つまり1年のほとんどですね(笑)。

冬も暖房が効いている住まいが多いと思いますし、虫食いのリスクは無視できません。

――虫だけに無視できないと
そういうことではないです。

○よく使う収納ほど危険!

――「ムシューダ」に限らず防虫剤って、着ない服を保管しておく衣装ケースなどに使うシーンが多いイメージがあるのですが、普段使いのクローゼットでも使ったほうがいいのでしょうか
その印象も「虫食い」の誤ったイメージからきていると思うんですよね。たぶん、食べ物みたいに「虫が湧く」というイメージをお持ちなのではないでしょうか。暗くてジメジメしている場所に置いておくと、いつの間にか虫がわらわらと……という。

――あ……。たしかにそう思っていました。でも実際は違うんですよね
そうですね。頻繁に開け閉めをするクローゼットは換気が行き届いているので、虫食いが起こらないように感じるかもしれません。ですがそれは気のせいです。虫食いは、外から成虫が入ってきて服に卵を産み付けることから始まります。

よく開け閉めをする収納こそ、成虫が侵入するリスクが高いので、きちんと防虫剤を使った方がいいですね。

――なるほど。帰ったらちゃんとセットします……

○衣替えの前にクリーニングを

――未だに衣替えができていない人にアドバイスはありますか? 僕のことなんですが
クリーニング屋さんに聞くと、冬服を次のシーズンまで放置してしまって、着る直前にクリーニングに出す方が多いらしいですね。特に若い人ほど。

ですが、これは虫食いだけでなくいろいろなリスクを高めてしまうので、ほんのちょっとだけ着た服であっても、クリーニングに出してからしまった方がいいです。

――身に覚えがありすぎてつらい
冬物の服って、汚れがあまり目立たないものが多いんですよね。でも、皮脂の汚れや食べこぼしなど、気づかないだけでついている可能性はあります。これを放っておくと、そこから変色してしまったりカビが生えてしまったり、皮脂汚れが酸化すると黄ばみに変化したり……。汚れや食べ汚しは衣類害虫の栄養源にもなってしまうので、虫食いのリスクも高まります。

――きちんと清潔にしてから衣替えに取り掛かるべきということですね。
そういうことです。冬のアイテムだと、忘れがちなマフラーなんか特に注意してほしいです。直接肌に接していますからね。思ったよりも汚れているかと……。

それから、クリーニングから返ってきた衣類についてですが、ビニールのカバーは外していただくのがベストですね。あれ、クリーニング屋さんによると、お店から自宅まで汚れがつかないようにするカバーらしいんです。

カバーの内部で湿気がこもりやすいので、帰ったらカバーを外して一旦陰干ししてからしまうのがベストですね。コートなど、ホコリがつきやすいものの場合は防虫カバーを使っていただくのが安全安心かなと。「ムシューダ まとめて防虫カバー」とか……。

――検討します

次のページでは、防虫剤の正しい使い方、そして高野さんの防虫剤への思いの丈を紹介する。

●こんなにある! 防虫剤の誤解
○防虫剤は上に置いて!

――「ムシューダ」はバリエーションがいろいろありますが、正しい使い方ってあるんですかね
ありますよ! ベタな話で言うと、引き出し用の防虫剤を服の下に入れたり、服と服の間に挟んだりする間違った使い方が多いですね。基本的には、一番上に置いていただくのがベストです。防虫成分は空気より重く、上から下に薬剤が広がるからです。

――僕、服の間に挟んで使ってました
いやー、割と皆さんそうなんです。「おわり」マークが出る上に穴が空いているので「上から防虫成分が出るんだろうな」と思われるのかもしれません。

ただなかなか本体に注意書きを印刷するのは難しくて……。パッケージには書いてあるんですよ。ここに書いてあります。書いてあるんですけど。まぁ慣れていると、改めて読まないですよね。

あとは、クローゼットに「洋服ダンス用」のムシューダをかけているとか。

○クローゼットに「洋服ダンス用」はNG!

――ダメなんですか?
そうなっちゃいますよね……。まず、「洋服ダンス用」で想定しているサイズって、壁に備えつけの標準的なクローゼットより小さいんですよ。「クローゼット用」の標準容積は2,400L(奥行60cm×幅180cm×高さ220cm)なんですが、「洋服ダンス用」は500Lまでの空間にしか適用できないんです。なので、効果が十分に発揮できない。これも、ここに書いてあるのですが……。

――適用容積が一番大きい商品は「ウォークインクローゼット用」ですね
ウォークインクローゼットは、ムシューダでいうと2畳の広さで計算しているんですけど、容積にすると7,800Lになります。「クローゼット用」は2,400Lなので全然違いますよね。このようにさまざまな用途があるので、感覚で選ばずにパッケージを一度確認してください。

――適正な使用量にしないと効き目が薄くなってしまう
そうです。それから、個数の間違いもありがちなので注意してください。クローゼットに1個だけ掛けるとか。……でもまぁそれが普通の感覚だとは思うんですよ。

○1個だけ掛けるのもNG!?

――え? 基本1つのクローゼットに1個ですよね?
そうなっちゃいますよね……。実は「ムシューダ クローゼット用」って1箱に3個入ってるんですよ。これ1箱買えば3回使えるというわけじゃなくてですね、クローゼット用なら「3個で標準クローゼット1つ分」という意味なんです。まぁそれもここに書いてあるんですけど……。

クローゼットもご家庭によって広さがまちまちなので、使用量を1個にしてしまうと使い勝手が悪いんですよね。それで3個にしているんですよ。

――全然知らなかった
パッケージに書いてあるんですけどね……。なかなかしっかり読まないですよねぇ……。我々としては、今後もっと分かりやすくお客様にお伝えできるようにしなければならないと考えています。

○「ムシューダ臭い」と言わないで

――最後に、何か伝えたい事があればお願いします
いっぱいあるんですけど、若い人ほど防虫剤を使わないっていう課題はあるんですよね。生き死にに関係するような物じゃないので当然だとは思うんですけど……。ただ、虫食い自体は非常に身近なものなので、もっと使ってほしいですね。

それから、若い方は「防虫剤」というと古臭いイメージがあるようで、「ムシューダ」もナフタリンのような薬剤のニオイがあるタイプの防虫剤と混同されてしまっているんですよ。ツイッターでも「あーなんか電車の中がムシューダ臭い」みたいな……。「ムシューダ臭い」って、ムシューダにはニオイがないんですけどね。

いや、すごくありがたいんですよ。防虫剤の代名詞みたいになっているわけなので。ただ、「ムシューダ」にニオイがあるイメージを持たれてしまうとね、悲しいです。無臭タイプのものもいい香りのものもあるので。

――まずは若い人に「使ってみて」と。そういうことですかね
そうですね。防虫剤は"何事もない"ことが効果の証なので、効果の実感がわきにくいという面は確かにあります。

ただ、先程もお話したとおり、衣類害虫は高級な衣類を好んで食べます。とっておきの服を長く楽しむために、ファッションを楽しんでいる若い方にこそ使っていただきたいですね。

――この記事がそのきっかけになるように祈っています。ありがとうございました(諫山大樹)

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