『けものフレンズ』や『おそ松さん』はどんな環境で生まれた? テレ東アニメ局部長に聞く(前編) - "けもフレ現象"の裏側

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2017年06月20日 07:34  マイナビニュース

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●アニメ局の成り立ちと『けものフレンズ』誕生秘話
「アニメの広がりは無限大なので」「アニメってすごく難しいけど、楽しいんです」。そう語るのは、テレビ東京アニメ局アニメ事業部の部長・廣部琢之氏だ。テレビ東京のアニメと言えば、2017年で放送20周年を迎えた『ポケットモンスター』シリーズを筆頭に夕方や朝の時間帯では『遊☆戯☆王』シリーズ、『NARUTO-ナルト-』シリーズ、『プリパラ』シリーズと息の長い作品が多い。その一方で、深夜帯では『夏目友人帳』シリーズ、『弱虫ペダル』シリーズなど各所から熱い注目が寄せられた作品も放送されてきた。中でも『おそ松さん』や『けものフレンズ』の大ヒットは記憶に新しい。

そんな同局のアニメに関する様々な事柄を統括してビジネスとして取り組んでいるのが、アニメ局・アニメ事業部。アニメ局は現在65人ほどが在籍する、言わばテレビ東京アニメの総司令部だ。その内部では放送中の作品の展開はもちろん、既に放送が終了した作品に関した展開でも、配信や海外販売など実に多種多様なプロジェクトが動いている。彼らはどんな課題をテーマにアニメの仕事に取り組んでいるのか、そして先に挙げたヒット作の数々はどういった環境の中で生まれたのか。部長の廣部氏への取材で、『おそ松さん』や『けものフレンズ』、『NARUTO-ナルト-』などの製作の裏側から、テレビ東京のアニメの仕事の核までを伺った。これを2回にわたってお伝えする。まずは爆発的にヒットした『けものフレンズ』の裏側のエピソードを紹介したい。

○テレビ東京らしい作品を多くの人に観て楽しんでもらいたい

――廣部さんは、ずっとアニメ局にいらしたのですか。

2005年の7月にアニメ事業部という部署ができた時に配属されました。その後、2009年4月にアニメ局ができました。

――アニメ事業部の前からアニメに関わっていらしたのですか?

その前は映画の出資部署にいて、邦画製作や洋画提供をしていました。その時に『NARUTO-ナルト-』はじめアニメ映画の製作にも関わっていました。その後、テレビ放送や映画にイベントなどアニメに関すること全てを集約していくということでアニメ事業部ができて、さらにその後、制作や海外販売・配信もやっていこうとアニメ局という大きな組織となりました。

――他局ではあまり見られないと聞きました。

そうですね。テレビ東京が初めてアニメだけのセクションを作ったと思います。

――そんなテレビ東京さんはどういった観点から放送するアニメ作品を選ばれているのかお聞かせください。

ウチはアニメの放送枠だけでも1週間で30枠以上あるんです。御存知の通り、夕方帯に放送している作品もあれば、土日の朝、ゴールデンタイム、深夜とすごく色々な放送枠でやっています。もちろん、その枠によってターゲットや目指す方向性は違いますが、放送局である以上、大勢の人に観てもらいたい、楽しんでもらいたいというのが1番の目的としてあります。漫画や小説が原作のアニメもあれば、玩具やゲームから生まれたアニメもあれば、国内だけでなく海外での配信や放送などの展開も見据えたアニメも……というように色々な観点があって。国内を中心に盛り上げたいという作品、海外で積極的に展開したいという作品、あるいは玩具やゲームを活性化したいという作品もあって、目的も本当に多岐にわたるんですね。様々な番組がありますけども、何かテレビ東京らしさ……「テレビ東京っぽいね」と思われるような作品でありたいとは考えています。

○アニメ局員2人の熱烈アピールから始まった『けものフレンズ』

――なるほど。それでは具体的なところで『けものフレンズ』についてお聞きしたいのですが、あのプロジェクトはどういった企画から始まったのでしょうか。

アニメ局員2人がすごく熱い気持ちを持ってプレゼンしたので、僕たちとしては「やっていこうよ。ちゃんと放送できるように仕上げてね」と言いました。作品内容だけでなく製作委員会のメンバーやビジネス展開のプランといったことも含めて、放送成立への構想を固めることが出来れば「応援するぞ」というスタンスでした。

――放送が始まる前の印象はどういったものでしたか。

吉崎(観音)先生のあのキャラの設定を見て、「キャッチーだしすごく魅力的なキャラクターデザインだな」と感じました。だから「これを映像として動かした時どうなるのかな」「楽しみだな」というワクワク感と……小説や漫画といった原作となるストーリーがあるわけではないから、「どうなるんだろうかな」という期待と不安とが入り混じった感じで完成するのを楽しみにしていましたね。

●視聴者目線で感じた"けものフレンズ現象"、社内でも大きな話題に
○"けものフレンズ現象"は視聴者と同じ目線で

――確かにアプリはあったもののそれを原作とはしなかったですものね。

そうです。それに今回、少し普通のアニメーションとは違うセルルックCGを使っていたので、「どういう動きになるんだろう」という楽しみもありました。

――放送の途中で一気にブレイクしました。その時の感触はいかがでしたか。

僕たちも視聴者の方たちと一緒で、話数が進んでいくほど、『けものフレンズ』の魅力を感じました。第1、2話くらいの時だと、「あのキャラクターデザインの絵がこういう動き方をするんだ」「こういう展開になるんだ」というのを、視聴者と同じようなタイミングで僕たちも感じていて。エピソードが進んでいくごとに「おおお!?」と(笑)。だから、その先の読めなさと想像力を掻き立てるような作り方に僕たちもまんまと引き込まれたし、視聴者と同じ目線で『けものフレンズ』という現象を感じていました。

○「皆で色々想像を掻き立てながら作品を観る」楽しみを提供できた

――最終話に近づくと配信サイトも(サーバーが)落ちたりしていましたしね。

これは他の作品でもそうなんですけど、やっぱり今ってSNS等もあるから、拡散のスピード感と大きさが半端じゃないんですよね。世の中の人の「面白い! こんなのあるんだよ!」という情報の広がりが早い。そして広いから、あっという間に社会現象になった。それにキャッチーですよね、『けものフレンズ』というタイトルもそうだし、ロゴやビジュアルも親しみやすい。途中からでも作品に入ってこられるし、逆に途中からあらためて1話が観たくなったりだとか。

――私も友人に"布教"していました(笑)。

また皆さん、深読みしてくれるじゃないですか。「このセリフは〜」とか「この動きは〜」とか「これはこういう伏線だ」みたいに。

――それでまたSNSで議論が盛り上がったり。

だから、「皆で色々想像を掻き立てながら作品を観る」という楽しみを提供することが、1クールという放送期間中に上手くできたと思っています。放送が終わった後も「こんな面白いものがあったんだよ」と色んなところで語っていただいて。あとは動物園というすごく親しみやすい仲間もいて、そういう方たちもすごく作品を応援していただきました。

○新たな課題は「ファンの熱量にどう答えていくか」

――終わってみてからの社内での反応はいかがでしたか。

「すごいね」「すごかったね」という話がまずあります。やっぱり一つでも社会現象になる作品があるとアニメ局の中も盛り上がるし、会社に色々問い合わせがくるので、社内も熱くなりますよね。またテレビ東京でやったなら作品を長くやっていきたい、長く愛される作品に育てていきたいという思いが強くあるので、『けものフレンズ』も1クールの放送は終わったけれど、この盛り上がりを大切にしたいし、ファンの熱量にどう答えていくのかというのが一つの課題としてあるので、今はそういう方にシフトしていますね。『けものフレンズ』は、東名阪でしか地上波の放送がなかったので、もっとたくさんの人に観てもらいたい、触れてもらいたいと思っています。それに、知らない人もまだまだたくさんいると思うので、その人たちにどうやって観てもらうか、知ってもらうかを真剣に考えています。

――高橋雄一社長も定例会見で『けものフレンズ』に触れていらっしゃいましたね。

社長も話題にしましたし、他の部署からも、「『けものフレンズ』ってどういう作品なの?」という声もあれば、「何か一緒にコラボできないの?」みたいに言われますね。例えば、作品は変わってしまいますが『おそ松さん』はドラマ『バイプレイヤーズ 〜もしも6人の名脇役がシェアハウスで暮らしたら〜』とコラボ展開しましたし、そういった「何か面白いことできれば良いね」というムードが力になります。

次回、後編では深夜帯だけでなくテレビ東京で長く放送されている(されてきた)様々なアニメの取り組みについてお伝えしたい。

■プロフィール
廣部琢之
テレビ東京アニメ局アニメ事業部部長。
1993年、テレビ東京に入社。営業局、映像事業部などを経て、2005年にアニメ事業部へ。担当した作品は『NARUTO-ナルト-』、『テニスの王子様』、『おそ松さん』、『しろくまカフェ』などTVアニメ、映画、舞台、イベントなど多岐にわたる。2016年より現職。

(C)けものフレンズプロジェクトA(青野恵介)

このニュースに関するつぶやき

  • けものフレンズはここ最近では最高ランクの完成度の作品だと思う。こんなに引き込まれるとは思ってもみなかった。あっぱれです。
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