『魔法陣グルグル』『最遊記』『封神演義』……なぜ90年代原作アニメが再びブームに?

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2017年09月07日 10:42  リアルサウンド

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 『魔法陣グルグル』に『最遊記RELOAD BLAST』。1989年生まれ、アラサーの筆者としては、「今は本当に2017年なのか……?」と錯誤してしまうほど、今期アニメは懐かしすぎるラインナップになっている。その上、つい先日『封神演義』の再アニメ化も発表され、筆者の同世代を中心に、アニメファンは大いにざわついた。いったいなぜ、ここにきて懐かしアニメに再びスポットが当てられているのだろうか。


参考:実写をアニメ化する試みは成功したのか? モルモット吉田の『打ち上げ花火〜』評


■消費意欲の高いF1層がターゲットか?


 まずは、『魔法陣グルグル』、『最遊記』、『封神演義』のアニメ1期放送開始年度を確認したい(※カッコ内は原作連載開始年度)。


・魔法陣グルグル:1994年(1992年)
・最遊記:2000年(1997年)
・封神演義:1999年(1996年)


 『魔法陣グルグル』のみ90年代前半の放送で、『最遊記』と『封神演義』は原作連載とアニメ放送、ともにほぼ同時期にスタートしている。その間に約5年のブランクがあるが、これら3作品を見ていたのは、恐らく同世代の層だったのではないだろうか。というのも、『魔法陣グルグル』は他の2作品と比べるとストーリーが易しく、より子ども向けだ。つまり、幼い頃『魔法陣グルグル』を見て育った世代が、成長してから『最遊記』と『封神演義』も視聴していたと考えられる。


 3作品とも、アニメ1期では、夕方からゴールデンタイムにかけての放送時間だった。しかし、現在放送中の『魔法陣グルグル』と『最遊記』は、どちらも深夜帯の放送(※『魔法陣グルグル』は、アニメシリーズとしては初の深夜帯放送)となっている。この放送時間から見ても、今期では大人の視聴者をターゲットにしているのは明白だろう。


 さらに、これらの作品は、消費意欲が旺盛と言われるF1層(20〜34歳の女性)をメインターゲットにしているのではないか。『最遊記』は言わずもがな、元々少年誌連載作だった『封神演義』も、同人誌やBL好きの女性人気がとても高い。また、『魔法陣グルグル』も、男女問わず支持されている作品だが、どちらかといえば女性ファンが多い印象だ。


 最近では女性のアニメファンも増え、グッズの売れ行きは女性向けコンテンツの方が男性向けコンテンツより勢いがあるとも言われている。そうしたF1層を意識したことが、過去作品の再評価につながったのではないだろうか。


■新作アニメラッシュへのアンチテーゼ


 リメイクアニメやシリーズアニメが脚光を浴びているもうひとつの理由として、近年の1クールアニメの増加に伴うマンネリズムが影響しているとも考えられる。


 ここ数年、「アニメが増えすぎだ」という声をよく聞く。確かに、アニメの作品数だけで見れば、近年大幅な増加傾向にあるのは確かだ。しかし、テレビ番組におけるアニメの放送枠は、さほど急増しているわけではない。アニメ1話ごとの年間放送数(放送枠)自体は、1996年からの20年間で約25%の増加と、比較的ゆるやかな変移となっている(参考:みずほ銀行 産業調査)。だが、放送作品のうち、2006年からの10年間で、1クールアニメの割合は約30ポイント(本数ベースでは2.3倍)増加している(参考:アニメ調査室(仮))。


 24話分の放送枠があるとして、1クールアニメなら2作品、2クールアニメなら1作品が放送作品数としてカウントされる。つまり、限られた枠数の中で1クールアニメの割合が増えれば、作品数も増加するというわけだ。そのため、アニメの放送枠がそれほど大きく変わっていないにも関わらず、1クールアニメの割合が急増したことでアニメの放送作品数が増え、アニメの放送枠自体も増えたように感じられるのだ。


 また、次々と新作が発表されれば、その度に各アニメの1話を見て、その後視聴を続けるか否かの判断もしなければならない(いわゆる「1話切り」)。そうやって毎クール何本もの新作をチェックすることは、視聴者にとってある種の心理的負担ともなるだろう。1話切りを繰り返す作業に疲弊している人も少なくないはずだ。


 だが、シリーズ作品や再アニメ化作品なら、過去にその作品を見たことがあれば「1話切りをするか否か」の判断を省略できる。また、ある程度オチやストーリーがわかっていれば、「最終話を見終わってガッカリする」リスクも回避できるだろう。作品に対して懐疑心を持たずに向き合えることは、視聴者からすればとてもありがたい。


 1クールの新作アニメが乱立しているなかで、こうした定番作品の存在はとても貴重だ。『最遊記RELOAD BLAST』は今回1クールだが、それでもほかの新作アニメとは大きく差別化されているだろう。再アニメ化作品には、1クールアニメの増加で生じた、視聴者のマンネリや疲弊感を打破する力があるのだ。


 前述した3作品とは放送時期が異なるため、今回は言及しなかったが、今期アニメ『地獄少女 宵伽』や劇場版『コードギアス 反逆のルルーシュ』など、新作アニメラッシュに逆行する作品は、ほかにもいくらか見受けられる。『封神演義』放送後の反響次第で、こうした過去アニメの再評価が今後もさらに加速するかもしれない。


■まにょ
ライター(元ミージシャン)。1989年、東京生まれ。早大文学部美術史コース卒。インストガールズバンド「虚弱。」でドラムを担当し、2012年には1stアルバムで全国デビュー。現在はカルチャー系ライターとして、各所で執筆中。好物はガンアクションアニメ。


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  • (´・ω・`)要はアニメ制作会社が負のスパイラルに陥っているって事なんだよな(続)
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