秘密基地さながらのSteve Jobs Theaterに潜入 - ロックバンドのコンサートが開けそうな設備が!

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2017年09月29日 18:44  マイナビニュース

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画像提供:マイナビニュース
9月12日(米国時間)に開催されたAppleのスペシャルイベントは、iPhone XとiPhone 8/8 PlusにApple Watch Series 3、Apple TV 4Kの発表の場であったと同時に、新キャンパスであるApple Park内のホール「Steve Jobs Theater」のこけら落としともなる催しでもあった。本稿では、その内部の様子と、近隣に設営された従業員以外でも利用可能な施設「ヴィジター・センター」を紹介しよう。

スペシャルイベントの前日に偵察に行ったところ、至るところにセキュリティが配備されており、中を覗くことはできなかったのだが、ようやくその姿を拝むことができたSteve Jobs Theater。イベント当日、報道陣はNorth Tantau Avenue沿いの受付(Tantau Reception)を通り、Apple Park内で最も高い丘へと徒歩で向かう。程なくSteve Jobs Theaterのエントランスに到着。左手には「宇宙船」と称される環状のキャンパス本館を臨む。植栽の途中なのだろうか、未だ禿山となっている場所もあり、周囲からは肥料の匂いが立ち込めていた。日本からのジャーナリストから誰からともなしに「畑」という言葉が漏れる。

Steve Jobs Theaterは、1,000人収容が可能な施設で、入口の高さが20フィート・直径165フィートのガラス製の円柱がメタリックカーボンファイバー製の屋根を支えている。これを「円柱」と表現して良いものなのか迷うところだが、円を描いたガラスの壁が屋根を支える構造物となっているのだ。よって、一見「壁」、構造としては一本の「柱」ということになろうか。これは実は、サンフランシスコの中心部、ユニオンスクエアに開業したApple Storeと同じ構造となっている。Apple Union Squareでも柱に該当する構造物は見当たらないのだ。

デザインはAppleの最高デザイン責任者であるジョナサン・アイヴが指揮をとっているが、設計を手掛けたのはハイテク建築の旗手、ノーマン・フォスター率いるフォスター・アンド・パートナーズだ。ガラスの壁に構造体を外部に露出させる手法を得意とすることから考えると、Steve Jobs Theaterの仕上がりは、まさに本領発揮といった趣である。

建物の一階部分はフラットな床が広がるだけで、エレベーターと二つの階段以外、特に見当るものはない。この日はやや日差しが強く、外で待っていると汗ばむような陽気だったためか、割合早いタイミングで一階を開場。中は空調が効いていたが、世界最大級となる自然換気機構を取り入れているため、一年のうち、9カ月間は暖房や空調を必要としないだろうという話だ。また、Apple Musicをソースとする音楽が流れていたが、これまた見当たらないものがある。スピーカーだ。天井方向から聞こえてくるのでおそらく埋め込まれているのであろうが、聞いてる位置を変えても同じように聞こえてくるという不思議な体験ができた。しかも音も良い。

さて、報道陣が次々と建物の中に入ってくる間、筆者は偶々この人物を見かけた。Appleの共同設立者、スティーブ・ウォズニアックその人だ。Appleを支えたもう一人の「スティーブ」は、評判通り、気さくでユーモア溢れる人物で、筆者が記念撮影をお願いしても嫌な顔一つせず、一言「新しいアルバムが完成したら送ってくれよ」とジョークを飛ばしてくれた。

イベントスタートの40分前に地下のホールへ移動。階段を降りると、刻まれた「Steve Jobs Theater」の文字が。そこから先へ進むと、客席がステージが目の前に広がった。客席は革張りで、座りっぱなしでも疲れない。イベント中、Apple Watchが二回も「スタンド」を促してきたが、長時間のイベントでも心地よいって、「ワークアウト」アプリ的にはマズいんじゃないだろうか。

見える範囲内でホールの設備をチェックした。照明機器はLED、パーライトの他にムービングがいくつも設置されており、ロックバンドなどの本格的なライブパフォーマンスもいけそうな充実ぶりだ。PA卓にはDiGiCo SD7が採用されている。PA卓は客席のやや下手側と、ベストとは言えない場所に設置されていたが、今回は音響的に最良なチューニングを施さなくても良いイベントだったので、そういうことになっていたのかもしれない。

イベントがスタートすると、ホール最後部の入り口のシャッターが閉まり、完全暗転が可能な構造となっていることが分かった。また、終演後にシャッターが開くと、今度はハンズオンのスペースが広がっていた。階段を降りてくるときは気づかなかったのだが、壁だと思っていた部分が実は扉となっていたのだった。引き戸となっていると思われるのだが、扉が格納するのに十分な空間がないことから、折戸を組み合わせた特殊な機構になっている可能性が高い。

エレベーターはApple 銀座と同じ油圧式。驚いたことに中で180度回転するようになっている。地下鉄のエレベーターなどで入った扉と出る扉が異なるものがあるが、これなら、入出の方向が異なっても、扉は一つあれば良いということになる。

ハンズオン終了後、徒歩でヴィジター・センターへと向かう。ここは建物の真ん中がApple Storeとなっていて、そこをカフェと、もう一つのスペースが挟み込む形になっている。この建物にも柱がない。ここのストアはインフィニット ループ ワンにあるカンパニーストアとも異なる品揃えとなっていて、他では買えない商品が数多くある。筆者も彼女のお土産をここで購入。隣のカフェとともに、スペシャルイベント当日限定のオープンとのことだったので、今行っても開いていないが、年内中には正式オープンとなるようだ。そして、もう一つのスペース、ここにはApple Parkの模型が展示されているのだが、専用アプリがインストールされたiPadを使うと、ランドスケープ、電気エネルギー、そして敷地内の風の流れを、拡張現実で表示するようになっていた。建物に寄ると中に従業員がいるのが分かったりしてなかなか興味深かった。

敷地内のごく限られた場所しか見学することはできなかったが、建造物のコンセプトはどれも同じ発想で貫かれていると感じた。それは、環境に配慮されたものであったり、コミュニティデザインに寄与するものであるといったことである。そしてそれらが創造性というキーワードで束ねられている。スティーブ・ジョブズの最後の作品と呼ばれているApple Parkには、彼の魂そのものが宿っているのだ。(稲葉雅己)

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