「ネト充のススメ」放送中にDVD全巻発売、異例の試みのワケは? comico平良聡Pに訊く

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2017年10月08日 18:53  アニメ!アニメ!

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「ネト充のススメ」放送中にDVD全巻発売、異例の試みのワケは? comico平良聡Pに訊く
三十路、独身、ニート……人生をドロップアウトした盛岡森子がネトゲを通じて夢や希望を再び手にしていく。10月クールの新番組TVアニメ『ネト充のススメ』はそんな物語だ。原作者・黒曜燐によってマンガ・ノベルアプリcomicoに掲載され人気を博した同タイトルがアニメ化となった。
comicoは『ReLIFE』や『ももくり』、『ナンバカ』などでメディア展開も盛んに行っており、工夫を凝らした放送戦略や販売方法など、作品を多角的に盛り上げようという気概が伝わってくる。特に『ネト充のススメ』ではTV放送期間中にパッケージリリースを完了させてしまうという。どうやってこの企画が実現したのかを糸口に、本作の魅力などをcomicoプロデューサーの平良聡氏にうかがった。
[細川洋平]

『ネト充のススメ』
http://netoju.com/
2017年10月7日(土)GYAO!にて先行配信スタート
10月9日(月)TOKYO MX,読売テレビにて放送スタート
10月10日(火)AT-Xにて放送、ニコニコ生放送(http://ch.nicovideo.jp/netoju )にて配信スタート


――comicoさんで連載している『ネト充のススメ』がいよいよTVシリーズでスタートします。まずはどういった経緯で本作がTVアニメ化へと至ったのでしょうか。

平良聡プロデューサー(以下、平良)
comicoでは現在、公式で367作品の漫画作品を公開しています。私どものチームはその作品群をメディアミックス化させるために各社さんに売り込んでいくわけですが、そのなかでフライングドッグのプロデューサーが『ネト充』ファンだったということがわかったんです。

――それは心強いですね。

平良
その他に声をかけた各社のプロデューサーさんも偶然にも『ネト充』ファンでいらして、結果『ネト充』ファンで製作委員会ができたという状態です。


――委員会のみなさんは本作のどういったところに惹かれたのでしょう。

平良
「アニメ好き」は今でこそオープンにできる時代となってきましたが、30代、40代と上の世代の人たちはオープンにできなかったと思うんです。森子までいかないにしろ、社会に対して後ろめたい気持ちを持っていた。そういう感情からか「ゲームを通して社会に対して前向きになっていくという物語に共感した」という人は多かったですね。
またネットゲームを含めたインターネット特有の本音によるコミュニケーションを魅力に挙げる方もいました。本作は『ReLIFE』などcomicoの他作品と比べるとファンの年齢層が少し高めです。ある程度社会経験のある人が共通点を見出しているのかなと思っています。

――本作ではTV放送中にDVDとBD-BOXのパッケージリリースが完了するというニュースに驚かされました。

平良
まずはcomicoとしても『ReLIFE』ではTV放送前に全話配信したりとチャレンジングなことをしてきました。今回も委員会ではさまざまなアイデアが出ましたが、その中で、「配信」が作品とファンとの距離感を縮める一方、「パッケージ」は変わってないな、と思っていたんです。TV放送終了後、数ヶ月してやっと手元に届く。じゃあ放送を見た直後の一番熱量が高い状態の時にすぐ買えるという、ある種のIT的な手法がアニメビジネスにインパクトを与えるのでは、と。幸い製作委員会のみなさんは、元々同じ考えをもたれていたフライングドッグさんをはじめとして、一緒にチャレンジしてくれる会社さんばかりということもあり実現しました。


――アニメーションの制作フローも通常のスケジュールでは到底成り立たないと思いますが、制作現場との調整はいかがだったのでしょうか。

平良
制作スタジオに依頼をする前に、パッケージの販売スケジュールプランは決まっていたので、アニメーション制作を担当するSIGNAL.MDさんからも「このスケジュール感でできます」という回答はいただいておりました。突然前倒しにしたわけではないので問題なく進んでいます。
アフレコも2016年12月にスタートして今年の2月いっぱいで録り終えていますが、「現実世界」と「ネトゲ世界」が連動してドラマが展開するので、キャラクターを演じる声優さんの演技を踏まえてから作画に入ろうと。なのでコンテ撮の状態で音声を先に収録し、それから作画に入りました。

――作画に関してはパッケージリリースのタイミングでリテイクをする場合も多いですが、そういったことは難しくなるということでしょうか。

平良
通常アニメを作る際は「V編(ぶいへん/ビデオ編集の通称)」という最終確認の工程をみんなでチェックをして、どうしても直したいところはリテイクをして完パケとなります。今回はV編前に「仮仮V編」「仮V編」といった風に2回挟み、可能な限り直してから完パケになるので、TV放送の段階から満足行くクオリティーでお届けできると思います。
また、作画面でのこだわりとして、シーンごとのアニメーターさんの個性が出るようなフィルム作りをしているので、若い人には新鮮に見えるでしょうし、90年代アニメを見ていた世代からは懐かしさも感じられておもしろいと思います。


――DVDはリーズナブルにもかかわらずコメンタリーが付いてくるという点で驚きました。

平良
これはDVDとBD-BOXでターゲットを明確に分けようというところから始まりました。普段からたくさんアニメを見ていて、「映像のクオリティーにもこだわりたい!」、という方や、、「もっとネト充の世界を楽しみたい!」というコアファンの皆様には、TVでは放送されない番外編(第11話)やドラマCDも入ったBlu-rayを。DVDの方は普段アニメのディスクなどにはあまり縁のない、ライト層が気軽に買えるように。また声優ファンの方々にも向けてオーディオコメンタリーはマストで付けた、という経緯があります。DVDは1巻あたり2,400円(+消費税)で、グッズを買う人たちからすればクリアファイルを3セット買うのと同じくらい。グッズ感覚で手にとってほしいと思っています。

――キャスティングも非常に力が入っていますね。

平良
桜井というキャラクターがいるのですが、誰が言い出したか、会議で「桜井って櫻井孝宏さん(がモデル)だよね」と。実はみんながそう思っていて「どうにかキャスティングしよう」というところから始まりました。現実世界のキャラクターは、櫻井さんを筆頭に、実力のあるベテランの皆様に固めて頂いて、しっかり「ドラマ」のような世界観を演じて頂こうと。反対に、ネトゲ世界は若手中心の声優さんにお願いすることで、上手く「ネット」と「リアル」の差を演出できたらなと思いました。、蓋を開けてみたら、どちらの世界も素晴らしい声優さんがそろいましたね!


――能登麻美子さんの盛岡森子は意外なキャスティングですね。

平良
能登さんご自身が出演された番組を拝見した時に「ガッハッハ」と笑っていたんです。それで、あ、この人だなと(笑)。あまり能登さんのこういった演技を見たことがなかったので、これを森子で引き出せたら話題になるかな、という思いもありました。

――アフレコはいかがでしたか?

平良
ネトゲのキャラクターの奥には操作をするリアルのキャラクターがいるということ。リアル世界のキャラクターには実際の街中にいるような、アニメっぽくない演技をしていただきました。特に能登さんにはズボラなアラサー女子を等身大で演じていただいたので、すごいですよ(笑)。


――オープニングとエンディング主題歌ではフジファブリックさんが中島愛さんと、クリープハイプの尾崎世界観さんが相坂優歌さんとコラボレーションしています。

平良
音楽面でもcomicoならではのチャレンジングなことをしたかったんです。いろんなバンドが候補として挙がるなかで、「このお二方にはぜひオファーしてみたいです!」と。作品側からのアプローチですから“お仕事”としてお返事をいただくケースもあるかと思いますが、先方も作品を読んだ上で「これはやりたい!」と言っていただいて、両思いでやらせてもらっています。楽曲にも作品の世界観が反映されています。
劇伴も、本作は「ゲーム世界」と「日常世界」の2種類をきっちり書き分けないといけないシーンや、逆に世界観が交差するようなシーンもあるため、幅を持った作曲家さんということでコーニッシュさんにお願いしました。ゲーム音楽は実際のオーケストラで録っていますし、現実世界に合う音楽も見事に書いていただいて、映像により深みが出ました。

――コーニッシュさんは『マルドゥック・スクランブル』やTVアニメ『ヘタリア』なども担当された方ですね。話題は大きく変わりますが、comicoさんが今、アニメビジネスを行う上で実感している課題はありますか?

平良
アニメ化にはどうしても準備期間を含めて2、3年かかります。それまで連載が続いているのかは未知数。そのために原作者の意思を入念に確認していますが、ここをどうするかは今後の課題ですね。


――実際にアニメ化に当たってはどのような役割を担うのでしょうか。
こちらでは原作者に「映像化の希望はあるか、その際の媒体(アニメや実写など)はどうするか、どこまでアレンジをしていくか」など、ヒアリングしつつ詰めていきます。アニメとして最適なものに仕上げるため、製作委員会である程度原作をアレンジして調整していく必要があります。きちんとコミュニケーションを取りながら、できるだけ原作者のストレスがないように制作を進めています。
対製作委員会としては、「(アニメを)作る立場」と「(原作を)守る立場」を両立しなければならないのでなかなか難しいですね。

――comicoさんのチャレンジをとても楽しみにしています。それでは最後に、あらためて『ネト充のススメ』の見どころをお願いします。

平良
きっと誰しも一度はドロップアウト感や疎外感、落ち込んだ気持ちを経験したことがあると思います。『ネト充のススメ』はそういった人たちが、家の中でゲームをするのでも、一歩外に出ることでも、人との関わりを繋ぎ続けていれば、いずれきちんと立ち直っていく。前向きな姿勢に変わって成長していくんだよ、と伝えられる作品だと思います。ぜひ共感できるポイントを見つけながら、楽しんでご覧いただきたいですね。

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