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日本のオタク文化はクールジャパンとして世界で大人気」――言葉としては聞くが、実態はどうなのだろうか?
日本のオタクグッズを海外に販売する通販サイト「Tokyo Otaku Mode」を2012年から運営している、Tokyo Otaku Mode Inc.共同創業者・秋山卓哉氏、MDチーム・高橋裕氏に前編(http://otapol.jp/2017/10/post-11518.html)から話を聞いている。こちらの後編では、「海外のオタクイベントの様子」や「世界のR-18の尺度の違い」について伺っていく。
■海外のオタクイベントは来場者の半数近くがコスプレをしている?
――前編ではフィギュアが一番人気、と伺いましたが、Tokyo Otaku Modeでは書籍も扱っているんですか?
高橋裕氏(以下、高橋) はい。マンガではなく画集ですと、日本語のままで販売もできますので。日本のイラストレーターの画集の場合、むしろ海外のコレクターにとっては、オリジナル版である日本語の方が「コレクションとして価値がある」というのはあると思いますね。
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――「オリジナルを所有したい」というオタク、マニア心は万国共通なんですね。欧米でもオタクイベントは行われていますよね。例えば日本の『コミックマーケット』などと比べ、どのような雰囲気なのでしょうか?
高橋 海外のイベントは日本のイベントより来場者の方がコスプレをしていることが多いな、と思いますね。日本だとコスプレをする人はコスプレをしに、買い物をする人は買い物に、と目的が分かれている感じがしますが、欧米だとそこがいっしょくたになっている印象はあります。なによりコスプレをしている人数が多いですね。来場者の半数くらいがコスプレをしているようにも見えます。
――会場は東京ビッグサイトぐらいの広さなのでしょうか?
秋山卓哉氏(以下、秋山) 大型イベントはそのくらいの会場で行っていますね。有名どころとして、ロサンゼルスで開催される『アニメエキスポ』は、4日間で30〜35万人が来場するといわれています。フランスの『ジャパンエキスポ』も規模は同じくらいです。そういった大型イベントではコミケ同様、大きな企業ブースがあったりもします。日本のメーカーさん、版元さんも見かけますよ。
――コミケが3日間で50万人強(杉並区の全人口くらい)ですから、コミケほどではないにしろ、大した動員力ですね。イベント参加者の半数近くがコスプレをしている、というのは日本だとない感覚ですよね。コスプレがここまで広がっているのはなぜだと思いますか?
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高橋 米国は日本よりずっとハロウィンの文化が根付いていますから、仮装への敷居が低いというのはあると思います。オタク系イベントに限らず、スターウオーズやマーベルの新作映画が公開されると、ダースベーダーなどのコスプレをした人が映画館でずらりと並んでいたりしますから。
――「コスプレ」というと日本が先進国のように思えますが、考えてみれば「仮装」は、ここ数年でハロウィンが一部で定着しだした日本より、米国の方がはるかに先輩ですよね。米国のオタクイベントでは、どういった日本のアニメやマンガのキャラクターがコスプレされていますか?
秋山 ほんとうに時期、トレンドによりますね。何年か前の『ニューヨークコミコン』では『進撃の巨人』が多かったです。
■「ギャルの水着の上の部分がはだけてイヤ〜ン」は、R-18か?
――Tokyo Otaku Modeでは扱わない商材はあるのでしょうか?
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秋山 R-18は今のところ扱っていないですね。
――なぜなのでしょうか?
秋山 性描写の規制は国によってルールが違いますし、国や地域によって宗教、文化的な背景や価値観に違いがあります。そのあたりを把握しないまま、相手国の文化的タブーに触れてしまえば国際問題にもなりかねません。そこまできめ細やかにみていくヒューマンリソースが今は社内にないので、そういったものに触れない範疇で扱っていますね。
――日本の性表現はかなり過激とは言われていますよね。少女マンガでも掲載誌によってはセックスシーンがありますし。それに慣れてしまうと他国の「常識」が見えにくくなりますが、例えば他国のR-18事情はどんな感じなのでしょう?
秋山 例えば、シンガポールはヌードがNGです。
――「ギャルの水着の上の部分がはだけてイヤ〜ン」は、小学生が読むような週刊少年マンガ誌にも掲載される、古典的表現の一つですが、これもNGなんでしょうか。
秋山 NGですね。
――「セックスシーンじゃないからいい」とか、そういう“文脈”の話ではないんですね。おっぱいポロリはアウトだと。
秋山 はい。ですので、ある一国を対象にするというのでなく、グローバルに展開するという場合「性的な表現」はとても難しい問題なんです。他にも、例えばゲームでは、結構露出度の高いコスチュームを着ている女性キャラクターがよくいますよね。
――ビキニの水着に少し装飾がついたようなコスチュームの女性キャラクターは、「あるある」ですよね。
秋山 はい。そういったキャラクターのフィギュアを販売する際に写真つきでメルマガで告知したところ、読者である米国の子供のお母さんから「こういう情報が来ると、親としては戸惑ってしまう」というご意見をいただいたこともありました。
――米国のAmazonを見ると『進撃の巨人』『東京喰種』が人気です。人を食うのがOKなら、ビキニみたいな衣装のひとつやふたつ……、と思ってしまいそうになりますね。
秋山 あと、日本のアニメやマンガの女性キャラクターは、特に欧米の方には幼く見えるというのもありますね。
――小児性愛に関するさまざまな規制については、日本がゆるいのか、米国が厳しいのかというのはありますが、歴然な「差」がありますよね。
秋山 はい。グローバルに展開するサービスでは、法律の違いもそうですが、宗教観や文化の違いなどにも敏感でないといけないと思います。
■2020年は、日本が世界に注目してもらうラストチャンス?
――Tokyo Otaku Modeさんが今後広げていきたい事業はありますか?
秋山 イベントへの出展に加え、店舗など、直接、リアルにお客様と接点を持てる場を増やしていきたいですね。
――2020年のオリンピックに向け、日本への注目は上がっていますね。
秋山 今後数十年を見ても、2020年ほど日本が世界から注目される機会はおそらくないでしょう。2020年に向けいかに世界中の人に日本は楽しいか、また、行ってみたいと思ってもらえるかが、2020年以降においてもとても大切だと思います。このチャンスを逃さないようにしたいですね。
当社が今まで培ってきたノウハウなどを活かし、新しく海外に向けて日本のオタクグッズを製造、販売したい、という会社の支援も行っています。
――それは「競合他社の育成」になってしまうように思えますが……?
秋山 いえ、オタクグッズは本当に商材が多彩ですから。一緒に2020年に向けて盛り上げられればと思います。
(文/石徹白未亜 [http://itoshiromia.com/])
「Tokyo Otaku Mode」ホームページ
https://otakumode.com/
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