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<EUが報復関税を発動したのを受けて、トランプは直ちに「ツイート」ですべての欧州車に20%の関税をかけるぞと脅迫>
ドナルド・トランプ米大統領が、世界に貿易戦争を仕掛けている。経済学者の多くが米中間の報復関税合戦に目を奪われる中、アメリカに着々と報復措置を繰り出しているのがEUだ。
アメリカは5月31日、EUなどの同盟国には一時的に適用を除外していた鉄鋼25%、アルミニウム10%の追加関税を、メキシコやカナダ、EUからの輸入にも適用すると発表した。EU加盟28カ国とメキシコ、カナダは対抗措置を用意し、6月22日に発動した。
現在、アメリカからEUに輸出される約340品目に追加関税がかけられている。対象品目の多くは、トウモロコシやインゲン豆、米、ピーナツバター、クランベリーなど、農産品や食料品が中心だ。ウィスキーとタバコにも約25%の追加関税がかけられる。鉄鋼製品を含む金属製品に加え、化粧品、Tシャツ、調理器具も対象になった。一部の衣類や紙製品、毛布類は35〜50%の高関税にさらされる。全体で32億6000万ドル分のアメリカ製品に相当する報復課税だ。
カナダとも「戦争」厭わず
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EUからの報復のニュースを知ったトランプは同22日の朝、さらなる報復措置をツイッターで発表した。
「もしEUがアメリカや米企業、労働者に長年課してきた関税や貿易障壁をすぐに取り除かなければ、EUからの輸入車すべてに20%の関税をかけてやる。どうしても売りたければアメリカで作れ!」
トランプの言う「関税」が、今回EUが発動した追加関税を指すのか、EUが従来からアメリカ車に課してきた10%の関税を指すのかははっきりしない。いずれにせよ、このツイートに欧州、特にドイツの自動車メーカーは震え上がった。
トランプ政権になってから、貿易は外交上の大きな争点になっている。6月9日、カナダのジャスティン・トルドー首相は、鉄鋼・アルミ製品への追加関税は「侮辱的」としてアメリカの貿易政策を批判した。これに対しトランプは「不誠実で弱虫」などとトルドーを扱き下ろした。トランプ政権は5月23日に、自動車や自動車部品の輸入が米通商拡大法232条に基づく国家安全保障の脅威に相当するかどうかの調査する、と発表している。もし自動車部品に輸入関税が課されれば、アメリカへの自動車部品輸出最大手のカナダがいちばん打撃を受けることになる。隣国カナダにも容赦がない。
安全保障を口実に鉄鋼やアルミの輸入を制限することには米与党共和党の議員の間でも反対する声が上がっているが、「不公正」貿易との戦いは支持する声も根強い。
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(翻訳:河原里香)
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