正社員に雇用転換したらもらえる! 企業への「キャリアアップ助成金」

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2018年08月24日 17:02  弁護士ドットコム

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契約社員や派遣社員、業務嘱託、パート・・・。このような非正規社員の雇用問題を解消するため、“働き方改革の実現”を公言している政府は労働に関する法律を見直したり、企業への支援制度を整備したりといった対策を講じています。


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なかでも非正規社員のキャリアアップを促進する「キャリアアップ助成金」の制度では、正社員への雇用転換を推奨する「正社員化コース」が用意されていることはご存知でしょうか。


●「キャリアアップ助成金」の正社員化コースを活用

「キャリアアップ助成金」の正社員化コースとは、事業主がパートやアルバイトなど一定期間の雇用契約を結ぶ有期契約労働者を正規雇用労働者(正社員)や契約期間に定めのない無期契約労働者に転換したり、直接雇用した場合に助成金を受給できる制度です。


正社員に転換する際に受給できる助成金は、基本的に以下の3パターンに区分され、支給申請の上限は合わせて1年度1事業あたり20人までとなっています。


・有期契約労働者から正規契約労働者への転換(いわゆる「正社員登用」):


 1人あたり57万円(42万7500円)


・有期契約労働者から無期契約労働者への転換(いわゆる「無期転換」):


 1人あたり28万5000円(21万3750円)


・無期契約労働者から正規契約労働者への転換:


 1人あたり28万5000円(21万3750円)


※()内は中小企業以外の金額


キャリアアップ助成金にはこのほか、基本給の向上を促進する「賃金規定等改定コース」や、週の所定労働時間を延長できる「短時間労働者労働時間延長コース」などといったコースを全部で7つ設け、従業員のモチベーションアップと企業の積極的な処遇改善を推奨しています。


●助成金を受ける手続き方法

「正社員コース」で助成金を受けるには、正社員への雇用転換だけでなく、以下の通りに各手続きを行う必要があります。


1)キャリアアップ計画書の作成・提出


「キャリアアップ計画書」には有期契約労働者のキャリアアップを計画的に進めることができるように、コースや対象者、目標、期間などの取り組みを定めて記載します。期限となる雇用転換実施日までに管轄の都道府県労働局に提出しましょう。


2)就業規則などに転換制度を規定


就業規則などの規定に「試験等の手続き、対象者の要件、転換実施時期」の内容を記載しましょう。なお、内容に不備がある場合は助成金が支給されないというリスクがありますので、確実に行うならば、専門家である社会保険労務士へ依頼するのがよいでしょう。


3)正規雇用等への転換・直接雇用を実施


就業規則などに規定した転換制度に即して試験などを行い、従業員を正社員として雇用転換を実施します。


4)転換後、6カ月後に助成金支給申請を行う


転換後6カ月分の賃金を支給した日の翌日から、起算して2カ月以内に助成金の支給申請をします。ただし、転換前と比較して転換後の賃金が5%以上増額しているという条件が必須になります。また、有期契約労働者からの転換の場合は、転換前に雇用されていた期間は3年以下の方に限ります。


なお、助成金は申請後すぐに受給できるものではありません。各都道府県の労働局によって状況は異なりますが、助成金の申請後から実際に受給するまでには数カ月以上要すると見込んでおくのがよいでしょう。


●助成額がアップする「生産性の向上」の要件

前述した基本的な助成額に加えて、下記の「生産性要件」を満たした申請企業は助成金の割増を受けることができます。


<生産性要件>


助成金の支給申請等を行う直近の会計年度における「生産性(※)」が以下のどちらかを満たす必要があります。


・3年度前に比べて6%以上伸びていること


・3年度前に比べて1%以上(6%未満)伸びていること


※生産性は以下の方法で計算できます。


(営業利益+人件費+減価償却費+動産・不動産賃借料+租税公課)÷雇用保険被保険者数


つまり、3年前よりも1%以上の成長や改善がされていれば割増を受けられる可能性があるということです。ただし、後者は事業性評価を得ていなければなりません。


事業性評価とは、労働局が助成金を申請する企業の承諾を得て、借り入れなどの与信取引がある金融機関に事業の見立てを照会し、受けた回答をもとに、労働局が対象になるかを判断するものです。


キャリアアップ助成金は、非正規雇用者の正社員化を図ることで、従業員本人の意欲や能力を向上させるだけでなく、事業としても生産性向上も促進する制度です。この制度を積極的に活用して雇用機会を設け、より明るい社会を築きましょう。


【監修】


高橋 豊(たかはし・ゆたか)社会保険労務士


名古屋の中堅企業にて労働・社会保険関係法規などに絡む業務、新卒採用などの人材採用・人事などを経験。開業後は、企業に対して「人材がやめない企業づくり」をモットーに各種制度提案、就業規則等の作成、退職金制度設計、助成金申請などを行う。個人に対しては、遺族年金・障害年金等の複雑な年金請求のサポートを行っている。また、大学などでキャリア教育講座の講師を務めており、学生の就職活動支援も行っている。


事務所名 : ゆたか社会保険労務士事務所


事務所URL:http://office-yutaka.com/




(弁護士ドットコムニュース)


このニュースに関するつぶやき

  • …これか意味の解らないエコやら効率化推進やらやってる奴の仕事って…。正社員に転換して、嫌がらせして辞めさせてそうだな…。継続報告監視してる?てか企業じゃなく本人に聞けよ。
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