慰安婦報道めぐる名誉毀損訴訟、元朝日・植村氏の控訴棄却 「極めて不当」 文藝春秋「当然の判決」

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2020年03月03日 18:52  弁護士ドットコム

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かつて執筆した「慰安婦問題」に関する記事について、「捏造」などと書かれて、名誉を傷つけられたとして、元朝日新聞記者の植村隆さんが、麗澤大学客員教授の西岡力さんと『週刊文春』を発行する文藝春秋を相手取り、損害賠償などをもとめた訴訟の控訴審判決が3月3日、東京高裁であった。


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白石史子裁判長は、請求を棄却した1審判決を支持して、植村さんの控訴を棄却する判決を言い渡した。判決後、植村さん側は判決を不服として、上告する方針を示した。一方、西岡さんは「公正な判断が下された」、文藝春秋は「当然の判決と受け止めている」とコメントした。



●植村さんは1審も敗訴した

ことの発端は、植村さんが1991年8月と12月に執筆した記事までさかのぼる。



当時、朝日新聞記者だった植村さんは、元慰安婦の聞き取り調査をしていた韓国の団体から音声テープの公開を受けて、元慰安婦と名乗り出た女性(金学順さん)の証言にもとづいて記事を書いた。



その記事に対して、西岡さんは2012年12月ごろから2014年11月にかけて、「意図的に事実を改ざんした」「悪質な捏造」とする論文を発表して、著書やウェブサイト、雑誌に投稿した。



また、『週刊文春』(2014年2月6日号)も、西岡さんの「捏造記事と言っても過言ではありません」というコメントが入った「"慰安婦捏造" 朝日新聞記者がお嬢様女子大教授に」と題する記事を掲載した。



植村さんは2015年1月、「捏造はしていない」として、西岡さんと文藝春秋を相手取り、計2750万円の損害賠償や、謝罪広告の掲載などをもとめる訴訟を起こした。



しかし、1審・東京地裁は、西岡さんの記事は、植村さんの社会的評価を低下させるとしながらも、真実性・真実相当性があるとして、植村さんの請求を棄却していた。



●植村さん「これ以上、捏造記者と言われなくなる」

控訴審の判決後、植村さんは東京・霞が関の司法記者クラブで会見を開いて、「極めて不当な判決だ」と述べた。



さらに「この不当な判決を放置するわけにはいきません。このままではフェイクニュースを流し放題という大変な時代になります。最高裁で逆転判決を目指したいと思います」として、上告する方針を示した。



植村さんの弁護団は、控訴審判決について、真実性・真実相当性について言及した最高裁判決(昭和44年6月25日)と相反する判断があるなどとして、「結論先にありきの、あまりに杜撰な判決だ」と批判した。



一方で、東京高裁が、植村さんが(1)金学順さんがキーセン身売りされたという経歴を知っていたのにあえて記事にしなかった、(2)義母の裁判を有利にするため意図的に事実と異なる記事を書いた−−という点について、「真実であると認めることはできない」と判断したことは評価した。



こちらについては、植村さんも会見で「ずっと『捏造記者』と言われてきたが、これ以上、『捏造記者』『捏造記事を書いた』と言われなくなる。大きな前進だと思います」と語った。



●西岡さん「東京地裁に続き、完全勝訴の判決をいただいた」

文藝春秋は、弁護士ドットコムニュースのメール取材に「当然の判決と受け止めています」と回答した。



また、西岡さんは、文藝春秋を通じて「東京地裁に続き、完全勝訴の判決をいただくことができました。公正な判断が下されたと考えます。司法でなく言論の場で議論していくことを強く望みます。関係者のご努力、多くの方々の励ましに心から感謝いたします」とのコメントを発表した。


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  • 極めて妥当な地裁判決に、高裁で控訴棄却とこれまた極めて妥当な判決が出た。捏造記者の上告に対しては、「上告棄却」を望む。
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