◆ 記念日に強さを発揮
「チャンスや、メモリアルデーで強いんです」と胸を張る、オリックスのドラフト2位・元謙太の面目躍如だった。
23日、オセアンバファローズスタジアム舞洲で行われた、ウエスタン・リーグのソフトバンク戦。6回に奥村政稔から左翼へ同点本塁打を放つと、延長10回の一死三塁では椎野新から左前へサヨナラ打。チームの全得点を叩き出す大暴れを見せた。
この日は、母方の祖母の誕生日。高校時代も母の誕生日に本塁打を放つなど、記念日にはめっぽう強いというのが自慢だ。
岐阜県多治見市出身。中京高時代は1年からベンチ入りを果たし、2年夏の甲子園では準々決勝の作新学院戦で逆転満塁本塁打を放って話題に。チームの4強入りに貢献した。
ただ、そんな男も、プロ入り後はプロの壁にぶち当たる。
◆ 後半戦で見えてきた“兆し”
ウエスタン・リーグとはいえ、広島戦では野村祐輔や薮田和樹、ソフトバンク戦では二保旭(現・阪神)や甲斐野央、そして椎野といった一線級の投手にほんろうされ、低打率にあえいだ。
「ストレートを弾き返せなかった」という屈辱…。フォームが大きくなる癖を矯正するため、コーチ陣のアドバイスもあり、打撃マシンを半分の距離で立って速球に目を慣らしながら、対応力を養った。
現在チームの全70試合に出場し、打率は.128(218−28)で21打点。トータルの数字は冴えないが、4本塁打はチームトップだ。
後半戦に限っては4試合で打率.333(15−5)で2本塁打、4打点。状態は確実に上向いている。
◆ 「悔しい思いは全くない」
打撃向上の秘密は、同期のドラフト3位・来田涼斗(明石商)の存在だ。
新人を大きく育てる球団の方針で、「来田と元の2人はいくら三振しても、いくら失策をしても、ファームの試合で使い続ける」(福良淳一GM)と英才教育を受けてきた。
その来田は前半戦終了直前、一足先に一軍に昇格。しかも、プロ初打席・初球本塁打という高卒新人でNPB史上初の快挙を成し遂げ、その試合で3安打の固め打ちまでやってのけた。
「来田の実力なら打つと思っていた。同期としてうれしいし、こちらも頑張って追いつこうという気持ちになる。悔しい思いは全くない。本当に切磋琢磨している」と元。
コーチ陣からは「前半戦は前半戦。後半戦でどれだけ伸びたか、見ていこう」と激励され、新たな気持ちで臨んだ後半戦。
「良いスタートが切れた」。背番号27は満面の笑みを浮かべた。
取材・文=北野正樹(きたの・まさき)