救出され、生還を喜び抱き合う夫妻(画像は『Mirror 2021年7月20日付「Couple spend 10 days hiding in trees while hungry bear stalks them through woods」(Image: The Siberian Times)』のスクリーンショット) ロシアのカムチャッカ半島にてヒグマに遭遇し、10日間にわたり追跡を受けたロシア人夫妻が今月16日、その恐怖体験を地元のテレビ局『REN TV』に語った。2人は大きな怪我もなく、奇跡の生還を果たしたという。『The Sun』『Mirror』などが伝えている。
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ロシアの極東に位置し多くの火山を有するカムチャッカ半島は温泉の名所で知られるが、野生のヒグマの多さから「クマの聖域」と呼ばれている。
アントンさん(Anton)とニナ・ボグダノフさん(Nina Bogdanov)夫妻はカムチャッカ半島に多くある温泉の一つ、バニエ温泉(Banniye Springs)へ1泊旅行に向かっていた。
悪夢の10日間は愛車のパジェロが目的地の約18キロ手前(11マイル)でぬかるみにはまり、身動きが取れなくなってしまったことから始まった。携帯電話の電波が届かず、助けを呼ぶこともできなかったという。
車中で1泊した夫妻は翌朝、助けを求めてバニエ温泉の観光基地まで徒歩で向かうことにした。土埃を被った車のボンネットには「基地に向かいました。2人です」とのメッセージを残した。このエリアには野生のヒグマが多く生息していることを知っていたからである。
観光基地に向かい半分ほどの距離を進んだ時、先頭を歩いていたアントンさんは背後に迫る大きなヒグマの存在に気付いた。ニナさんは当時の様子をこのように振り返っている。
「クマは私たちの後ろを歩いていました。音もなく静かに近寄ってきていたので全く気付きませんでした。」
「最初にクマの存在に気付いたのは夫でした。クマを怖がらせて追い払いましたが、クマはすぐに私たちを追いかけてきたんです。」
川に続く約183メートル(200ヤード)の坂道をなんとか下った2人は川の手前の木に登り、命からがら何とかクマから逃れた。ニナさんはその時の状況をこう語る。
「夫はもう少しでクマに殺されるところでした。」
「(先に木に登ったニナさんは)水筒を投げてクマの気を必死にそらしたんです。夫も何とか木に登ることができました。」
木に登った2人を監視するかのように木の周囲を歩くクマは、一向に引く様子はない。また木に突進してきたクマに食料入りのリュックサックを投げつけた2人は、水や食料もないまま耐えるしかなかった。
だが2人は「このまま木に留まっておくわけにはいかない」と行動を決意する。日没後、持っていた上着に火をつけてクマの注意をそらすと、気付かれぬうちに木を降りて対岸に向かって川を必死に泳いだ。
途中で溺れかけたニナさんだったが、アントンさんに引き上げられて何とか渡りきり、すぐに新たな木に登った。するとクマも川を泳ぎ、すぐに追ってきたという。
夫妻は新たな木の上で、樹木の皮を食べ、交代で眠りながらさらに2日間を過ごした。そのうち大きなヒグマが現れ、2人を狙っていたクマを追い払った。2人にとっては新たなクマが現れただけだが、2頭目のクマは降りてこない夫妻を早々に諦め、森へと消えていったそうだ。
それからの夫妻は、一日に400メートルずつ木から木へとクマに注意を払いつつ移動していった。途中で3頭目のクマにも遭遇したが、そのクマは2人には気づかなかったようだ。
そして11日目の朝、アントンさんとニナさんは壊れた車のある場所に再び戻ってきた。
夫妻が車に到着すると、すぐに他の車が通りかかったことでようやく救助されたのだった。アントンさんとニナさんは極度の脱水症と疲労で衰弱していたものの、打撲やかすり傷程度で大きな怪我はなかった。
その時の喜びを、のちにニナさんはこのように明かしている。
「車につくや否や、他の車が近づいてくる音が聞こえてきました。その車を見つけた私は、嬉しくて泣いてしまいました。」
ロシア動物学研究所でシニア研究員を務めるイゴール・ドロニンさん(Igor Doronin)は「2人の生還は奇跡に近い」として、以下のように述べている。
「一度狩りを始めたクマから逃げることはほぼ不可能です。この夫妻は本当に幸運でした。クマは数週間も人をつけ狙うこともあるほど、執拗で我慢強い捕食者ですからね。」
なおカムチャッカ半島には約2万3000頭もの野生のクマが生息していると言われており、昨年は4件の事故が発生し、2名が命を落としている。
画像は『Mirror 2021年7月20日付「Couple spend 10 days hiding in trees while hungry bear stalks them through woods」(Image: The Siberian Times)』のスクリーンショット
(TechinsightJapan編集部 YUKKE)