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「面接で好きな本を聞いたらいけないの?」。そんな疑問の声がネットであがっている。
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たとえば、東京都千代田区にあるブックカフェ『眞踏珈琲店』は11月29日、ツイッターでのアルバイト募集にあたって、履歴書とともに「好きな本」や「人生を一変させた映画」などについての「メモワール」(思い出・回想録)も要望した。
しかし、外部から指摘を受けて、厚労省などに確認した末、翌30日に問題のある求人だったとして、募集の仕方を見直すとツイートしている。職業安定法などが収集を禁じる「思想・信条」にかかわる情報になりえるためだという。
実際、厚労省の「公正な採用選考の基本」というウェブページでは、「採用選考時に配慮すべき事項」の一つとして「購読新聞・雑誌・愛読書などに関すること」をあげている。
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しかし、ブックカフェであれば、本に対して一定程度の知識や情熱を持つアルバイトを望んでも不思議ではないはずだ。
眞踏珈琲店も「今回の募集で問うているのは、自己をプロデュースする表現力や、メモワールを提出するという障壁を乗り越える力や、意欲」だったとしている。
最近では、読売新聞オンライン(2021年11月14日)のこんな記事も話題になった。滋賀県の高校生の就職活動で、今年度の面接で愛読書を尋ねられたケースが20件あり、昨年度(7件)の3倍近くになったというものだ。
記事は、その理由としてコロナ禍の巣ごもりで趣味を「読書」と答えた生徒が多かったからではないかと分析。滋賀県教育委員会は「答えなくて良いと聞いている」などと対応するよう指導しているそうだ。
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しかし、読書が趣味の人にどんな本が好きかを聞くのは、コミュニケーションとしてはごく自然なことだろう。記事はヤフートピックスにも取り上げられたことから多くの反応が見られた。
本当に採用面接で本について尋ねてはいけないのだろうか。島田直行弁護士に聞いた。
採用面接において愛読書を質問することが一律NGというのは極論でしょう。労働者に職業選択の自由があるように、企業にも採用の自由があります。採用の自由のなかには、いかなる人材を選択するかについての「選択の自由」と、選択に必要な調査をすることについての「調査の自由」が含まれています。
企業は、選択の自由に基づき自社の業務に適合した人材を採用することができます。判例においても、企業が思想・信条を根拠に採用を拒否したとしても直ちに違法にはならないとされています(三菱樹脂事件 昭和48年12月12日最高裁判所大法廷判決)。
企業が自社に適した人材を選択するためには、情報が必要です。そこで選択の自由を担保するために調査の自由があります。ただし調査の自由は、無制限に認められるものではありません。
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求職者のプライバシー保護などの観点から、調査の内容・方法については制約を受けることになります。
職業安定法5条の4及びこれを受けての指針(平成11年労働省告示第141号)が制約について触れています。概要としては、思想及び信条に関する情報収集を原則として禁止しつつ、業務上の目的の達成に必要不可欠であって収集目的を示して本人から収集する場合には認められるとされています。
「今読んでいる本は」「好きな作家は」など質問の仕方さえ変更すれば問題にならないというわけではありません。愛読書を質問する場合には、まず業務との関係性を明確にする必要があります。実際にはこういった関係性を意識することなく漫然と愛読書を質問するからこそ問題になります。
たとえば、本を取り扱う企業が求職者の趣向を把握するのは、取扱う作品との親和性を判断するうえで必要なこともあるでしょう。こういった企業が収集目的を説明したうえで本について質問することは、許容される範囲ではないかと個人的には考えています。
読書に限ったことではないですが、明らかに採用に関係のないことを漫然と求職者の意思に関係なく質問すると、職業安定法に基づく行政指導や改善命令の対象となることがあります。
さらに改善命令に反すると罰則を受けることもあり得ます。企業と求職者のより良い関係のためにも、いちど面接時の質問事項を見直してみてください。
【取材協力弁護士】
島田 直行(しまだ・なおゆき)弁護士
山口県下関市生まれ、京都大学法学部卒、山口県弁護士会所属。著書に『社長、辞めた社員から内容証明が届いています』、『社長、クレーマーから「誠意を見せろ」と電話がきています』『社長、その事業承継のプランでは、会社がつぶれます』(いずれもプレジデント社)、『院長、クレーマー&問題職員で悩んでいませんか?』(日本法令)
事務所名:島田法律事務所
事務所URL:https://www.shimada-law.com/
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