脳手術6回と脳卒中を経験し医師になった女性「可能性は無限。諦めないで!」とパワフルなメッセージ(米)<動画あり>

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2022年08月20日 23:41  Techinsight Japan

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患者から医師になったクラウディアさん(画像は『Claudia I. Martinez
2012年から6度の脳外科手術を受け、2017年に脳卒中を起こして首から下が上手く機能しなくなったアメリカの女性が2年前、リハビリを受けた病院で研修医として働き始めた。このほど女性が、医師になるための勉強の傍ら患者として闘い続けた経験について語り、多くの人をインスパイアしている。障がいがあっても諦めず、希望を持つことの大切さ、限りない可能性を『Houston Chronicle』などが伝えた。

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クラウディア・マルティネスさん(Claudia Martinez、31)は今から約10年前、米テキサス州ヒューストンのテキサス大学在学中に「キアリ奇形」と診断された。これは本来、頭蓋骨の中に納まるべき小脳や延髄の一部が頭蓋骨の出口の大後頭孔を通して脊柱管内へはみ出る病気で、骨を削って大後頭孔を広げ、圧迫を解除する外科的治療が必要になる。

大学で生物学を専攻、科学を副専攻していたクラウディアさんは、2011年頃から頭痛、手足のしびれ、吐き気やふらつきなどに悩まされていたが、複数の医師は「大学のストレスによるものだろう」と誤診、日常生活を送ることが困難になる翌年まで正確な診断が下されることはなかった。

そのためクラウディアさんは脳神経外科医に「一刻も早く手術をしなければ首から下が麻痺するだろう」と警告を受け、キアリ奇形との診断から1週間も待たずに開頭手術を受けた。

その後の回復は早く、すぐに頭痛や吐き気がなくなったものの、クラウディアさんのケースは非常に稀で再発を繰り返し、2012年から2017年2月6日までの5年間で6度の手術を受け、回を重ねる毎に回復が困難になった。さらに6度目の手術中には脳卒中を起こし、首から下が上手く機能しなくなった。中枢神経系を構成する重要な部位が集まる脳幹に問題が生じていたためだった。

クラウディアさんは当時、テキサス大学ヒューストン医療科学センターのマクガバンメディカルスクール(UTHealth Houston McGovern Medical School)で学んでおり、当時のことを「『このままでは医師になる夢は叶わないのでは』とそれまでの人生の中で最も落ち込んだ」と振り返る。

しかし2017年3月、ヒューストンのリハビリ施設「TIRRメモリアル・ハーマン(TIRR Memorial Hermann、以下TIRR)」に転院すると全てが変わった。クラウディアさんは「そこでは誰もがポジティブで、できないことではなく“何ができるか”に目を向けていた。スタッフは患者に希望を与え、将来を見据えた治療をしていた」と回顧、2か月すると歯磨きさえできなかった状態から少しだけ歩けるまでに回復した。

また脊髄損傷を専門とするリサ・ヴェンツェル医師(Dr. Lisa Wenzel)と出会い、理学療法、スピーチ、作業療法などの集中的な治療を1年間続けた。くじけそうになりながらも、決して諦めることはしなかった。

そうしてメディカルスクールを1年間休学すると、栄養チューブを付けたままの状態で復学、2020年5月に卒業すると、7月には自身の人生を変えるきっかけとなったTIRRで研修医として働き始めた。

クラウディアさんはもともと外科医を目指していたが、在学中に手の機能がなかなか回復しなかったこともあり、自分が治療を受けて感銘した「PM&R(物理医学とリハビリテーション)」の専門医にコース変更していた。現在は恩師であるヴェンツェル医師から指導を受けており、「これはきっと、私の運命だったのよ」と笑顔を見せる。


さらに嬉しいことに2020年には結婚。お相手は神経膠腫(グリオーマ)で脳の手術を受けたアンドルーさん(Andrew)で、メディアの取材で知り合ったという。


クラウディアさんは「メディカルスクールではたくさんのことを学ぶわ。でも患者がどう感じ、何を考え、家族が何を思っているのか…といったことは学ばないの。その点、私は長い期間を患者として過ごし、患者の苦しみや乗り越えなければいけない壁を知っている。それに他の誰よりもたくさん勉強したし、決して諦めなかった。『あの人は障がいがあるから、これだけのことしかできない』と思われるのは嫌だったのよ」と述べると、次のように続けた。

「障がいを持つ人を過小評価することは絶対してはいけないと思う。他の人とやり方は違うかもしれないけど、障がいを持っていてもできることはたくさんあるの。必要なのは少しの思いやりと忍耐。障がいがあっても美しさ、能力、そして限りない可能性を秘めているということを忘れないでいて欲しい。」


そんなクラウディアさんをヴェンツェル医師は「インスピレーション」と呼んでおり、このニュースには「なんて強い女性なのだろう」「彼女は患者に寄り添える素晴らしい医師になるだろうね」「私も手術を控えている。彼女は私の希望」「健康でも医学部は大変なのに。素晴らしいと思う」「彼女の努力はもちろんだけど、家族、医師、スタッフ、素晴らしい人たちに恵まれたのだろうね」「つらかったと思う。リハビリの姿を見ていたら私も泣けてきた」「私もちっぽけなことで悩まないで、前向きになろうと思う」といったコメントが寄せられている。



画像は『Claudia I. Martinez, MD・PM&R Resident Physician 2020年1月9日付Instagram「Go the extra mile,」、2018年3月3日付Instagram「because medical school waits for no one...」、2017年11月6日付Instagram「On Friday, at the hospital,」、2020年11月21日付Instagram「For you I have prayed」、2018年8月8日付Instagram「“I am not a typical medical student.」』のスクリーンショット
(TechinsightJapan編集部 A.C.)

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