『岩下の新生姜』の「イワシカ」、『ハッピーターン』の「ターン王子」など、キャラ立ち抜群の食品キャラクター。パッケージだけでなく、SNSやLINEスタンプなど活躍の場もひろがり、商品の宣伝役という枠を超えて、いちキャラクターとして愛される存在になっている。
クセ強めなキャラが続々登場
商品の美味しさもさることながら、パッケージのキャラクターが可愛いから買う“パケ買い”層も増加。食品キャラ乱立時代において、独自の方向性で目立っているキャラクターに注目したい。
【伊藤ハム ハム係長】
中間管理職の哀愁漂うおじさんキャラの「ハム係長」。弁当箱の中でため息をつくショボくれた姿が切ない。
「2011年にSNS活動を始めるにあたり、お客様と良好な関係を築いていくには、親しみをもっていただけるキャラクターが必要なのではと考え、ハム係長は主にSNSでのメッセンジャーとして誕生しました。
実際にはいくつかのキャラクター候補がありましたが、女性従業員の投票の結果、このキャラクターが選出されました。女性従業員の選択理由として一番多かったのは“伊藤ハムらしくない”という意見でした」(伊藤ハム米久ホールディングス広報室、以下同)
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肉加工食品なのに、全く肉食系の匂いがしない。そこが逆に女性受け、なのか! デフォルトの顔は、目を閉じて、達観したような表情のハム係長。たまに照れ顔やほろ酔い顔もTwitterで披露している。おじ萌えしそうなハム係長、計算ずくなのかも。
熱烈なファンの中には、「“公園”の“公”の字を見るだけでハム係長を思い出します」という人もいるという。
「“ぷふぅ〜っ ε=(公 )”とため息のような吐息が特徴で、たまに吹き出しと間違えられることがあり、ため息に文字を入れられたことがあります。ちなみにこの“ぷふぅ〜っ ε=(公 )”の顔文字は、ファンの方が作ってくれたもので、とても気に入って投稿の時などに使用させていただいています」
ハム課係長の口癖は、「ハムばっていきましょう」。「頑張る」のでなく「ハムばる」感じがゆるくていい。「ハム係長って癒し系」との声も。
ちなみに伊藤ハムには、「ハンバーグ係長」というキャラもいて、こちらは頭からサスペンダーのひもをかけているという自由過ぎるキャラクターだ。こちらは、語尾に「でみ〜」と付けたり、「ハンバーグッジョブ」と駄洒落を飛ばしたりと、食卓の花形、ハンバーグらしい陽キャ要素が炸裂している。伊藤ハムの係長コンビ、全くキャラが異なっていて面白い。
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【ニッスイ やきおにお】
ニッスイ『大きな大きな焼きおにぎり』のテレビCMでは、松崎しげるが「コバラがすいたら焼きおにお 大きな大きな やきおにお ほかほかほかほかほか」と、焦がしじょうゆの匂いが漂ってきそうなソウルフルな歌声を聞かせてくれる。
そのキャラクターは、CM曲で連呼されている「やきおにお」。おにぎりじゃなくて、おにお?? そう、苗字が「やき」、名前が「おにお」。焼きおにぎり一家である「やき家」の次男坊(20歳)だ。
頑固一徹の父親「やきおにへい」、しっかり者で料理好きな母親「やきおによ」、昔は荒くれ者の祖父「やきおにぞう」、地方を放浪中の長男「やきおにたろう」……と、家族設定に昭和の香り漂う一家である。
「焼きおにぎりは流行の料理ではありません。 シンプルだけどそれだけに飽きがこない。
そんな焼きおにぎりの化身ですから、“朴訥(ぼくとつ)”なほうがいい、垢抜けないほうがいい。いろいろな案はあったのですが、“やきおにお”! この名前が出て全員に“これだ”という感じがありました。“やきおにお”はそういうイメージが伝わり、長く愛されているのだと感じます」(ニッスイ担当者)
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家族一同、しょうゆ色のおにぎりに手足と目鼻を付けただけのひねりナシ、ストレートな擬人化キャラデザイン。しかし、「おにお」は、焼きおにぎりだけに熱い。CM曲『愛のやきおにぎり』では、小腹が空いたら、お菓子を食べるのではなく、焼きおにぎりを食べて欲しいと訴える。その熱唱ぶりに打たれて、思わず焼きおにぎり、もとい、ほかほかの「やきおにお」をほおばりたくなる。昭和としょうゆがプンプン匂う「やきおにお」。
ネットでは「しげるの声、シブすぎる」、「屋根の上でギター片手に歌うおにお、見てると泣ける」など、昭和のソウルに共感する声多し。おにお、日本人の魂と胃袋わしづかみだ!
【ニチレイフーズ イタメくん】
炒飯の妖精イタメくん。「ゆるキャラ(R)グランプリ 2018 企業・その他ゆるキャラランキング」では、19位にランクインしている。炒飯の盛られた中華鍋を頭にかぶり、まん丸目、口元にヨダレ、というキャラクターだ。
このヨダレ、Twitterでは、「ふいてあげたい」とか「ご飯粒じゃないの?」とかのツッコミ多し。イタメくんによれば、「ヨダレはぼくのチャームポイントだからね」なんだそう。イタメくんのヨダレが母性本能をくすぐっている模様だ。
「イタメくんの魅力は、やはりそのゆるさだと思います。仕事やプライベートで“肩に力が入りすぎてるかなー”と感じた時に、イタメくんのツイートを見るとほっと和みますね。毎年、干支の着ぐるみを着たイタメくんの登場を社員一同楽しみにしています。今年ウサギを着たので、コンプリートまであと3パターンです」(ニチレイフーズ広報部)
公式サイトのプロフィールによれば、「割とがんばるよ」「ちょっと人見知りなところがある」「好きなもの:炒飯、ひとり遊び」とある。イタメくん、パステルカラーの色合いのせいか、ちょっと見、サンリオキャラクター風に見えなくもない。女子高生のスクールバッグにぶら下がっていそうなファンシー感もある。
ニチレイの「本格炒め炒飯(R)」といえば“パラパラ”。レンジでチンしてもパラパラっとした炒飯が出来上がるのが売りだ。イタメくんも、機嫌がいいとパラパラを踊る。2・21のツイートでは、「今日は踊りたい気分」とパラパラを踊っているのだが、無表情でパラパラを踊るイタメくんは全く楽しそうではない。むしろ、暗い。
チャーハンの妖精でありながら、基本、体温低めのコミュ障男子っぽいイタメくん。バレンタインには、渾身のキャラ変でハートを飛ばしまくり、少女漫画の王子風になっているのだが、「ぼくのバレンタインチャーハン、受け取ってくれる?」の呼びかけに、「いいね」は158……。がんばれ、イタメくん。
(取材・文/ガンガーラ田津美)