えっ、売上比率はたった「1%」? それでもビールのミニ缶が40年も愛される理由

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2024年11月16日 09:11  ITmedia ビジネスオンライン

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なぜビール会社はミニ缶を販売しているの?

 スーパーやコンビニなどで缶ビールが並んでいる棚を見て、ちょっと気になったことがある。主要ブランドは135ml、250ml、350ml、500mlの4種類を展開しているが、人気のサイズはどれか。


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 答えは、断トツで「350ml」である。では、最も小さな135ml缶はどのくらい売れているのか。キリンビールの担当者に聞いたところ「『一番搾り』缶での構成比では、1%ほどですね。多少の凸凹はありますが、1%ほどで推移しています」という。ん? たったの1%となると、気になるのは「それでも、なぜ販売しているのか」という点である。


 「この商品は売れていないなあ。そろそろ製造はストップだな」「コストカットを優先するので、頭打ちの商品は今年で終わりね」といった言葉が飛び交っている会社も多いと思うが、「1%」という数字は危険水域ともいえる。にもかかわらず、販売を続けているのは何らかの意味があるはず。その謎に迫る前に、135ml缶の歴史を簡単に紹介しよう。


 キリンがいわゆるミニ缶を投入したのは、1984年のことである。ちょうど40年前に「キリン缶生ビール」を1本100円で販売したわけだが、当時はどんな出来事があったのか。グリコ・森永脅迫事件があったり、エリマケトカゲが流行ったり、漫画『北斗の拳』がアニメで放送されたり。若い人にとっては「えっ、なにそれ?」と思われたかもしれないが、それほど遠い昔にミニ缶は世に出たのだ。


 キリン缶生ビールが登場したのは1983年で、当初は500ml、750ml、1Lのサイズを販売していた。ただ、飲料メーカーが相次いでワンコインの商品を開発していたことを受け、キリンも135ml缶を販売したそうだ。


 となると、気になるのは他のビール会社の動きである。サントリーもサッポロもアサヒも同じ年の同じ月……つまり、40年前の5月にミニ缶を販売。4社がそろって同じサイズの商品を投入するのは非常に珍しいことで、当時は「容器戦争」などと呼ばれていたのだ。


●ミニ缶が見直されるかも


 個人的に、ちょっと引っかかったのは「キリン缶生ビールの135ml缶を販売しますよ〜」と発表した、リリースの文言である。「スポーツや仕事の合い間、ちょっとした息抜きの時など、最適な缶生ビールです」と書いているではないか。


 「し、し、仕事の合い間だと? そんなことをしたら上司に怒られるわ」「不適切発言だな。きっーーー!」とネット上でザワザワしそうであるが、40年前の話である。当時、それが許されていたかどうかは別にして、筆者の周囲にも「夕方にちょっと飲んで、そのあとに、もう少し仕事をがんばるかあ〜」といったサラリーマンがちらほらいたことは確かである。


 さて、一番搾り缶の中で「1%」しか売れていないのに、なぜ販売を続けるのか問題である。ブランド担当の京谷侑香さんによると「生活の中でちょっと息抜きをしたいときや、お盆時期のお供えものとして購入されることが多いですね。あと、ビールを飲みたいけれど、まだそれほど飲めない若い人たちが手に取る姿もよく目にしますね」とのこと。


 最近では、外国人観光客がお土産として手に取るケースも。考えてみると、海外のビールでミニ缶は珍しいかもしれない。スーパーなどで「なにこれ? ウチの国では売ってないよ。お土産に買って帰ろう」といった外国人が増えているようだ。


 キリン缶生ビールは135mlのほかに、500ml、750ml、1Lを扱っていたといった話をしたが、今後、一番搾りで大きいサイズを販売する予定はないのか。「社内でそのような話は出ていないですね。誰もがたくさんの量を飲むという時代ではなく、いまは『適正飲酒』が求められているので、ひょっとしたら今後はミニ缶が見直されるかもしれません」(京谷さん)


●お客は「選べる楽しさ」を味わえる


 ちょっと話は変わる。アパレルの店内を見渡すと、ひとつのアイテムにたくさんの色を販売していることがある。当然、その中で人気のある色とそうでない色があるわけだが、なぜ苦戦している色を展開しているのか。


 会社によっていろいろな考え方はあるだろうが、マーケティングの教科書を読むと、お客の満足度を高めるために、色のバリエーションを増やしているなどと書かれている。黒もあれば、青もあれば、白もある。たくさんあれば、自分に合った色を見つけやすくなる。そうなると商品の魅力が増し、ブランド価値も向上する。こうした背景があるので、あまり売れていない色でも販売しているのだ。


 ということを考えると、ビールも「1%」しか売れていなくても、お客は「選べる楽しさ」を味わえる。大酒飲みの人にとっては「ミニ缶なんていらないでしょ」と思われるかもしれないが、ビールの楽しみ方は人それぞれ。そんな多様なニーズに応えるために、棚の片隅で“小さな巨人”はちょこんと座ってきた。そして、これからも座り続けそうである。


(土肥義則)



このニュースに関するつぶやき

  • お墓や仏壇とか用に購入することが多いかな。この量なら料理とかにも活用しやすいしね。
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