
乳製品と卵などに重篤な反応が出る食物アレルギー症状がある中学3年生の娘さんを持つ、こま(@meytheforce)さん。
「乳製品」「卵」不使用の食品を探し、X(旧Twitter)で同じ悩みを持つ方に情報を共有しているこまさんは、この日もいつものように、「紀文の豆乳で作ったデザート風とうふ チョコバナナ味。今までも豆腐系のプリンはあったけど、チョコバナナ味ってところがいい」と、Xに投稿。
すると、「意外とチョコバナナ味ってなかったですよね」と、紀文の公式アカウント(@kibun_kitchen)から返信が!
紀文(きぶん)=のりふみ、の愛称で人気の公式さんからの直々の返信に驚くこまさん。
|
|
「公式さん⁉︎ 本当にこういう商品ってアレルギーっ子の憧れなんです!全アレルギー持ちを代表して感謝を伝えさせてください!ありがとうございます(涙)。そして、めっちゃ美味しいです!昨夜、娘が感激していました」
<こまさんのXアカウントの投稿より>
「社内で共有させていただきます」
こまさんの回答に、「そういうことでしたか!よかったです(涙)。もし差し支えなければ、何のアレルギーをお持ちですか…?この商品にそのような需要があるとは知らず、可能であれば社内で共有させていただき、引き続きお召し上がりいただけるような、商品化に努められればと思っております」と、再び紀文の公式が返信。
こまさんも、「娘は乳製品と卵とカシューナッツがダメです。そうなるとプリン系の商品ってほぼダメなんです。なのでこの商品は娘にとってはまさにデザートです。最高にありがたいということを直接伝えられてよかったです!」と返信。
「娘さんに楽しんでいただけて、こちらも大変嬉しく思います!半期でフレーバーが変わっていく予定で、すぐには難しくございますが、以降も楽しんでいただけるよう努めます。かまぼこにはなってしまいますが、キャラクター蒲鉾も卵不使用ですので、もしお召し上がりになれそうでしたら、ぜひ探してみてください」と、再度返信する紀文の公式さん。
|
|
「今取り急ぎ上司に伝え、これから社内全体に共有させていただきます!すぐに、または全商品は難しいかもしれませんが、パッケージにアレルギーがない旨もわかりやすく表示できるようにしたりと、徐々にできたらいいなと個人的には思ってます。今後もよろちくわです」
<紀文【公式】Xアカウントの投稿より>
企業の公式はこうあって欲しい
こまさんと紀文の公式さんの一連のやりとりは、トータルで1713万回以上表示され、アレルギー患者の深刻な現状を知る医療関係者からも、「SNSでこういう交流があるのは良いこと」と、称賛の声が寄せられた。
「のりふみ、男前かよ」
「消費者のニーズをささいな会話から引き出して社内で検討します、という姿見ると応援したくなる!」
|
|
「企業の公式はこうあって欲しいの見本かも」
「すぐに社内に共有出来る紀文さんの会社としての風通しの良さも伺える」
「株主ですけど、こうした企業の株は長く持ちたいです」
「今後は練り物は全てのりふみさんで応援させて頂きますのでよろちくわ」
「食べ終わるのがもったいない」
商品の味について、「なめらかでもっちりな完全なスイーツなのです」「味は完全にチョコバナナです!どうやったら豆腐感あんなに消せるんだろ?」とXに投稿していた、こまさん。
こまさんに詳しく聞いたところ、普段は10代女子が大好きな「可愛くて美味しそうなスイーツ」を避けざるを得ない娘さんも、「おいしぃー!食べ終わるのがもったいない!」と、絶賛していたそうだ。
「同じようなお豆腐の商品でも、乳が入っていたり、明らかにお豆腐味だったりと、商品選びはとても難しく、こんなに美味しい商品に出合えてラッキーでした。娘もまずパッケージを見て、『食べていいの!?』と興奮していました。容器からお皿に出すとチョコソースがとろけ出るところもよかったです」(こまさん)
「食べられる数少ない商品」が売り場から消える恐怖…
食物アレルギー症状は命に関わることがあるため、こまさんは日頃から、商品のパッケージの裏側に印刷された原材料を慎重に確認した後、商品を購入しているという。
「商品をひっくり返すのは買えなかった時に申し訳ないので、商品を頭よりも高く持ち上げてアレルゲン(※アレルギーの原因となる抗原のこと)を確認しています。周りから見たら完全に怪しい人です。可能であれば、商品の表面にアレルゲンを書いておいてもらえるとありがたいですが、『植物性』や『豆乳仕立て』を謳っていても、香料(乳由来)や一部に乳を含む(微量に含む)ことが多々あり、買えないことは多いです……。
何よりも、需要が少ないため仕方ないのですが、植物性のカルピスやプリン、アイスなどの”食べられる数少ない商品”がいつの間にか売り場から消えてしまうのが悲しいというか、恐怖です」(こまさん)
フレーバーが変わっても絶対買います
幼い頃、乳製品や卵が使用されている「スイーツ」をプレゼントし合うバレンタインやホワイトデーが嫌だと泣いていた、というこまさんの娘さん。
そんな娘さんのティーン心にもフィットした紀文の商品と公式さんの対応について、「感謝の気持ちでいっぱいです」と、こまさん。
「紀文さんののりふみ担当の方には、お仕事を増やしてしまって申し訳ない気持ちもあります。とにかく、優しくてまっすぐなご対応に感激しました。デザート風とうふ、フレーバーが変わっても絶対買います。こんな素敵な商品をこれからもどうぞよろしくお願いします」(こまさん)
そんなこまさんとのやりとりの中で、「この商品にそのような需要があるとは知らず」と、返信していた紀文の公式さん。
それについて、「ただただ純粋にチョコバナナ味の豆腐を作ってみたかっただけ…?(驚愕の表情)」「アレルギー対策目的でなく『チョコバナナ味のとうふ』を作っていた紀文っていう企業おもろい」と、紀文の商品開発のセンスを讃える声も見受けられた。
そこで、紀文の広報担当に、「豆乳で作ったデザート風とうふ チョコバナナ味」の誕生秘話と、今後の商品の販売継続と展開についてお話を聞いた。
2025年春夏発売の新フレーバー「チョコバナナ味」
ーー「豆乳で作ったデザート風とうふ チョコバナナ味」はどんな経緯で誕生した商品なのですか?
「そもそも当社では10年以上前から、ダイエットを意識される方をターゲットにした、”罪悪感なくスイーツ感覚で食べられるとうふ商品”を発売しており、リニューアルを重ねながら現在もデザート風のとうふ商品を展開しています。その中でも『豆乳で作った〜』シリーズは、世の中的に健康を意識される方が多いことから、より健康的なイメージのある豆乳を前面に出し、2022年から販売を開始しました。チョコバナナ味は2025年2月に発売した新フレーバーです」
「多くの方に安心してお召しあがりいただける商品を開発すること」が当社の使命
ーー「豆乳で作ったデザート風とうふ チョコバナナ味」の販売継続の可能性と、商品開発に関する御社のご方針をお聞かせください。
「『豆乳で作ったデザート風とうふ』シリーズは、今後も味を変更しながら展開していく予定です。アレルギー対応に関しては、製造ラインの構成上、全てのアレルギーに対応するのは難しいのが現状です。しかし企業理念の中でも、<世の中を『すこやかなおいしさ』で満たしつづける>をミッションとして掲げている通り、多くの方に安心してお召しあがりいただける商品を開発することが当社としての使命だと考えております」
◇ ◇
重度の食物アレルギー症状を持つ子の親として、「アレルギーあるあるかもしれませんが、お願いすることも多いですし、泊まりに来て申し訳ない、食事に来て申し訳ない、という恐縮の気持ちが基本にあります。『アレルギーの人=めんどくさい』と思われることも多いですし、ニュース記事のコメント欄などで、アレルギー持ちが叩かれているのを見ると悲しくなります…」と、語っていたこまさん。
「でも、今回の紀文の公式さんやコメントをくださった方々のように、人の優しさに触れることも多いです。なので、行く先々で感謝を伝えるようにしています。気づけば娘自身も、美味しかったことや対応してもらえたことの感謝を伝えるようになりました」(こまさん)。
なお、「豆乳で作ったデザート風とうふ チョコバナナ味」は、食品衛生法にて表示が義務化されている食品表示基準の「特定原材料に準ずるもの(推奨表示)【20品目】」に該当する「大豆」「バナナ」が原材料として使用されている。
該当の食品にアレルギー症状がある場合は注意が必要だ。
(まいどなニュース/Lmaga.jpニュース特約・はやかわ リュウ)