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今の地球温暖化対策のままだと、世界の2020年生まれの8割超が生涯のうちに、これまで人類が経験したことのない危険な熱波に見舞われることになるとの分析を、ベルギーなどの国際研究チームが7日付の英科学誌ネイチャーに発表した。若い世代ほど事態は深刻化するとして、温室効果ガスのさらなる排出削減の必要性を訴えている。
近年、人類が経験したことのないレベルの酷暑や豪雨など「極端現象」と呼ばれる異常気象が世界各地で相次ぐ。状況は一層悪化する見通しで、国際環境NGO「クライメート・アクション・トラッカー」は各国の現状の対策を集めても、21世紀末の世界の平均気温は産業革命前に比べて2・7度上昇すると予測する。
チームは、熱波や河川氾濫など気候変動に関係する六つの項目について、今の気候では1万分の1未満の確率でしか起きない極端現象が今後どの程度増えるかを分析。177カ国の人口統計などを用い、1960〜20年生まれの各世代の何割が極端現象に遭遇する可能性があるか試算した。
その結果、世界の気温が2・7度上昇した場合、20年生まれ(現在4〜5歳。1億2000万人)の83%に当たる1億人が、生涯のうちに一度は、前例のない熱波に見舞われる可能性があることが判明。これに対し、60年生まれ(現在64〜65歳。8100万人)は16%の1300万人にとどまり、若い世代ほど影響を受ける割合が高かった。日本では、20年生まれの73%程度、60年生まれの16%程度が極端な熱波に直面する可能性があるという。
気温が3・5度上昇した場合、熱波に見舞われる20年生まれは92%に増加。一方、気温上昇を1・5度にとどめれば、52%に抑えることができるという。
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2・7度上昇した場合、極端現象に遭う20年生まれの割合は、農作物不作26%▽河川氾濫12%▽熱帯低気圧10%▽干ばつ7%▽山火事9%――となった。60年生まれに比べ、6項目のどれかに直面する割合は少なくとも2倍以上になるという。チームは「極端現象にどこまで適応するかで影響は変わる」としながらも「23年にカナダで起きた山火事は国境を越えて数百万人が大気汚染にさらされた。今回は局地的な影響に限定した控えめな推計だ」としている。【田中泰義】
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