RPG(ロールプレイング・ゲーム)「ウィザードリィ」の世界観で繰り広げられる、蝸牛くもが小説を書きso-binがイラストを描いている「ブレイド&バスタード」シリーズを、楓月誠がコミカライズしたシリーズの最新巻『ブレイド&バスタード7』(DREコミックス)が10月20日に発売。《迷宮》に居座るファイアードラゴンと対面したイアルマスたちの戦いぶりが大いに気になるところだが、そんな新刊の発売を「TRPG(テーブルトーク・ロールプレイング・ゲーム)落語」で著名な落語家の三遊亭楽天氏が大応援。落語で「ブレバス」ワールドの面白さを聴かせてくれる。
【撮り下ろし写真】オリジナル落語「ブレバス根問(ねどい)」を披露する三遊亭楽天
「ドラゴンスレイヤーって何でドラゴンスレイヤーっていうんですか?」。それはやっぱりドラゴンを殺す者(スレイヤー)だからだろう思いきや、驚くような理屈が繰り出されて「そうだったのか!」と吹き出せる。それが、『ブレイド&バスタード7』発売に合わせて三遊亭楽天氏が披露したオリジナル落語「ブレバス根問(ねどい)」だ。
最凶最悪のファイアードラゴンが低階層にまで出張ってきたことで、《迷宮》に潜れなくなった冒険者たちがたむろするようになっていた《スケイル》の街で、時間を持て余していた冒険者の兄貴と弟分とが落語のご隠居と与太郎のように会話する形で繰り広げられる「ブレバス根問」。イアルマスという名の主人公が、死んでしまった冒険者を《迷宮》から運び出して稼いでいることや、ガーベイジ(残飯)という酷い名前で呼ばれている元奴隷の少女がいることが2人の会話を通して紹介される。
でも、落語だけあってただのストーリー説明には終わらない。ガーベイジが奴隷たちといっしょに運ばれている時にモンスターに襲われて、たったひとりだけ生き残ったことをネタにして、あまりものを知らない弟分が知ったかぶりをする兄貴にあれやこれやと尋ねてちょっぴりトンチンカンな答えが返って来る様に吹き出せる。「ドラゴンスレイヤー」についての説明も同様。ファンタジーの世界についてファンが当たり前のように思っていることが、ひっくり返されるような感覚を味わえる。
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そうしたくすぐりやからかいができるのも、楽天氏が「ウィザードリィ」の世界に精通しているからだ。振り返ること34年前の1991年に「ウィザードリィ」が生まれて10周年を記念したイベント『WIZ91』が九段会館で開かれ、まだ高校1年生だった楽天氏も見に行った。そこで出会ったのが故・三遊亭円丈師匠が演じたウィザードリィ落語。早くからパソコンゲームを取り入れたネタを披露していた円丈師匠だけあって、落語は集まった熱烈な「ウィザードリィ」ファンを喜ばせ、楽天氏も面白がりつつ「落語ってこんな自由なことやってもいいんだっていう。まあ、非常に感じ入りました」と語る。
三遊亭円楽師匠(六代目)に弟子入りして落語家になった後、まだ前座だった頃に円丈師匠と話す機会があってその時の感動を伝えたとのこと。そして、二つ目になって、自身はTRPGという「ウィザードリィ」が生まれる元になった『ダンジョン&ドラゴンズ』のようなアナログのRPGをネタにした「TRPG落語」を創案して高座で披露し始めた。
自身、『D&D』を小学生のころから遊んでいて、ルールブックを元に役を演じて対話をしながらゲームを進めていく面白さにどっぷりハマっていた経験の持ち主。それが、役になりきり言葉で世界を紡いでいく落語の世界にも大いに活かされている。
高座ではTRPGのようにサイコロを振って出目で話の続きを選ぶこともある楽天氏だが、「ブレバス落語」ではコミックスの第7巻に向けたポイントをしっかりと紹介。イアルマスやガーベイジにファイアードラゴンと因縁のある女魔術師のベルカナンや盗賊のララジャ、そしてシスターのアイニッキも入って進んでいくパーティに待ち受けているドキドキの状況がどう描かれそしてどうなるのか? 答えは読んでのお楽しみということで、まずは楽天氏の落語で「ブレバス」の世界をしっかりおさらいだ。
来年4月に真打となって今の師匠の名を襲名し、二代目三遊亭小圓楽師匠となる楽天氏の活躍にも大いに期待しよう!
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(文・取材=タニグチリウイチ 写真=リアルサウンド ブック編集部)
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