なぜ「串カツ田中」は社名を変えるのか? “脱・串カツ屋”で挑む1000店舗への成長戦略

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2026年04月27日 06:10  ITmedia ビジネスオンライン

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串カツ田中が社名を変更した

 串カツ田中ホールディングスは3月1日、社名を「ユニシアホールディングス」に変更した。ユニシア(UNISIA)は「UNI(ひとつの)」と「SEA(海)」を組み合わせた名称だ。多様なブランドや人材が一つとなり、世界の海(マーケット)へ進み出す決意を表しているという。


【画像】串カツ田中のメニュー


 同社は串カツで国内市場を押さえたが、近年は他業態の開発やM&Aにも注力している。社名変更は串カツ屋のイメージから脱却し、多角化を進める意気込みだと考えられる。


●ありそうでなかった「串カツ」チェーン


 創業者の貫啓二氏は、1998年にバーを開業し、飲食業の世界に入った。その後、いくつかの飲食店を手掛けたが、経営に苦戦。だが、後に取締役となる田中洋江氏の父が残したレシピを参考に、2008年に東京・世田谷で「串カツ田中」をオープンすると、これがヒットした。2011年以降はフランチャイズ(FC)にも乗り出し、事業を広げていく。


 関西・九州など全国への出店をいち早く進め、2015年には100店舗に到達。2019年11月期末には会社全体で直営123店舗・FC150店舗の273店舗体制となり、売上高は100億円を突破した。


 串カツ田中の開業当時、大阪スタイルの串カツ業態は関西外にはほとんど広がっておらず、加えて個人店や非チェーン店が中心だった。居酒屋と比べて、串カツ屋はお酒を飲まない人でも入店しやすく、客単価は2000円台と低価格だ。その気軽さが関西圏以外でも受け、出店が拡大していった。


●ファミリー層を取り込んで成功


 宅配ピザチェーン首位「ピザーラ」のフォーシーズが展開する、競合の「串かつでんがな」も2008年から東京を起点に勢力を広げている。現在、串かつでんがなは約50店舗であるのに対し、串カツ田中は約350店舗を展開する。


 串カツ田中の成功要因は、串カツ業態で先行したことや低価格であること、チェーンとしての安心感などが考えられる。


 比較的客層が広い点も特徴だ。ノンアルコールで串カツだけを楽しむ若年層も多く、週末は子連れのファミリー客でにぎわう。そのため、居酒屋業態が出店しにくい住宅街にも進出している。


 串カツ田中は2018年6月に、ほぼ全店で禁煙化を実施したことで、ファミリー層が増えた。


 客層に占める「家族」の割合は、禁煙化前である2018年5月の14%から2019年度には24%に拡大。一方「会社員・男性」は29%から23%に減少した。2025年度の実績では「家族」が約38%を占めるのに対し、「会社員・男性」は約14%しかいない。


 席でたこ焼きを作れるセットなど子どもも楽しめるメニューや、ソフトクリームといったデザートも充実させている。男性客よりもファミリー層を重視する姿勢は酒類にも現れており、定番のラガーや瓶ビールはなく、エールビールを提供している。串かつでんがなのように、大サイズのドリンクは展開していない。


 店舗の構造は居酒屋業態としては珍しく、入口側が全面ガラス張りになっている。店内の様子がよく見えるようにすることで、安心して入店してもらうためだ。


●「脱・串カツ田中」なるか


 コロナ禍の影響で2021年度の売上高は約50億円まで減少したが、翌年には100億円台まで回復した。2025年度の業績は、売上高約211億円・営業利益約12億円と、いずれも過去最高を更新した。


 コロナ期間中でも店舗数は減少せず、前述のファミリー層獲得が増収に貢献した。また、この間にSNS施策やメディア出演も強化しており、認知度拡大につながったとみられる。


 近年は、新業態の開拓を進めている。2022年に焼肉店をオープンしたほか、米・オレゴン州に「TANAKA」を出店した。TANAKAはカツサンドをテーマとしたカフェで、外観はスターバックスのようなカフェチェーンを思わせる。2024年には京都で天ぷら専門店も開業している。だが、自社で開発した新業態はいずれも、現時点で多店舗展開には至っていない。


 2025年には新たなスローガンとして「脱・串カツ田中」を掲げ、約60店舗を展開するイタリア料理店「PISOLA」の運営会社を95億円で子会社化した。


 ピソラは主に関西のロードサイドに出店している。客単価は3000〜4000円とみられ、ファミレス業態としては高価格帯だ。串カツ田中とエリア・価格帯が異なる業態を取得することで、事業の多角化を図る。


 串カツ田中とピソラで、それぞれ約4000人(アルバイトなどを含む)の従業員を抱えており、人手不足への対応も目的だろう。なお、本件の原資として貫氏が約10億円を実質的に負担しており、その本気度がうかがえる。


 一般的に外食企業が複数のチェーンを開発するのは難しい。サイゼリヤは過去にサンドイッチ業態やイタリアンのファストフード業態を手掛けたものの、いずれも多店舗展開に至らなかった。


 一方、コロワイドのような外食大手はM&Aで規模を拡大している。すかいらーくHDも「資さんうどん」や定食屋の「しんぱち食堂」を相次いで買収し、事業領域を広げている。


 ゼロからの新業態は認知度向上に時間がかかる。その点、一定の店舗数を持つ既存店を取り込む方が成功の可能性は高い。さらに、関連報道による宣伝効果も期待できる。


 串カツ田中改めユニシアホールディングスは国内外で1000店舗を目標としている。同社は2月末時点で432店舗を展開。目標達成は今後のM&A次第といえそうだ。


●著者プロフィール:山口伸


経済・テクノロジー・不動産分野のライター。企業分析や都市開発の記事を執筆する。取得した資格は簿記、ファイナンシャルプランナー。趣味は経済関係の本や決算書を読むこと。 



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  • 店名はそのまま、社名が変更ってことなのかな
    • イイネ!11
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