深海7000メートルに、1200キロにわたる“クジラの墓場”―― 530万年前の化石や新種の生物を確認【海外】

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2026年06月20日 07:15  ねとらぼ

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ねとらぼ

画像:Nature(Creative Commons licence CC BY 4.0.)

 インド洋の深海で、これまでにないスケールの「クジラの墓場」が見つかりました。発見されたのは水深7000メートル近い海底。そこには最近死んだクジラの遺骸だけでなく、530万年前に生きていた絶滅種の化石まで残されていました。


【画像】発見された墓場


 研究者たちは、この場所が単なる化石の産地ではなく、数百万年にわたるクジラたちの歴史を記録した特別な場所だと考えています。人類の歴史で例えるなら、アウストラロピテクスの時代から現代人までの痕跡が同じ場所で見つかったようなもの。深海に眠る壮大なタイムカプセルが姿を現したと言えるかもしれません。


1200キロにわたって続く史上最大級のクジラの墓場

 この発見を報告したのは、中国科学院深海科学工学研究所を中心とする国際研究チームです。研究成果は2026年6月10日付で科学誌『Nature』に掲載されました。


 調査が行われたのは、インド洋南東部のディアマンティーナ断層帯。海嶺や海溝が複雑に連なる海域で、水深は最大7000メートルを超えます。


 研究チームは有人潜水艇「奮闘者(Fendouzhe)」を使い、32回にわたる潜水調査を実施。その結果、現代のクジラの死骸が確認された場所を5カ所、さらにクジラ化石の産地を476カ所発見しました。


 分布範囲は北西から南東へ約1200キロメートル。研究者らは、この一帯がこれまで認識されていなかった巨大な“クジラの死骸スーパー回廊”を形成している可能性があるとみています。


 これまで知られていたホエールフォール(クジラが死後に海底へ沈み、生態系を支える現象)の多くは水深4000メートル未満で見つかっていました。今回の発見は、それを大きく上回る世界最深クラスの記録となります。


530万年前の絶滅種も。過去と現在が同居する海底

 今回の発見で特に研究者たちを驚かせたのが、その年代の幅です。


 見つかった化石の中には、約530万年前のハクジラ類「プテロケトゥス・ベンゲレ(Pterocetus benguelae)」の頭蓋骨が含まれていました。さらに研究チームは、新種とみられる絶滅種を発見し、「プテロケトゥス・ディアマンティネ(Pterocetus diamantinae)」と命名しています。


 一方で、同じ海域では比較的最近に死んだとみられるクジラの遺骸も見つかりました。最大のものは全長約5メートルの南極ミンククジラの骨格です。


 つまり、この海底には、数百万年前のクジラと現代のクジラが同じ場所に眠っていることになります。


 米カルバート海洋博物館の古生物学者スティーブン・J・ゴッドフリー氏は、この発見について「本当にユニークだ」と評価。絶滅種と現生種の記録が重なり合うことで、ハクジラ類の進化や生態を長期的な視点で追跡できる可能性があると指摘しています。


死骸の周りには未知の生き物たちが集まっていた

 クジラの死骸は終わりではありません。深海では新たな生命の始まりともなります。現在進行形で分解が進むクジラの死骸には、細菌が群がり、骨に含まれる脂肪を分解して硫化水素を生み出します。その化学エネルギーを利用して、多くの生物が生息していました。


 調査ではクラゲや甲殻類、二枚貝、オウムガイ、さらには骨を食べることで知られるオセダックス属のワームなど、多様な生物群集が確認されています。場所によっては1平方メートルあたり最大2840個体もの生物が集まっていたといいます。


 さらにDNA解析の結果、多くの生物が既知種としては特定できず、新種である可能性も浮上しました。研究チームは、このような極限環境が未知の生物多様性の宝庫であることを示していると説明しています。太陽光が届かず、水圧も極めて高い世界であっても、生命は独自の進化を続けているというわけです。


なぜ500万年以上も残ったのか。深海が生んだ天然の保存庫

 もう一つの大きな謎は、なぜクジラの骨が数百万年もの間、残り続けたのかという点です。


 ゴッドフリー氏によると、その理由の一つはハクジラ類の吻部(ふんぶ)、いわゆる「くちばし」の骨が非常に高密度で丈夫なことにあります。現存する脊椎動物の中でも、特に硬い骨の一つだとされています。


 さらに深海では、海水中の鉄やマンガンの酸化物が骨の表面を覆い、一種の保護膜を形成します。この鉱物のコーティングによって骨の分解が抑えられ、まるで天然の石棺に包まれたような状態で保存されたと考えられています。


 研究者たちは、ディアマンティーナ断層帯がハクジラ類にとって豊かな餌場だった可能性も指摘しています。調査中には多くのイカや魚類が観察されており、クジラが集まりやすい環境だったのかもしれません。


 「深海の墓場」は、過去の生物を調べる化石産地であると同時に、今も新たな生命を育む生態系でもあります。研究者たちは、南アフリカ沖や南極周辺でも似たような場所が見つかる可能性があると考えています。


 明らかになったのは、クジラの死骸が単なる終着点ではないということ。530万年前の化石と、今も分解が進むクジラの死骸が同じ海底に残されている光景は、深海にまだ多くの謎が残されていることを改めて感じさせます。


参照

Nature「A 5.3-million-year-old deep-sea whale necropolis in the Diamantina Zone」(Creative Commons licence CC BY 4.0.)


Live Science「Scientists discover 5 million-year-old whale graveyard stretching for hundreds of miles in the Indian Ocean」


BBC「Whale graveyard dating back five million years discovered」


The Guardian「Deepest and most extensive whale graveyard discovered in Indian Ocean」



このニュースに関するつぶやき

  • そらまあ海の生き物が死んだら沈むわねえ。当たり前といえば当たり前よね。
    • イイネ!11
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