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セブン-イレブン(以下、セブン)が6月10日に実施した「セブンカフェスムージー」のスーパーセールが炎上してしまった。
一般的な店舗では冷凍されたスムージーを解凍する機械が1台しかないにもかかわらず、300〜400円のスムージーを“半額”にしたことで長蛇の列ができてしまい、買い占めや品切れが相次ぎ、現場は大混乱。不満をぶつける客への対応に追われた店員に同情する声とともに、セールを企画したフランチャイズ本部に対して「現場の実態をまったく分かっていない」という批判の声が多く上がったのだ。
この“スムージーパニック”については多くのメディアが取り上げており、セブン本部がスムージー半額セールを企画した背景には、高度経済成長期から右肩上がりで成長してきたコンビニの低迷があるとの指摘が相次いでいる。
セブンをはじめとする大手コンビニは、ビジネスモデル的には「安売り」を極力避けたい。にもかかわらず、スムージー半額による集客へと踏み切ったのは、コンビニの来店客数がじわじわと減少していることへの「危機感」のあらわれだという。
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・セブンイレブン「スムージー半額」なぜ?客殺到で現場混乱も踏み切ったコンビニ業界の事情(FNNプライムオンライン 2026年6月21日)
そんな「コンビニ離れ」の中でも、セブンが最も食い止めたいのが「10代」である。セブン-イレブン・ジャパンが公表している「年齢別層構成比(2025年度)」によれば、最も多い40代は24.1%を占める一方、20歳未満は4.5%にとどまる。
ちなみに2026年6月現在、20歳未満の人口は約1871万人で、日本の総人口の15%に当たる。つまり、セブンは日本社会の人口構成比と比較しても、10代の利用が際立って少ないコンビニなのだ。
この「20歳未満」にもっとセブンを利用してもらえるような仕掛けとして、スムージーを半額で大盤振る舞いしたのではないか、といわれているのだ。
●コンビニの「10代争奪戦」
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2025年ごろからスムージー、アサイーボール、フラッペなどがZ世代に人気を集めていることが各所で話題となっている。このトレンドを引き継いで、10代の間でも「セブンカフェスムージー」が人気になれば、これまであまり来店しなかった10代も取り込めるというわけだ。
ちなみに、このトレンドを集客に利用しているのはセブンだけではない。
セブンカフェスムージーを巡る騒動が波紋を広げる中、6月22日に、ファミリーマート(以下、ファミマ)は「FAMIMA CAFE」でメロンフラッペ、ピーチフラッペ、マンゴーフラッペなど5種類を順次発売していくと発表。しかも、SNSでバズり中のコーラスグループ「モナキ」のサイン入りチェキやトレーディングカードが当たる「モナキとフラッペキャンペーン」も実施する。
「10代離れ」の課題はファミマも同じだ。そのため、セブンカフェスムージーよりも先にファミマフラッペで大きな話題を生み出して、10代の顧客を取り込む狙いがあるようにも見える。
さて、このようなコンビニの「10代争奪戦」を聞くと、隔世の感を覚える人も多いだろう。
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学校が終わるとセブンで『週刊少年ジャンプ』(集英社)や『週刊少年サンデー』(小学館)とともに菓子やジュースを買ったり、セブンの前にたむろし、肉まんを頬張りながら夜遅くまで過ごしたりと、「セブンのメイン顧客=10代」という時代が、かつては確かに存在していたからだ。
●令和の10代がセブンへ行かないワケ
では、なぜ令和の10代たちはセブンを利用しなくなってしまったのか。よく言われる理由の一つが、「値上げ」だ。
・セブンは「値上げで高い」 1000人調査で見えた“正しい値上げ”の作法(日経クロストレンド 2025年07月07日)
前述のように、コンビニはフランチャイズオーナーと本部が利益を分かち合うビジネスモデルであるため、「安売り」に積極的ではない。そのため、物価高騰の影響もあり、コンビニのおにぎりや弁当、飲料などはスーパーと比べて割高になっている。
限られた小遣いでやりくりしている中高生などが、おにぎりやジュースなどを買おうと思ったら、「近くのセブンよりもちょっと歩いたスーパー」が選ばれやすいのも当然だろう。
「唐揚げや肉まん以外に、10代に強く訴求できる看板商品が少ない」という指摘もある。女子中学生雑誌『nicola(ニコラ)』の公式Webサイト「ニコラネット」が、10代の女性200人の購買行動を調べたところ、コンビニで購入する商品で最も多かったのは「グミ」だった。2位はローソンの「からあげクン」、3位は「肉まん」、4位は「ファミチキ」、5位は「菓子パン」となっている。
10代は小腹が空いたときに、唐揚げや肉まんを買うことがある。しかし、そこで名前が上がるのは「からあげクン」や「ファミチキ」であって、「ななチキ」ではない。もちろん、セブンにも魅力的な商品は多いが、このような調査で10代がすぐ思い浮かべる看板商品がないのだ。
ただ、個人的にはこれらの問題以前に、10代のセブン利用が減少した根本的な要因があると考えている。それは一言で言ってしまうと、「コンビニキラーと呼ばれる異業種参入組によるドミナント戦略で、10代マーケットを大幅に奪われてしまった」ということだ。
●ドミナント戦略の成功事例
ドミナント戦略とは、特定エリアに店舗を集中的に出店し、配送コストの削減と地域シェアの拡大を図る戦略だ。セブン-イレブン創業の立役者である鈴木敏文氏は「競争力は突き詰めるとドミナント戦略に行き着く」と語っており、その方針は現在も受け継がれている。
ドミナント戦略を本家・セブン以上に進めているのが、ドラッグストアだ。代表例は、ドラッグストアコスモスを運営するコスモス薬品だ。経営の柱に「高密度ドミナント戦略」を掲げる同社は、公式サイトで次のように説明している。
・コスモス薬品のビジネス戦略に学ぶ新規開業クリニックの差別化戦略(コスモス薬品の公式Webサイト)
コンビニエンスストアと同様、特定地域に集中的に店舗を展開するドミナント戦略をとっています。1kmから2kmの圏内に大型店を高密度に展開し、小商圏内を面で埋め尽くすことで、圧倒的なシェアを獲得することを目指しています。このように同一エリアへ集中的に出店することにより、配送コストの低減や販売促進コストの削減というメリットもあります。そしてインクがじわじわ染み出すように少しずつ、強力な店舗網を拡大しています。
実際にコスモス薬品は、2021年5月には1130店舗だったが、2025年5月には1609店舗となった。4年間で479店舗増加した。毎年100店舗を超えるペースでドミナント戦略を続けている。
こうした企業が成長すれば、ライバル各社も同様の戦略を取らざるを得ない。ウエルシア薬局は、2021年2月末の1899店舗から2025年2月末には2243店舗へと増加し、4年間で344店舗増えた。
●セブンの店舗数推移はどうか
セブンは2021年度に2万1327店舗だったが、2025年2月末には2万1743店舗となり、4年間で416店舗増えたものの、ドラッグストアコスモスの増加数(479店舗)を下回る。
ローソンは、2021年2月期の1万3893店舗(ナチュラルローソンとローソンストア100を含む)から、2025年2月期には1万4092店舗となり、増加数は199店舗にとどまった。
ファミマも2021年2月末の1万5725店舗から、2025年2月末には1万5318店舗となり、不採算店舗の整理などにより、4年間で407店舗減少した。
つまり、ドラッグストアのドミナント戦略は、コンビニ大手3社を上回るペースで進んでいるのだ。
これがセブンから10代の足が遠のいている最大の原因だと筆者は考えている。
1980年代から街の駄菓子屋、書店、弁当屋、コロッケなどの総菜を売る肉屋が、セブンのドミナント戦略によって10代の顧客を大幅に奪われた。まわりまわって、今度はセブンがドラッグストアのドミナント戦略で10代の顧客を奪われる側になっているのだ。
●10代がコンビニの代わりに行っている場所
近年、菓子やパンなどを扱うドラッグストアが増えている。先ほど出したドラッグストアコスモスも「おいしい総菜」というプライベートブランドを展開するほど食品分野を強化しており、ウエルシア薬局も「ドラッグ&フード戦略」を成長エンジンと位置付けている。
ここでセブンにとって問題となるのが、この食料品の中身だ。マイナビが2025年6月、23〜29歳の男女314人を対象にドラッグストアの活用実態を調査したところ、ドラッグストアで購入予定がなかったにもかかわらず、つい買ってしまう商品カテゴリでは「菓子」(29.4%)がトップだった。
先ほどのティーンのコンビニ消費についての調査を思い出していただきたい。唐揚げや肉まんを押さえてトップは「グミ」、5位には「菓子パン」も入っている。これらは全て、ドラッグストアコスモスやウエルシア薬局でも買えるものだ。
ここまで言えば、筆者が何を言いたいかお分かりだろう。セブンに10代の足が向かないのは、コンビニで買いたいものは、ドラックストアでも買えるからだ。しかも、コンビニよりも安い場合多い。そんなドラッグストアがドミナント戦略で出店を進めていけば、かつてセブンが成功したように、商圏内の10代顧客シェアを握っていくのは当然だろう。しかも、そのような形でセブンを苦しめているのはドラッグストアだけではない。
首都圏でコンビニと競合するエリアにドミナント出店を進めていることから「コンビニキラー」の異名を取る「まいばすけっと」は2021年には約1000店舗だったものが2025年には1323店舗となっている。
セブンをコンビニ王者に押し上げるだけにとどまらず、社会インフラと呼ばれるまで成長させた「ドミナント戦略」によって、今度はセブン自身が苦境に追いやられるというのは、なんとも皮肉な話である。
ただ、長い目で見ればこれはセブンにとって悪い話ではない。本格的な人口減少時代到来を前に「ドミナント戦略の見直し」に踏み切る契機になるからだ。
本連載で繰り返し指摘してきたが、日本の人口増時代に生まれたこの事業戦略は、人口減少に転じたことで一気に逆回転してさまざまな問題を噴出させている。
●10代離れの課題を解消しても、客離れは避けられない
まず、同一商圏内に店舗が集中するので、バイトの確保が難しくなり、現場が疲弊するようになった。そして、地方では人口減少が進み、商圏内の住民も減るため店舗間のカニバリゼーションも発生する。このような問題が指摘されても、経営の根幹ということでドミナント戦略を「死守」してきたのである。ドミナント戦略を否定することは、セブン&アイ(セブンが中核)の「中興の祖」で、流通のカリスマ・鈴木敏文氏を否定することにもなるからだ。
歴史のある大企業にお勤めの方はよく分かるだろうが、創業者などカリスマが唱えた理念、成長のビジネスモデルなどは、それがどんなに時代錯誤なものでも否定することは許されない。カリスマの薫陶を受けた経営陣などがまだ多くいる場合などはなおさらだ。
だからこそ、セブン経営陣は勇気をもって「ドミナント戦略」を否定しなくてはいけない。ドラッグストアや小型スーパーにシェアを奪われたことを、きっかけにビジネスモデルの転換を図るのだ。
もしスムージーが大ヒットして10代の顧客が増えたとしても、ドミナント戦略を続けていく限りは苦境に追いやられる。
近年、コンビニ利用が増えている50代は2024年10月1日時点で1700万人、20代は1278万人となっている。しかし、10歳から19歳は約1108万人と大きく減少している。これから生まれる子どもはもっと少ない。2025年の新生児は約67万で過去最小だ。ロボットやAIがいくら進化したところで「消費者」が激減していく日本では、ドミナント戦略をやればやるほど苦しくなる。
今は積極出店を続けるドラッグストアも小型スーパーもコンビニも、10年、20年後には不採算店舗が増加する可能性が高い。
そうなると、コンビニは「数」で地域のシェアを取るのではなく、1つ1つの店舗の機能を高める「質」でシェアを取らざるを得ない。例えば、地域コミュニティーの交流の場を提供したり、困り事を解決したりというスポットとして認識されたりすることで、客足を増やしていくのである。
ドミナント戦略で天下をとったセブンが、新しいプレーヤーのドミナント戦略によって引導を渡されるのは、理不尽だと感じる人もいるかもしれない。しかし、経済はそういう新陳代謝によって活性化していく。厳しい競争こそがイノベーションを引き起こす。
コンビニキラーたちの猛攻によって、追い詰められたセブンがどんな進化をするのか注目したい。
(窪田順生)
※下記の関連記事にある『【完全版】セブン「スムージー半額騒動」の背景 若者はなぜコンビニから離れたのか』では、配信していない豊富な写真とともに記事を閲覧できます。
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