「○時間しか寝ていない」「ストレスで体を壊した」――自己犠牲エピソードは、なぜ若者たちに響かないのか?

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2026年07月29日 08:31  ITmedia ビジネスオンライン

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自己犠牲アピールはなぜ白けてしまうのか

 「私なんて昨日、3時間しか寝てないですよ」


【画像】成功にたどり着くまでの工夫やアイデアを言葉にすべきだ


 会議中の雑談で、そう切り出す先輩がいた。誰も聞いていないのに、なぜか毎回この手の話が出る。


 「先月はずっと休日出勤していた」


 「子どもが起きている時間に帰ってない」


 といった自慢話(?)だ。こんな話を聞かされるたびに、周りは微妙な雰囲気になる。


 こうした「頑張っている自分」をアピールする人は、どこの職場にもいる。本人に悪気はないだろう。しかし昔ならともかく、昨今はこの手の話が共感されることはほぼないといえる。


 そこで今回は、こうした「不幸自慢」や「犠牲アピール」がなぜ今の時代に響かないのか、そして本当にアピールすべきことは何かを解説する。組織の雰囲気をよくしたいと願っている管理者たちには、ぜひ最後まで読んでもらいたい。


●なぜ人は「犠牲」を語りたくなるのか


 残業時間や休日出勤の多さ、理不尽な要求に耐えた体験、体調を壊したエピソード――こうした苦労話を、あえて口にする人がいる。


 背景にあるのは、承認欲求だ。


 会社にどれだけ貢献しているか、どれだけ自分を犠牲にしてきたかを語ることで、周囲に認めてもらいたいのだ。自分が望んでいる以上に評価されていない、承認されていないと感じると、こうした形でアピールしたくなる。


 「あの案件を取るまで、どんだけお客様と夜を付き合ったか」


 「胃に穴が開くほど無理をした」


 かつて、昭和時代の会社員たちは、こうした苦労話を武勇伝として語ってきた。ラクをしてうまくいった話は、人の心にあまり響かない。


 「お前らの部署はラクでいいなあ! 俺たちなんて、どれだけ苦労してるか、お前に分かるか?」


 と責められるのがオチだ。


 だからこそ、どれだけ自分を犠牲にしてきたかを語り、その苦労の大きさで相手を納得させようとしてきたのだ。


 これは、決して特殊な心理ではない。誰しも、頑張りを認めてほしいという気持ちを持っている。私にもそのような気持ちはある。ただ問題は、その伝え方にある。


 自分の中では、頑張った時間や我慢した量こそが、努力の証明だと感じている。だからこそ、その量をなるべく具体的に、大きく語ろうとしてしまう。


 「3時間しか寝ていない」


 「ゴールデンウイークもずっと働いていた」


 「仙台での仕事を終えたら、今度はシンガポールへ飛べと言われた」


 こういった具体的なエピソードは、本人にとって誇りでもあるだろう。しかし、聞いている側は、全く別の意味として受け取ってしまうことがある。


●功績と犠牲は別物だ


 苦労話には、大きく分けて2つの種類がある。


 1つは、結果や功績をアピールするものだ。「これだけ利益を出した」「こんな大きな会社と取引できるようになった」。これは、成果そのものを語る話だ。


 例えば、


 「難関大学に合格した」


 「世界的に権威あるデザインの賞を獲得した」


 このような結果が得られたら、アピールしたくなるのは当然だ。


 しかし犠牲や苦労そのものをアピールするのはどうだろう? 自分がどれだけ犠牲を払ったかの話である。冒頭の「3時間しか寝ていない」は、まさにこちらに当たる。


 この2つは、似ているようで全く違う。


 先述の例でたとえると、


 「難関大学に合格するため、1年間平均4時間睡眠で勉強した」


 「権威のあるデザインの賞をとるために、家族と離れてフランスで修業した」


 こうなるが、実際に望みが叶っていなければどうか? 


 「1年間、平均4時間睡眠で勉強したかもしれないが、結局はその大学に合格しなかったのか」


 「家族と離れてまでフランスで修業したのは凄いけど、賞は取れなかったんだ……」


 と拍子抜けするだろう。


 昭和の時代には、犠牲アピールが一種の美徳として受け入れられてきた側面がある。


 「俺が20代の頃は、毎日“午前様”だった」


 「インフルエンザにかかっていても、夜中まで仕事したもんだ」


 こんな苦労話には、聞く人の心を動かす力があった。だからこそ、多くの経営者や先輩社員が、こうした武勇伝を好んで語ってきたのだろう。


 しかし、時代が変われば、響く話も変わる。今、多くの若い世代が求めているのは、苦労の量ではなく、苦労を減らすための知恵だ。


 この価値観の変化に気付かないまま、昔ながらの武勇伝を語り続けてしまうと、意図せず周囲との溝を広げてしまうことになる。


●犠牲アピールが響かない理由


 なぜ、犠牲のアピールは今の時代に響かないのか。その理由は、「生産性」の低い話には誰も興味がないからだ。


 生産性とは、どれだけ資本を投下して、どれだけの対価を得るか、という指標だ。投じた労力に対して、どれだけの成果を回収できるかという話である。


 つまり、犠牲のアピールばかりしていると、


 「苦労したのは分かった。それで、どれほどの成果を手に入れたのか?」


 「その犠牲に見合った対価はあったのか? なかったのなら、参考にしたくない」


 と思われるのだ。


 「この10万円のカバンを、交渉して7万円で買った」


 という話なら「すごい」「どうやって交渉したの?」と誰でも関心を持つが、


 「10万円のカバンなのに、15万円も払っちゃった」


 という話なら「それは残念でした」「なんで、15万円も払ったんですか」と呆れられる。


 多くの若い世代は、そこまで犠牲を払わなくても同じ結果を出したいと考えている。そのための工夫ややり方を知りたいと思っている。ある意味、それは健全な欲求だ。


 それなのに、会議や飲み会の席で「どれだけ苦しかったか」「どれほど辛い日々を送ったか」という話ばかり聞かされたら、どんな思いをするだろう。


●犠牲アピールに共感するのは、限られた世代だ


 こうした苦労話に「すごいですね」と反応してくれるのは、40代以降だけだ。かつて自分自身も同じような苦労を経験してきたからこそ、共感が生まれる。


 「AIとかデジタルとかに頼らず、もっと現場で汗をかけ」


 と言えば賛同する仲間たちだ。


 しかし、その共感は世代を超えて広がりにくい。若い世代からは「そこまでしなくても結果は出せるはず」と、冷めた目で見られてしまう。


 最悪なのは、結果が伴っていない犠牲アピールだ。


 どれだけ成果が出たのかが分からないまま、ただ「これだけ残業した」「これだけ休日出勤した」「体調を崩した」という話だけが延々と続くケースだ。これでは、聞いている側は何を評価すればいいのか分からなくなってしまう。


 過去に、大きな不祥事に見舞われた企業の経営者が、記者会見の場で「私は寝ていないんだ」と、思わず本音を漏らしたことがあった。その心情は理解できる部分もある。しかし、この発言は世間の共感をほとんど得られなかった。求められていたのは、経営者自身の睡眠時間ではなく、問題への対応と結果だったからだ。


●何をアピールすべきか、3つの視点


 では、頑張りを正しく伝えるには、何をアピールすればいいのか。次の3つの視点が重要だ。


1. 結果そのものをアピールする


2. 結果に至った工夫をアピールする


3. 再現できるやり方をアピールする


 それでは、一つ一つ見ていこう。


結果そのものをアピールする


 まずアピールべきは、犠牲ではなく結果だ。「これだけの成果を出した」という事実そのものを、シンプルに伝えることが基本である。どうしても苦労話をしたいなら、まずはしっかりとした結果を出そう。


結果に至った工夫をアピールする


 結果だけでなく、そこにたどり着くまでの工夫やアイデアを言葉にしよう。どんな順序で動いたのか、どんな判断をしたのか。これは、聞いている側にとって、そのまま自分の仕事に生かせるヒントになるかもしれない。


再現できるやり方をアピールする


 最も喜ばれるのは、他の人でも再現できる形でやり方を言語化することだ。


 「いろいろ試したんだけど、結局はA・B・Cの中では、Bのやり方がいい」


 「こういった仕事をする場合は、迷わずBのやり方をまず試してほしい」


 こういったノウハウは、聞き手にとって実利がある。「自分のように遠回りしなくても済む」という思いやりがこもっているからだ。これこそ、若い世代が本当に求めているものだ。


●苦労を語るなら、工夫とセットで


 苦労そのものを否定するつもりはない。誰しも、大変な思いをしながら仕事に取り組んだ経験があるはずだ。しかし、その苦労を語るのであれば、そこから生まれた工夫や学びをセットで伝えるべきだ。


 「これだけ大変だった」で終わる話は、共感を集めるどころか、生産性の低さを自ら証明してしまうことになりかねない。


 「こんなに大変だったが、こうすれば同じ苦労をせずに済む」


 という形にできれば、その話は初めて価値のあるアピールになるだろう。


 冒頭の「3時間しか寝ていない」という一言も、もし「そのおかげでこんな工夫を思いついた」というノウハウが続けば、印象は全く違ったものになったはず。苦労そのものではなく、苦労の先に何を得たのかを語ること。それが、聞き手の心を動かす唯一の方法なのだ。


著者プロフィール・横山信弘(よこやまのぶひろ)


企業の現場に入り、営業目標を「絶対達成」させるコンサルタント。最低でも目標を達成させる「予材管理」の考案者として知られる。15年間で3000回以上のセミナーや書籍やコラムを通じ「予材管理」の普及に力を注いできた。現在YouTubeチャンネル「予材管理大学」が人気を博し、経営者、営業マネジャーが視聴する。『絶対達成バイブル』など「絶対達成」シリーズの著者であり、多くはアジアを中心に翻訳版が発売されている。



このニュースに関するつぶやき

  • 今の若い人にそんなこと言ったら「バカなんですか?」って真顔で聞かれて終わり、になりそうだ。
    • イイネ!6
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