「寝ホン」はなぜ人気? Ankerとfinalが睡眠用イヤフォンに注力するワケ

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2026年08月23日 07:20  ITmedia ビジネスオンライン

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睡眠用イヤフォンってなに?

 近年、「寝(ね)ホン」と呼ばれる「睡眠用イヤフォン」の人気が拡大している。


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 睡眠用イヤフォンとは、単に寝ながら使えるイヤフォンのことではない。横になっても耳が痛くなりにくく、寝返りを打っても外れにくい小型設計など、睡眠時の使用を前提に作られているのが特徴だ。入眠をサポートするサウンドなど、睡眠に特化した機能を備える製品もある


 先駆的な存在のAnker(アンカー)は、睡眠用イヤフォン市場をリードする存在だ(※)。2022年10月に第1弾の「Soundcore Sleep A10」(以下、A10)、2024年7月に第2弾の「Soundcore Sleep A20」(以下、A20)、そして、2025年9月に最新製品の「Soundcore Sleep A30」(以下、A30)を発売した。


(※)Euromonitor International (Shanghai)Co., Ltd.、2025年における睡眠用ヘッドフォン・イヤフォンの世界小売販売額。


 具体的な販売数や売上高は非公開だが、最新製品は、発売前に米Kickstarter(キックスターター)で実施したクラウドファンディングで、約4.57億円(2025年8月時点で308万7157米ドル、1ドル=148円で換算)を集めた。


 最新製品のA30は、睡眠時に気になりやすい「周囲の音」や「同居家族のいびき」に対応する機能を備える。耳の形状や装着状態に合わせてノイズを効果的に抑える「適応型ノイズキャンセリング」に加え、いびきを検知すると、それを打ち消すためのマスキング音を自動で生成して再生する「いびきマスキング機能」も搭載している。


 また、イヤフォン・ヘッドフォン専門ブランドのfinal(ファイナル、神奈川県川崎市)でも、睡眠時の使用を想定した小型ワイヤレスイヤフォンシリーズの累計販売数が30万台を突破した。


 現在は、新たに開発した夜専用イヤフォン「ZE500 NYUMIN」を応援購入サービスのMakuake(マクアケ)で販売中だ。同製品は、眠る前の使用を前提とし、より穏やかな音質にチューニングした。想定を上回る反響で、約5400万円を集めている(2026年8月中旬時点)。


 なぜ、睡眠用イヤフォン市場が拡大しているのか。アンカーとファイナルの2社に取材した。


●成熟するワイヤレスイヤフォン市場の「次の一手」


 アンカーはモバイルバッテリーで知られるが、近年はオーディオ製品でも存在感を高めている。2016年に初のワイヤレスイヤフォンを発売、2018年にはオーディオ製品の自社ブランド「Soundcore(サウンドコア)」を発足させ、製品群を増やしてきた(現在は、同ブランドを「アンカー」ブランドへ統合済み)。


 2025年には、初めてアップルを抜き、完全ワイヤレスイヤフォンの国内数量シェア1位(※)を獲得。フラッグシップモデルの「Liberty(リバティ)」シリーズは、2万円以下でノイズキャンセリングや高いバッテリー性能など「消費者がイヤフォンに求める機能」を広く備え、支持されているという。


(※)2025年1〜12月における外部調査会社のデータを基にした全国有力家電量販店の販売実績集計/大手ECプラットフォームのランキングをもとにしたアンカー調べ。直営店などでの販売を除く。


 そんな同社が、次の一手として着目したのが「睡眠用イヤフォン」だ。


 「ワイヤレスイヤフォン市場が成熟する中、利用シーンを細分化することで、2台目、3台目として手に取っていただけると考えました。仕事やスポーツ用途は、すでに多く存在するため、世界的な課題となっている『睡眠』に特化して開発しました」(アンカー・ジャパン 執行役員 事業戦略本部長 芝原航氏)


 従来のワイヤレスイヤフォンは、横たわっての使用を想定していないため、睡眠時に外れやすく、耳に痛みが生じやすい。この課題を解決するため、アンカーではイヤフォンの構造を一から見直した。


 そうして完成したのが、片耳約2.9グラムで指先に乗るほど小型のA10だ(現在は終売)。独自の2層構造イヤーチップで、装着時の圧迫感も減らした。専用アプリでは睡眠状態を記録・確認できる「睡眠モニタリング」に対応。イヤフォンを使ってアラームを設定でき、周囲を起こさずに起床できる。


 未成熟市場ながら反応に手応えを得られたため、A20(現在は終売)、A30と発売し、機能やデザインを進化させていった。


●ノイキャン・いびきマスキングを初搭載


 2025年9月に発売したA30は、「適応型ノイズキャンセリング」と「いびきマスキング機能」を初搭載した。睡眠時に気になりやすい周囲の生活音や空調音などをノイズキャンセリングで抑え、同居家族のいびきには、検知した音に合わせてマスキング音を自動再生することで、睡眠を妨げる音を気になりにくくする。


 また、本体をA20より薄型にすることで、圧迫感や枕との干渉を軽減した。多機能ゆえ、希望小売価格は2万9990円と高額だ。


 「うまく市場が開拓できているため、これまでA10やA20を購入いただいた方に、さらなる進化を届けたいと考えました。当然、新規ユーザーへの提案も目的としています」(アンカー・ジャパンの芝原氏)


 「主な購入者層は、30〜40代の方です。同居家族の生活音が気になる、健康に投資したい、出張先でも睡眠の質を上げたいなどの理由で選ばれています。購入した方からは、『周囲のいびきなど、睡眠時の音が気にならなくなった』という声が聞かれています」(アンカー・ジャパン 芝原氏)


 実際に装着してみると、一般的なイヤフォンと装着感が大きく異なることが分かる。A30は耳の穴にはめた後、耳のくぼみに沿わせるよう左に回して固定する。完全に横向きに寝ても枕と干渉しづらい。


 アプリには、入眠時に適したサウンドとして、「眠りにつく物語」「瞑想」「スリープミュージック」「ホワイトノイズ」などを導入。ホワイトノイズとは、幅広い周波数の音が均等に含まれたノイズで、「海の波音」「森の散歩」「雷雨の音」などがある。音声自動オフタイマーや睡眠状態になった際の自動切り替え機能なども備える。


 多機能なため操作に戸惑うこともあったが、使いこなせるようになれば、旅行や出張で睡眠環境が変わったときにも効果を発揮するかもしれない。


●「ASMR」市場を開拓したファイナル


 2007年に創業したイヤフォン・ヘッドフォン専門ブランドのファイナルも、近年、睡眠用イヤフォンに注力する。ファイナルの前身企業も含めると、同ブランドの歴史は1974年に始まっており、高い音響技術が強みだという。


 「レコードの針や高額なオーディオ機器を手がけてきた歴史があり、100万円を超えるヘッドフォンがフラッグシップモデルです。従業員55人のうち10数人が研究員で、研究開発の比率が高い組織です」(ファイナル 国内営業部/広報部 部長 森圭太郎氏)


 そんな同社の寝ホンの始まりは、2021年にさかのぼる。といっても、当時発売したのは「COTSUBU for ASMR」(希望小売価格8480円)という製品で、睡眠用ではなく、「ASMR特化」のイヤフォンだ。しかし、知らぬ間に寝ホンとして使われていたのだという。ASMRとは、特定の音や映像から得られる心地よさやゾワゾワする体験を指す。


 「同製品に搭載されている『バイノーラル技術』により、まるでその場にいるようなリアルな音を再現しています。当社が初めて同技術を搭載したのが、2019年発売の有線イヤフォン「E500」(希望小売価格1980円)でした。


 これが、ASMR愛好家や特定のシチュエーションを音声で楽しむ『シチュエーションボイス』を好む女性層に口コミで広まり、『ワイヤレス化してほしい』という声が多く届きました。そこで、登場したのが『COTSUBU for ASMR』です」(ファイナル 森氏)


 E500は低価格も支持され、これまでに50万台を販売したヒットになっている。さらにユーザーの声をヒアリングすると、「寝ながらイヤフォンを使っている」という声が多く聞かれた。「それならば入眠をサポートする製品をつくれば、需要に応えられるのではないか」と考え、入眠時に適した「ZE500 for ASMR」(希望小売価格8980円)を2025年に発売。これが、想定以上のヒットになった。


●最新製品も想定を上回る反響


 「ZE500 for ASMR」は、片耳約3グラムとCOTSUBUより二回りほど小さくし、耳に触れる部分を柔らかいシリコンで覆うデザインに変更。さらに、挿入した際の深度を浅くすることで異物感を抑え、寝心地の良さを追求した。連続再生時間はイヤフォン単体で最大4.5時間と短いが、際立った小ささと、近接感のある「声」に特化した音質を両立させた。


 「『入眠時やASMRに適している』とうたったところ、ECサイトやロードサイドの家電量販店でよく売れています。実際に音楽やラジオ、オーディオブックなどを就寝時に聞いている方が多くいます」(ファイナル 森氏)


 2021年発売の「COTSUBU for ASMR」と、2025年以降に発売された「ZE500」シリーズ(最新製品の「NYUMIN」を除く)を合わせ、累計販売台数は30万台を突破。この反響を受け、さらに改良した「ZE500 NYUMIN」(希望小売価格1万1800円)も開発した。


 「前製品で支持された形状や装着感を踏襲しつつ、『音質』を大きく進化させました。通常、スマートフォンの音量調整は16ステップと決まっていますが、アプリを使えば、より細かく音量を調整できます。入眠時は音の刺激をやわらげる必要があり、心地よいと感じる音量は個人差が大きいためです。通常小さくなるほど聞こえづらくなる低音の声も、ぼやけないよう自動補正を搭載しています」(ファイナル 森氏)


 専用アプリでは、タイマーや音の調整、入眠用サウンドなどの機能はあるが、アンカーのA30と比べると明らかにシンプルだ。オーディオマニア以外にも広く普及させたい狙いから機能を絞り、価格を約1万円に抑えたという。さらに、森氏はこう続けた。


 「『心地よさ』の観点でも、あえてノイズキャンセリングを搭載しませんでした。同技術は、周囲の雑音を低減するために逆位相の音を出し続ける必要があります。かつ、いびきをマスキングするなら強力なノイズキャンセリングでないと難しく、鼓膜に負荷がかかります。


 これらを踏まえ、当社では全体的に音圧を下げることで音の角を取るアプローチを取っています。雑音は消えないけれど気にならないという耳栓のような『緩やかな遮音』を目指しています」(ファイナル 森氏)


 同製品はマクアケで想定を上回る金額を集め、好調なスタートを切った。主な購入者は20代後半から40代で、狙い通り従来製品よりも広い層から関心を集めている。また、一般的なオーディオ製品より女性比率が高いという。


 2社では「寝ホン市場は広がっていく」との考えから、睡眠用イヤフォンの開発を継続していく方針だ。


(小林香織、フリーライター)



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  • 「『半胴体』って。漢字が違うだろ」「寝る時間も身体にくっつけてるなら、もう半分胴体みたいなもんだろ」
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