STEAM教育ってどうなの? マイクラで金融教育?「EDIX 東京 2024」で見た最新事情

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2024年05月22日 18:01  ITmedia PC USER

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EDIX 東京 2024(第15回教育総合展 東京)は5月8日〜10日の3日間、東京ビッグサイト西ホールで開催された

 5月8日〜10日、東京ビッグサイト(東京都江東区)で教育関係の総合展示会「EDIX 東京 2024(第15回教育総合展 東京)」が開催された。ITmedia PC USERでも、本イベントに関するレポートが順次掲載されている。


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 この記事では、本イベントで展示されていたSTEAM教育(※1)に関する展示を紹介する。


(※1)Science(科学:理科)/Technology(技術)/Engineering(工学)/Arts(芸術:図工科や美術科)/Mathematics(数学)に関する教育の総称


●アーテック:新製品「アーテックリンクス」やNext GIGA向け製品を多数展示


 大手教材メーカーのアーテックは、新製品の「アーテックリンクス」を中心とするSTEAM/プログラミング教材やNext GIGA向けのアクセサリー類などを展示していた。中でも、理科の授業で活用しやすい「データサイエンス」の展示は充実していた印象だ。


 「アーテックロガー」は、さまざまなセンサーのデータを記録するための装置だ。学習用端末とBluetooth経由で接続して、リアルタイムにデータを送り、PCでグラフ化することもできる。


 例えば、加速度センサーと組み合わせて使えば、物理の「等加速度運動」に関する実験などの際に、正確な加速度を取得できる。気象センサーや電流センサー、水温センサー、酸素センサーなど、組み合わせられるセンサーは多く用意されているので、化学分野や生物分野でも利用可能だ。


 今回が初展示だという新製品「アーテックリンクス」は、新コンセプトのSTEAM教材で、今どきの家庭で使われる「スマート家電」の仕組みも学べる面白い製品だ。


 本製品は大きく「メインユニット」と「拡張ユニット」に分かれており、メインユニットの四辺に拡張ユニットを接続して“拡張”していく。メインユニットには電源供給用バッテリーを接続する必要があるため、実際に接続できる拡張ユニットは最大3つとなる。ユニット間の固定にはマグネットが使われるため、脱着も容易だ。


 拡張ユニットは全部で9種類用意されている(バッテリー/光センサー/人感センサー/マイク/スピーカー/入出力ユニット/加速度センサー/温度センサー/赤外線通信ユニット)。拡張ユニットの組合せと、Scratch 3.0ベースのビジュアルプログラミングによって、さまざまな機能を実装可能だ。


 例えば、メインユニットにバッテリーと光センサー、人感センサーを接続すれば、「周囲が暗く、なおかつ人感センサーが人を感知したときのみ、メインユニットに搭載されているLEDを点灯する」という人感ライトを作ることができる。Bluetoothを使ってメインユニット同士に交信させることも可能で、アイデア次第でさまざまな利用方法が考えられる。


 その他、アーテックブースでは「アーテックロボ1.0」「アーテックロボ2.0」を利用した高等学校向けのカリキュラムの提案や、教育アプリケーションや管理システム端末の展示も行われていた。さらに、Next GIGA向けアクセサリーとして、PCケースやヘッドセット、ペンなども展示されており、学校名などの“名入れ”ができることもアピールしていた。


●ALUX:教育用ドローンや単体プログラミング可能なロボットカーを出展


 ALUX(エーラックス)は、韓国の大手Edtech企業で、さまざまな教育用ロボットやドローンを開発/販売している。日本の教育関係者に自社製品を知ってもらうべく、今回初めてEDIXにブースを構えたという。


 同社は、数種類の教育用ドローンと、PCやタブレットを使わずに単体でプログラミングが可能な小型ロボットカー「AI VINU」を展示。教育用ドローンを実際にラジコン操縦で飛ばしたり、AI VINUによるライントレース走行を実施したりと、各種デモ展示に注力していた。


 AI VINUはタッチパネル付き液晶ディスプレイを備えており、タッチペンや指先で画面をタッチしてプログラミングできる。傾きセンサーや音センサー、距離センサー、光センサー、カラーセンサーなど多くのセンサーを搭載しており、プログラミングすることでより高度な動作が可能だ。


●ファナック:大手産業ロボットメーカーが出展したのはなぜ?


 ファナック(FANUC)といえば、日本を代表する大手産業用ロボットメーカーだ。今回、同社は初めてEDIXに出展した。工業高校、高専(高等専門学校)や大学の工学部に自社のロボットやロボットパックをアピールする狙いがあるようだ。


 ファナックのブースには、協働ロボット「CRXシリーズ」が2台展示されており、2種類のデモンストレーションが行われていた。


 CRXシリーズは工場など実際の現場でも使われている“ホンモノの”産業用ロボットだ。今回は、学校における実習時に実践利用できるように「学校用ロボットパッケージ」として同シリーズを訴求していたようだ。


 このパッケージは、高専では「協働ロボットの動かし方」を学ぶために、工業高校では「現場における即戦力」を養成するために、そして大学では「協働ロボットを使ったソリューション開発」での導入を想定しているという。


●SAEON:AI搭載ロボットカーを展示


 韓国のAIロボットメーカーSAEONは、同社のAI搭載ロボットカー「ALTINO」の展示やデモを行っていた。


 ALTINOは、搭載マイコンボードなどの違いによって「ALTINO LITE」「ALTINO Basic」「ALTINO Arduino」「ALTINO Raspberry Pi」の4モデルが用意されている。ScratchやPython、C言語など、さまざまな言語でプログラミングを行うことが可能だ。最上位となるALTINO Raspberry Piには、カメラも搭載されている。


●くもん出版:幼児から学べるプログラミング教材を展示


 くもん出版のブースでは、同社から出版されている「IchigoJamでできるテキストプログラミングの授業」の著者である松田孝氏による「IchigoJam BASIC」の実演や、同社が販売しているプログラミング教材「マタタ プロセット」のデモが行われていた。


 松田孝氏は、Scratchなどをいち早く小学校の授業に取り入れたことで有名な元小学校校長だ。2019年に校長をやめた後、MAZDA Incredible Labを設立。ICTによる教育革命を目指してさまざまな活動を行っている。


 IchigoJamは、もともとjig.jpの福野泰介社長が開発した低価格な教育向けシングルボードコンピューターで、IchigoJam BASICと呼ばれるBASICが動作する。現在はIchigoJam BASICをWebブラウザ上で動かせる「IchigoJam web」というサイトが公開されているため、IchigoJamの実機がなくてもIchigoJam BASICを利用したプログラミング学習が可能だ。


 松田氏は、BASICの利点を説明しながら、実際のプログラミング授業の流れなどを解説した。


 マタタ プロセットは、4歳から遊んで学べるプログラミング教材だ。ロボットに指示を出すためのカラフルなブロックと、手のひらサイズのかわいいロボット、ブロックを並べるためのボードから構成されている。


●SMBCコンシューマーファイナンス:マイクラで金融リテラシーを学べるアプリを展示


 最後に、STEAM教材とは少し違うが、面白い教材が展示されていたので紹介する。その教材とは、SMBCコンシューマーファイナンス(SMBCCF)のブースに展示されていた「クエスト・オブ・ファイナンス」だ。


 クエスト・オブ・ファイナンスは、SMBCCFの社会貢献の一環として開発された「教育用マインクラフト(Minecraft Education)」のコンテンツだ。遊びながら金融に関するリテラシーを学ぶことができるというもので、無料で利用できる。


 クエスト・オブ・ファイナンスの開発には、マインクラフトを通して英語教育を行っている立命館小学校の正頭英和教諭と、日本初のプロマインクラフターであるタツナミシュウイチ氏、「リアル脱出ゲーム」の開発元でも知られるSCRAPが協力している。


 クエスト・オブ・ファイナンスの目的は、元手を使って大きな利益を得ることだ。プレイヤーの生徒には、新聞を模した教材が与えられる。この新聞には、お金を稼ぐためのさまざまなヒントが載っている。


 ゲーム内での出来事は現実世界とリンクしており、例えばゲーム内で「絶対もうかる」と怪しいことをいっている人の話を真に受けると、大損してしまう。また、知識に投資することで、将来的により大きな利益を得ることができるなど、ゴールを目指して遊ぶことで自然に金融リテラシーを学べるようになっている。


 作り込まれた素晴らしいコンテンツであり、教育用マインクラフトを導入している学校は、是非利用してみてはいかがだろうか。


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