東京の地下鉄には、なぜ分かりにくい「乗り換え駅」があるのか

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2024年06月17日 07:10  ITmedia ビジネスオンライン

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都内の地下鉄は複雑で分かりにくい

 大学進学や就職などをきっかけに上京してきた人から、「東京の地下鉄は使いにくい」と言われることがある。


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 筆者自身も、予備校から大学時代にかけて都内の地下鉄の乗り換えには困惑していた。大学では鉄道研究会にいたにもかかわらずだ。ある程度大人になってそれなりにいろいろと出かける用事ができて、ようやく慣れてきた状態である。


 幼少期から東京周辺で暮らし、よく都心に出てくるような生活を送っていれば東京の充実した公共交通機関を利用し尽くせるのかもしれない。しかし、そんな人ばかりではないのである。


●こんなところに「乗り換え駅」が?


 東京の地下鉄路線図を見ると、意外な駅が近接して「乗り換え駅」になっていることが多い。逆に、近接していても乗り換え駅になっていないところもある。


 地下鉄で乗り換え駅になっている場合は、文字通り「地下で乗り換え」のケースが多い。例えば永田町駅(有楽町線、南北線、半蔵門線)と、赤坂見附駅(銀座線、丸ノ内線)は、地下で乗り換えができる。


 しかし、そのような場合はけっこうな距離を歩かされる。国会議事堂駅(丸ノ内線、千代田線)と溜池山王駅(南北線、銀座線)も、歩く飯田橋駅(JR中央総武緩行線、南北線、有楽町線、東西線、都営大江戸線)などもそうだ。


●最も多くの路線が乗り入れている地下鉄駅


 東京の地下鉄で最も多くの路線が乗り入れている駅といえば、大手町駅だ。丸ノ内線、東西線、千代田線、半蔵門線、都営三田線が乗り入れており、駅は地下のフロアを変えて井桁(いげた)のようにできている。こちらも混雑しているものの、案内が多いのでそこまで分かりにくくはないといえる。


 ここまで挙げた例は、改札を出ることがあっても地下で乗り継げるものばかりだ。地上を通って乗り換え、というものではない。


 しかし近年は、地上乗り換えの駅が増えてきている。


●「約270メートル」歩く乗り換え駅も


 2013年3月に東京メトロ日比谷線と都営地下鉄の岩本町駅が乗り換え駅になって以降、2018年3月に東京メトロ有楽町線の新富町駅と日比谷線の築地駅が乗り換え駅に、同時に東京メトロ日比谷線、都営地下鉄浅草線の人形町駅と東京メトロ半蔵門線の水天宮前駅も乗り換え駅になった。2020年6月には東京メトロ銀座線、丸ノ内線、日比谷線の銀座駅と有楽町線の銀座一丁目駅が乗り換え駅になった。


 また、地下乗り換えではあるが、比較的歩かなければならない乗り換えが2020年6月に誕生した。東京メトロ銀座線の虎ノ門駅と日比谷線の虎ノ門ヒルズ駅である。


 なお、以前から地上乗り換えの駅として、東京メトロ丸ノ内線と都営大江戸線の本郷三丁目駅、都営浅草線と大江戸線の蔵前駅がある。蔵前駅については、都営地下鉄のWebサイトに「約270メートル」と距離まで書いてあるほどである。


 紹介した駅については地上でそれなりの距離を歩かなければならず、公式に乗り換えができると知って、初めて便利に利用できることを知った人も多いかもしれない。一方、それぞれの駅が近いことはふだん利用している人や地元住民は知っているので、地下鉄はそのあたりを踏まえた上で「乗り換え駅」として位置付けたのかもしれない。


●乗り換え時間を「30分限定」から「60分」に


 地上乗り換えの場合、地下通路のように案内をあちこちに付けるわけにはいかず、迷いやすいという課題もある。しかも、乗り換え時間は30分限定。どこかで一休みしていれば、また初乗りになる。


 そこで東京メトロと都営地下鉄は2020年6月、改札外乗り換えの時間を30分から60分に拡大した。初めて地下鉄を利用する人はもちろん、全ての利用者にゆとりを持った乗り換えを可能にするのが理由である。


 虎ノ門駅と虎ノ門ヒルズ駅の乗り換えが可能になり、銀座駅から銀座一丁目駅の乗り換えも可能になった。特に虎ノ門ヒルズ駅に関しては、60分という時間を利用して虎ノ門ヒルズ内の商業施設を楽しんでくださいね……という意図があったのかもしれない。


 状況が分からない人には迷ってもいいだけの時間を、状況が分かる人には何かを楽しめる時間を、ということで乗り換え時間が60分になった。これにより、ほかの分かりにくい乗り換え駅も便利になったといえる。


●なぜ、分かりにくい乗り換え駅が生まれたのか?


 それにしても、なぜ都内の地下鉄で乗り換えが分かりにくい駅ができてしまったのか。


 理由としては、地下鉄の利便性向上がある。乗り換え駅が設定されることで、この駅で乗り換えても「損をしない」ことが利用者に伝わり、多くの人が便利に地下鉄を利用できる。一見分かりにくいとはいえるものの、それまでのように知っている人しか知らない、しかも「損をする」状況を改善しようとして、ここで取り上げたような“分かりにくい乗り換え駅”が誕生したといえる。


 東京都心部は、特に地下鉄の駅が多い。しかも、意外な駅が近接している。銀座一丁目駅は、その最たるものだろう。そういった駅を乗り換え駅として扱わない、運賃を通しで計算しないとなれば、利用者のスムーズな移動を妨げることになる。分かりにくいけれども、利便性を確保し多くの人に利用してもらうために、乗り換え可能な駅を増やしてきたのだ。


 例えば、都営新宿線岩本町駅の場合、秋葉原駅に乗り換えられることを示すことで、便利な駅であることを伝えられる。


 岩本町駅と東京メトロ日比谷線の秋葉原駅の間には神田川があり、両駅は別の街にあると考えがちだが、橋を渡れば秋葉原エリアであり、書泉ブックタワーもある。同書店はマニアックな趣味の本が多くそろっていることで知られる。乗り換え駅に指定することで、アクセスできることを示せるわけだ。


 そういう意味でも、分かりにくい地上乗り換えが存在することは、意義があるといえる。


(小林拓矢)


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  • 某地下鉄駅入口前で、不安そうにキョロキョロウロウロしてた御婦人が、唐突に通行人に「〇×駅ってどこですか?」と訊き始め(まさにその駅前で)訊かれた方が驚いて「ココですよ!」と言ってた。地下駅という概念が無い人も居る
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