約20万円でも「Xiaomi 14 Ultra」が想定以上の反響だった理由 ミッドレンジは“企業努力”で価格を維持

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2024年06月17日 12:11  ITmedia Mobile

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日本で待望の発売となったフラグシップスマートフォン「Xiaomi 14 Ultra」

 エントリーモデルやミッドレンジモデルを中心に日本で販売を伸ばしてきたXiaomiだが、フラグシップモデルの投入は見送られてきた。型番の最後に“T”のつく費用対効果を重視したハイエンドモデルは導入されていた一方で、Xiaomiの後に数字を冠したフラグシップモデルは発売されてこなかった。こうした状況を変える1台になったのが、5月16日に販売を開始した「Xiaomi 14 Ultra」だ。


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 2月にグローバル版が発表された同モデルは、そのカメラ性能の高さや、装着するとまるでデジタルカメラのような撮影が可能になる「Photography Kit」が大きな話題を呼んだ。日本では、キャンペーンでこのPhotography Kitが付属。キャリアモデルとしての展開はないが、KDDIは「au +1 collection」として同モデルをauショップなどで販売する。また、MVNOではIIJmioが独占的に取り扱うことを表明した。


 一方で、フラグシップモデルゆえに、その価格は約20万円(税込み、以下同)と高い。日本ではオープンマーケットの市場がまだまだ小さく、ハイエンドモデルとなると、その数はさらに少なくなる。ここに、Xiaomi 14 Ultraを投入した勝算はどこにあるのか。Xiaomi Japanで取締役社長を務める大沼彰氏と、商品企画を統括するプロダクトプランニング本部長の安達晃彦氏にお話を聞いた。


●Xiaomi 14 Ultraの発売はユーザーからの要望が全て 反響は非常に大きい


―― ついにフラグシップモデルを日本で発売できましたが、その経緯や背景を教えてください。


大沼氏 昨年(2023年)の発表にさかのぼりますが、昨年は、日本でのビジョンや事業としてどうやっていくのかといったお話をしました。その中で、1つ目の扉を開けたつもりです。私の思いとして、その扉をどんどん開けていくというお約束もしました。(Xiaomi 14 Ultraは)その第2弾で、次の扉を開けたというのが大きなメッセージです。


 Xiaomiは日本に来たばかりで、他のメーカーと比べるとまだまだ歴史が浅い。しっかりブランドを立てていかなければいけないのは、課題の1つです。その課題を解決するのに、フラグシップモデルは最適です。やはり日本の皆さまにはグローバルの情報が入ってきますし、各メディアの方からも「いつ出すのか」というご質問がありました。そのご要望が全てだと思っています。


―― MWCで発表した際には、日本への導入が未定という状況でした。あの時点で、実は決まっていたのでしょうか。


大沼氏 認証やモノ作りなど、いろいろな手続きがまだまだ途中経過の段階でした。ただ、安達とも、これは諦めるわけにはいかない、やはり日本には必要だと言い続けてきました。ヘッドクオーター(本部)もダメとは言いませんでした。Xiaomiの中で、日本は大事な国だからです。


―― 過去のモデルと比べても、SNSなどを中心とした反響が非常に大きいと感じています。これはなぜだとお考えですか。完売している店舗もありますが、実際に売れ行きも伴っているのでしょうか。


大沼氏 数を申し上げることはできませんが、各ルートからの反響は非常に大きいと認識しています。先にグローバルで発売し、その評価があるのが1つ。いきなり出したというわけではなく、5月9日の発表会の前からいろいろな仕掛け……仕掛けという生意気かもしれませんが、盛り上げながら9日の発表につながったのは大きいと思っています。


安達氏 X(旧Twitter)でユーザーとやりとりをしていると分かりますが、今までは、どちらかというと反応する方々が海外のハイエンド商品を並行輸入するような(濃い)Miファン(Xiaomiのファンのこと)に閉じているようなところがありました。もちろん、彼らの中にも正規品を日本で使いたいというご要望はありましたが、変化したのは、今までXiaomiのスマホに親しまれていなかったであろう方々が、この商品をきっかけに弊社の技術の優位性などを語っていたことです。発売して数日ですが、そういった方々は多くいらっしゃいます。


●ライカと2年間協業してきた全てが入っている


―― ライカとの協業ということもあり、カメラ好きにも訴求できたということでしょうか。


安達氏 われわれの戦略として、カメラ好きやカメラへのこだわりが強い方とコミュニケーションをしてきましたが、結果として、意図していた以上に波及しています。カメラ系のYouTuberやインフルエンサーも、個人のご興味で紹介してくださっているところがあります。忖度(そんたく)がない、正直な感想だと思いますが、かなりポジティブな内容が多く、想定以上にその声が広がっています。


大沼氏 私たちとしては、ライカだけでなく、Xiaomi 14 Ultraで何が楽しめるのかということをいっぱいアピールしてきたつもりでしたが、それがギーク層だけでなく、その周りにまで広がってきているような印象があります。


―― 一方で、今まではシャープが日本でライカと協業している関係で、日本ではブランドを使えませんでした。今回はなぜそれが可能だったのでしょうか。


大沼氏 そこは本社側がいろいろと交渉してくれました。日本市場にこういったブランドで投入したいということを、切々と訴えていきました。


安達氏 ユーザーインタフェースのいろいろなところにライカの設定があり、画作りや色作りまで、2年間協業してきた全ててが入っています。ライカなしに出すことはありえない商品でしたね。


大沼氏 昨年のTシリーズも、日本ではライカブランドで出せませんでした。Xiaomi 14 Ultraでは、そういったインパクトも出せたと思っています。


―― 結果として、一部家電量販店では完売してしまっています。


大沼氏 このお値段なので、そうはいっても急にはなくならないと想定していたところがあります。うれしい反面、もう片方ではお客さまにお届けできていない反省があります。生産面も急ぎたいと考えています。


●Photography Kitが漏れなく付いてくる特典が「最後のダメ押し」に


―― Photography Kitが漏れなく付いてくるのも、大きかったのではないでしょうか。


大沼氏 最後のダメ押しになりましたね。これがあって何がいいのかというと、やはりお客さまの使いやすさや、驚きにつながります。今回は、製品の楽しさを知っていただきたいということで、清水の舞台から飛び降りた気持ちでつけました。


安達氏 出してみて改めて気付きましたが、別売にしていたら、ハイスペックでカメラに優れている“スマホ”という位置付けになっていました。このPhotography Kitを付けることで、ほぼカメラという認識になり、“カメラ”にスマホの機能がついているという商品としてのキャラクターがより際立ったと思っています。しかも、同梱することでお客さまをお待たせすることなくなり、買ったその日から楽しんでいただくことができます。漏れなく付けた提供の仕方も、評価されたのだと思います。


―― Photography Kit付きで20万円を切っていると考えると、ものすごく安く見えますね。


大沼氏 いろいろなものと比べたときの相場観としてですが、これが付いてこの価格は本当に安いと思います。


安達氏 比べる方はカメラに詳しいので、ライカでこれだけ撮れてこの値段は破格ということで、総じてご納得いただけています。


●日本で早く出すことに焦点を当てておサイフケータイは非搭載に


―― 今回、仕様はグローバル版に近いですが、Xiaomiは参入後、比較的早い段階でおサイフケータイに対応するなど、ローカライズにも積極的でした。やはりおサイフケータイ対応は難しかったのでしょうか。


大沼氏 それがあった方がいいことは確かで、そういったお客さまがいるのも事実です。ただし、今回は3月にグローバルで発売され、日本で早く出すことに焦点を当てました。FeliCaがなくてもいいと言っているのではなく、(FeliCaと発売タイミングの)どちらを優先するのかの決断があったということです。ついていないのは確かに事実ですが、早くお出ししたかったという思いがあります。日本だけ特殊だと部材も変わってきてしまうので、すぐには出せなくなってしまいます。


安達氏 特化した商品ですし、誰もが持っているような台数は出ないので、そこは見定めながら考えていきたいと思います。


―― 今回はオープンマーケットとして投入しましたが、反響が大きかったのはキャリアも見ていると思います。今後、フラグシップモデルをキャリアモデルとして展開していくご予定はありますか。


大沼氏 何をどう出すのかを決めているわけではなく、オープンマーケットで出すものと通信事業者が採用するもの、それと、いろいろな組み合わせ出す特殊な物という3つのカテゴリーがあり、お話をしながら決めていきたいと考えています。今はまっさらな状態ですが、商品を出したことで(キャリアが)どう評価されるかは、しっかりご意見を交換していきたいと思います。


 ちなみに、今回もKDDIさんにはau +1 collectionとして出していただけました。通信とひも付いているわけではありませんが、初めての試みなので、どうなるかは見ていきたい。auショップは展示も含めて300店舗に置いています。auショップにはわれわれの他の商品もあるので、トータルでお見せすることができると思います。


―― auショップという意味でいうと、以前発売したチューナーレスTVが好評だったとうかがいました。今回、「Xiaomi TV Max 86"」を発売したのは、その実績もあったからでしょうか。


大沼氏 今回はモニターではなく、シアターという位置付けです。auでやったからというのではなく、日本のお客さまにシアターをご提案したい思いでやっています。


●5万〜6万円台のミッドレンジに穴が空いていた


―― スマホやテレビ、タブレットも含めてハイエンドな製品を一挙に投入してきた印象ですが、一方でRedmi Note 13 Pro 5GやRedmi Note 13 Pro+ 5Gも発売しています。この狙いを教えてください。


安達氏 エントリーモデルは、4月にソフトバンクさんから「Redmi 12 5G」が発売され、幅広いお客さまにお届けできる状態になっていましたが、ミッドレンジには穴が開いていました。5、6万円台前後でそこそこパフォーマンスが出る一方で、あまりお値段が高くないミドルレンジモデルは、昨年、日本でお休みしていました。グローバルでいい商品が出てきたので、ここにFeliCaを搭載しました。台数的にも大きく期待している商品です。


 普通のユーザーといったら失礼かもしれませんが、スマホを使って日々の生活を送るユーザーには必要な十分な機能を有したモデルとして、この2機種を日本に持ってきました。2億画素カメラ、急速充電、有機ELの1.5Kディスプレイを搭載し、一昨年(2022年)のハイエンドモデルとほぼ同じようなスペックが入っています。Redmi Note 13 Pro 5Gに関してはKDDIだけでの販売になりますが、価格は4万1800円と安く、気に入っていただければ単体でご購入することも可能です。そういったことも含めて、広くご検討いただければと考えています。


―― 円安もあってミッドレンジモデルの価格もどんどん上がっている印象ですが、このモデルは安いですね。


安達氏 3年前に発売し、ご評価をいただけた「Mi 11 Lite 5G」という端末がありましたが、あちらは4万3800円でした。結果的にですが、KDDIでの価格も4万1800円で、ほぼ同じです。3年たって機能も全面的に上がった一方で、お値段はほぼ据え置きを実現できました。


 Redmi Note 13 Pro+ 5Gに関しては、より高いハイエンド級のスペックが5万9800円で手に入ります。他社が7万円、ないしは8万円の値付けをしている中では、かなり頑張ったと自負しています。エントリースマホで物足りなくなったお子様や、もう少しいろいろなことをスマホでやりたい方がステップアップとして買い替えていただくのに最適な商品です。


―― これだけ物価が上がっている中で、維持できているだけでもすごいですね。


大沼氏 大変です(笑)。ただ、そこは企業努力をしています。もともとXiaomiはハードウェアに5%以下という利益率を設定していますが、開発も含め、いろいろな部署が努力をしています。


安達氏 年間3.6億台というスケールメリットもあり、ここは弊社の強みが出てくるところです。


●2年ぶりの新機種「POCO F6 Pro」も投入 背景に端末価格の高騰


―― ほぼ同時期の5月に、ハイエンドモデルの「POCO F6 Pro」も発売しました。昨年は投入を見送っていましたが、今年、再び発売する理由を教えてください。


安達氏 日本の場合、SIMフリー市場(オープンマーケット)がそこまで大きくないので、どこまで出るかというのはありますが、一昨年の「POCO F4 GT」で反応を見させていただきました。いい商品が出てきて、お客さまにお届けできる形でご用意できそうだったので、もう1回チャレンジすることになりました。


 背景として、先ほどご質問にあったように、端末の価格がどんどん上がっていることがあります。今はミドルレンジモデルでも10万円に近づいている。ハイエンドモデルは軒並み10万円以上、中には15万円を超えているものもあります。スマホとしてハイパフォーマンスは求めたいが、そこまでの予算は取れないという方は一定数います。


 POCO F6 Proのお値段は、そこに対する説得力のある回答になっていると思います。6万9980円で現役のフラグシップモデルといっていいスペックですからね。お客さまの選択肢を増やしていきたいと考えています。


―― Redmi Note 13 Pro+ 5Gと1万円差でこのスペックは、正直驚きました。


安達氏 とはいえ、Redmi Note 13 Pro+ 5Gは日本での使い勝手を考えたモデルで、おサイフケータイや防水にも対応しています。お値段やスペックでどちらをご選択いただくか。その選択肢をご提案したい思いがありました。何でもフラグシップにしましょう、防水もつけましょう、FeliCaも載せましょうとなると、どうしても価格が上がってしまいますからね。


●取材を終えて:Xiaomi 14 Ultraがブランド力向上に貢献


 Xiaomiはコストパフォーマンスの高い端末を提供するイメージが強い一方で、ライカとタッグを組んで以降、カメラ機能にも定評のあるメーカーとしてその名が知られてきた。Xiaomi 14 Ultraは、その集大成ともいえる端末。同社の実力値を知らしめるのには、うってつけだ。実際に端末に触れてみると、Xiaomi Japanがこのモデルの導入にこだわってきた理由がよく分かる。それだけ、Xiaomi 14 Ultraは完成度が高い。SNSを中心に評判もよく、Xiaomiのブランド力向上に貢献した格好だ。


 一方で、コストパフォーマンスの高いミドルレンジモデルもきちんと投入しており、シェア拡大を目指していることもうかがえた。Xiaomi 14 Ultraのようなフラグシップモデルがあることで、そのお得感がより際立つ印象も受ける。エントリーモデルやミッドレンジモデルで同社の端末に触れ、ハイエンドモデルにアップグレードするという道筋も作りやすくなる。体制も整い、日本市場での拡大を本格化し始めたXiaomi。Xiaomi 14 Ultraの投入は、その第一歩といえそうだ。


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