入社1年目で上司の指示を拒否!「身勝手すぎる新入社員」を待ち受ける“2つの選択肢”

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2024年06月18日 16:20  日刊SPA!

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※画像はイメージです
 上司の指示を無視し、独断専行で仕事を進めながら、成果がゼロに近い社員が同じ部署にいる。入社1年目でありながら、めちゃくちゃな判断をしてトラブルが起きようと、1人で進める。学歴は高く、自信満々だ。あなたが同じ部署にいたならどうするかー。
 今回は実際に起きた事例をもとに、職場で起きた問題への対処法について考えたい。本記事の前半で具体的な事例を、後半で人事の専門家の解決策を掲載する。事例は筆者が取材し、特定できないように加工したものであることをあらかじめ断っておきたい。

◆事例:入社1年目で上司の指示を拒否

 ここは、創業40年を超える教材会社。中学、高校、大学の教科書の編集制作をする。正社員は150人を超え、売上は50億円近い。1年前に新卒として入社し、この1年間、周囲から浮きまくりの女性社員・伊藤理恵子(仮名・24歳)がいる。入社早々に配属された部署では、「細かい指示はされたくない!」と30代の女性の上司に言い放った。

 直木賞作家に原稿依頼を上司の了解なく進めてしまい、その作家が怒り、役員に苦情の電話をする失態をした。だが、反省をしない。むしろ、上司のことを「要領を得ない」と批判する。中学時からの海外留学経験が豊富で、偏差値70を超える有名私立大学を卒業していることにプライドを持っているようだ。

◆学歴以外には成功体験をしていない?

 常に上司の了解を得ることなく、次々と自分ひとりで判断し、進める。どうやら、それを「自主性」と勘違いをしている気配だ。2年目の今年4月、企画開発課へ異動となった。前の部署の上司が「手に負えない」と人事部に異動を強く願ったためと言われる。気の強い伊藤は、自分が異動を願い出たと負け惜しみを言う。

 部署でさっそく、独自の判断で仕事を進める。ここでも、40代の男性の上司に報告はせず、指示を聞かない。2年目でありながら、1年目レベルの仕事力であるのだが、本人は強気だ。なぜか、この部署の上司も伊藤を責めない。「自分は、厳しくは言いたくない」と伊藤がいないところで口にする。

 そして、同じ部署の女性の社員に「彼女の面倒をみてほしい」と丸投げをする。女性社員は何も言わない。今日も、伊藤は意気揚々とひとりで黙々とパソコンに向かう。それが仕事であるのかは、誰も知らない。

◆回答:学歴以外には、成功体験をしていない?

 大手士業系コンサルティングファーム・名南経営コンサルティング代表取締役副社長で、社会保険労務士法人名南経営の代表社員であり、全国社会保険労務士会連合会 常任理事でもある大津章敬(おおつあきのり)さんに取材を試みた(以下は、筆者のインタビューに大津さんが答えたもの)。

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 この女性についての印象で言えば、仕事の経験が浅いために十分な自信がないのかもしれませんね。学歴以外には、成功体験をしていないのかなとも思いました。その意味でのコンプレックスが強いがために上司をはじめ、周囲から仕事への指摘を恐れている。

 素直に聞き、それを今後に生かすことができない。そんな弱さがあるように感じました。自らを正当化しようとすると、結果として独善的に仕事をすることになってしまいかねないように思います。

 女性と上司との人間関係を正確に把握することは事例だけでは難しいのですが、前の部署と現在の部署の双方の上司との関係が何らかの形で影響している可能性があるように感じます。女性の言動の一部には会社員として明らかに問題があるわけですから、上司はそれを指摘し、正していくように指導しなければいけない。

 それができているようには思えないのです。ここが、最も大きな問題と言えます。

◆プレイヤーとしては大きな活躍も

 これまでの労務相談で得たものをもとにお答えすると、女性の学歴が高いことにも目を向ける必要があるかと思います。同じ大学・学部を卒業した友人の中には20代であっても、職場で大きな活躍をしている人がいるのではないでしょうか。

 それにもかかわらず、自分はそうではないと思い込み、視野が狭くなり、短い期間での成果に固執しているとも考えられうるのです。自分は価値ある人材であり、もっと活躍できると信じているのですが、結果としては会社という組織に不適合な一面があり、自らが求める成果が出ない。そこで焦りを感じ、独りよがりな言動になっているかもしれないのです。

 仮に私が上司ならばこういう社員は確かに扱いづらい面がありますが、後々に化ける可能性があると信じ、指導・育成を行います。これはあくまでも希望的観測かも知れませんが、管理職に向くかどうかはともかく、プレイヤーとしては大きな活躍をすることがありうるかも知れません。

 たとえば、1人で判断し、仕事をどんどんと進めていくようですが、上司をはじめ、環境に恵まれ、きちんと教育を受ければ大変な行動力となり、成果を出していく可能性もあると思います。上司が女性をきちんとハンドリングできるか否かは、大きなポイントになるでしょうね。

◆彼女には2つの選択肢がある

 管理する側がそのように考え、女性を育成していかないと、選択肢は2つしかなくなるはずです。1つは従順にさせ、会社や部署のルールに従わせる。これは、ある意味で女性の持ち味を潰してしまうことになりかねない可能性があります。

 もう1つの選択は、退職勧奨などで辞めさせる。後者の選択肢は当然、最終手段となりますので、私はまずはその社員が活躍できるようにしていくしかないと考えています。辞めさせるか否かは、そのような指導を続けた後で判断すべきなのです。

 ただし、上司らが女性の持ち味を潰すことなく育成しようとするあまり、会社という組織に不適合な一面に必要以上に寛大になり、何ら注意指導をしなくなるのは避けるべきです。それでは、ほかの社員たちが納得しなくなることがあります。

「あんな言動が許されるならば、ここでは仕事はもうできない」と思う人が現われるかもしれません。正直者が馬鹿を見ることになりかねないのです。事例の職場は、それに近くなりつつあるように感じます。

◆「不都合があったら、取り除け!」では人は育たない

 どんな企業であっても採用活動ではその企業にとって必要で、優れた人材を採用しようとしているはずですが、今回のような人を一定確率で雇い入れてしまうことはありえます。人事は仮に問題のあると思われる人材を採用してしまった場合であっても、まずは責任を持って育成をしていくといったスタンスを明確にして、特に管理職間であらかじめ共有しておくべきでしょう。

 採用時に思い描いた人材でなかったとしても、すぐに辞めさせることはしない姿勢を全社に伝えていくべきなのです。辞めさせればいい、あるいは他部署へ追いやればいい、といった考えが浸透すると管理職らがなんとか育てようとする思いがなくなり、実際に育てなくなるのです。

 私が管理職の頃、その後、役員になった後も気をつけているのは、そのあたりです。各部署の管理職の判断でたとえば、こんな面倒な人材は辞めさせればいいとは思わず、なんとか育てようとする組織風土をつくることは重要です。各部署で辞めさせるか否かという議論が行われる状況は、好ましくありません。

 全社でなんとか育てようとする組織風土があれば、管理職や経験の豊富な社員がその社員を育てようと試みるはずです。少なくとも、各部署の現場レベルにはその思想が必要です。「不都合があったら、取り除け!」といった組織風土では人は育ちません。もっとも、どのような指導・育成をしても、自らの行動を変えようとせずに問題行為を繰り返す社員であるとすれば、組織として雇用し続けることが難しくなるのも事実です。その見極めをどこでどうつけるかが、人事として難しいのではないでしょうか。

◆取材を終えて…

 この会社を見ていると、人事が採用や定着、育成に力を入れている気配が全然しない。「不都合な人材ならば、関わるのをやめよう」が蔓延している。だからこそ、今回のようなエキセントリックな高学歴社員が野放しとなり、やりたい放題になる。

「あんな言動が許されるならば、ここでは仕事はもうできない」と思う人が増えているのか、離職者は20代を中心に目立つ。これでは、会社として発展はしないのではないだろうか。役員や管理職の責任は大きい。

<TEXT/吉田典史>

【大津章敬(おおつあきのり)】
1994年から社会保険労務士として中小企業から大企業まで幅広く、人事労務のコンサルティングに関わる。専門は、企業の人事制度整備・ワークルール策定など人事労務環境整備。著書に『中小企業の「人事評価・賃金制度」つくり方・見直し方(日本実業出版社)』など。全国社会保険労務士会連合会 常任理事

【吉田典史】
ジャーナリスト。1967年、岐阜県大垣市生まれ。2006年より、フリー。主に企業などの人事や労務、労働問題を中心に取材、執筆。著書に『悶える職場』(光文社)、『封印された震災死』(世界文化社)、『震災死』『あの日、負け組社員になった…』(ダイヤモンド社)など多数

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