まだ間に合う?AI・半導体ブーム【Bizスクエアで学ぶ投資のキホン#21】

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2024年06月26日 07:04  TBS NEWS DIG

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エヌビディアの時価総額が一時世界一に!今からでも乗るべき!?AI・半導体ブーム

――今日のテーマは「まだ間に合うのか。AI・半導体ブーム」。もう遅い?上がり過ぎた?と感じている方も多いのでは。

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ニッセイ基礎研究所 井出真吾氏:
株価という意味では、今後も乱高下は続くと思う。目先も大きめに下がる可能性はなくはないが、もう少し長い目で見れば今から乗っても、十分波に乗れると思う。なぜそう考えるのかというところをこれから解説する。

ニッセイ基礎研究所 井出真吾氏:
エヌビディアの株価は6月18日、マイクロソフトを抜いて世界1位(3兆3400億ドル(約526兆円)になった。2023年頭は17、18ドル。それが今、もう6倍、7倍ぐらい。2年も経たないうちにすごい。驚くべきは時価総額の大きさ。526兆円。円安で換算が大きくなっているが、この526兆円はトヨタの10倍。トヨタ10個分。マイクロソフトも同じぐらいだから、こんな(規模の)会社がアメリカに2つある。ちなみに日本のGDPは2023年度が596兆円。(ほぼエヌビディアの株価と一緒!?)そのうち、エヌビディアに日本全体が抜かされるのではないか!?さきほど「トヨタの10倍」という話をしたが、日本企業の時価総額トップから80社を合計しても、エヌビディア1社に届かない。

――アメリカのすごさを感じさせる。エヌビディアは6月から株を10分割したが、この意味は?

ニッセイ基礎研究所 井出真吾氏:
「株式分割」は何かというと、「元々1株だったものを複数株に分ける」という文字通りの「分割」。エヌビディアの場合は1株を10株に分割したので、分割前の株価は大体1株1200ドルぐらいだった。それを10個に分けたから1株あたり120ドルぐらい。120ドル×10株に変わったということ。それで何が嬉しいかというと、株式の売買がしやすくなる。

――1株が安くなって、参加しやすくなる?

ニッセイ基礎研究所 井出真吾氏:
その通り。今まで1200ドル出さなければ1株買えなかったのが120ドル位で買えるようになったので、小口の投資家でも買いやすくなったということだ。「株価が10分の1に下がったというと、元々株を持っていた人は10分の1に目減りしたのか?」というと、「120株を10株持っている」計算になるので、理論上は価値は全く変わらない。また購入単価が買いやすくなるし、売るときも、今までだったら1200ドル分まとめて売らなければなかったのが、半分だけ売ることもできるようになった。購入単価も売却単価も下がったことによって流動性が上がる。投資家からすると、売買の自由度がより買いたいときに買える、売りたいときに売りやすくなるというメリットがある。

――それを聞くと、もっと他の企業も分割していけばいいと思うが。

ニッセイ基礎研究所 井出真吾氏:
アメリカでは株式分割は当たり前のように行われている。むしろ、日本の方が株式分割にはまだまだ消極的。ただ、企業のコストが増えてしまうこともある。

エヌビディア時価総額が一時世界一に 投資信託との関係は!?

エヌビディアの影響で、S&P500や、ナスダックも最高値を更新し続けている。
これを牽引しているのが、エヌビディアだ。

ニッセイ基礎研究所 井出真吾氏:
エヌビディア一強と言ってもよいかもしれない。例えば我々がエヌビディアに投資するときに、NISAの成長投資枠で1株120ドルぐらいで、エヌビディア株を買うことはできるが、それはNISAという枠を通じて、アメリカ株を買うことになるので、儲かったとしても、アメリカでは税金を払わなくてはいけない。

――NISA枠でも税金が引かれてしまう?

ニッセイ基礎研究所 井出真吾氏:
アメリカ株を買った分は、アメリカに払う税金がかかる。これは避けられない。それに対してS&P500とかナスダックの連動型の投資信託がある。こうした日本の投資信託を買うと、ファンドの中ではエヌビディアで儲かった分はアメリカに税金払わなければいけないが、日本の分はNISAだから無税になる。例えばナスダック100という指数には、エヌビディアが8%ぐらい組み入れられている。S&P500でも7%弱、オールカントリーいわゆる全世界株式でも3.7%。だからエヌビディア株を直接買わなくても、こういう投資信託を持つことで間接的にエヌビディアに投資することもできるし、同時にリスク分散もできる。
例えば毎月1万円、S&P500買ったとしたら、そのうちの678円はエヌビディア株を買っているということ。

データセンター向けGPUでシェア世界一

エヌビディアとは一体どんな会社なのか、そしてその強さの理由は?

ニッセイ基礎研究所 井出真吾氏:
エヌビディアは、グラフィックボードに使うGPUを作っている。GPUは「画像処理半導体」といわれる。よく知られてるのがCPU(中央演算処理装置)。CPUは処理を1系統で、順番に処理していく。パワーがあるので大きな処理を1本流せる。それに対してGPUは、複数の小さな処理を同時並行でできる。例えるとCPUは、2tトラック1台。たくさん荷物を運べるが、1軒1軒のお宅を順番に回っていかなければいけない。それに対して、GPUは宅配ピザのバイクが100台あるようなイメージ。荷物は少ししか積めないが、同時に100台でバーンと行くことが出来る。いろんな処理を同時にできるという違いがある。元々はゲーム向けに使われていたが、GPUがAI向けに使えることにある時からみんなが気づき始めて、AIに使うようになった。しかもそのAIが、爆発的に拡大している。中でも、エヌビディアのGPUはデータセンター向けがすごく強くて、絶好調。

ニッセイ基礎研究所 井出真吾氏:
例えば日本だけでも2024年以降、データセンターを新しく作ろうという計画が北海道から、九州まで37社44拠点もある。これらのデータセンター全部というわけではないが、エヌビディアのGPUへのニーズは相当世界中にある。

――日本でも世界でもデータセンターを作っていく動きがある。まだまだエヌビディアの見込みはあるということか。

ニッセイ基礎研究所 井出真吾氏:
そう考えていいと思う。株価自体は乱高下すると思うが、エヌビディアに限らず半導体全般の業績はまだまだ拡大が期待できると見ていいと思う。

アメリカの調査会社ガートナーによると、2024年の人工知能向け半導体の世界市場規模は2023年と比べて33%増加し、2024年で710億ドル。そして2027年には1194億ドル…もうトントン拍子で上がっていく。

ニッセイ基礎研究所 井出真吾氏:
この予測によると2023年を起点に、2027年まで4年間で年率平均22%需要拡大が見込まれている。本当にそんなに増えるのか!?と不思議に思う方もいると思うが、AIを使ったビジネスそのものが伸びるかどうかは私自身まだ懐疑的なところある。AIが実際本当にそんな儲かるのかどうかよくわからないところもあるが、一方でエヌビディアが作ってるのは、AIのビジネスそのものではなく、AIビジネスに使う道具の「GPU」。昔、19世紀の半ばにゴールドラッシュがあり、アメリカでみんなが金を追い求めて金鉱脈に行った。あの時に一番儲けた人は金を掘った人ではなく、金を掘るためのスコップやつるはしを売った人だという話がある。(AIが金ならば)金を掘るための道具を作って売っているのがエヌビディアだ。
そう考えると、AIビジネスそのものが期待しているほどうまくいかなくても、その道具を作っているエヌビディアは、売ったらそこで売上・利益になる。そういう意味では、そんなに心配はいらないのかなという気もする。

――少なくともこれを見るだけでも2027年までは年率22%で伸びていくと見られている。

ニッセイ基礎研究所 井出真吾氏
もちろん上振れする可能性もあり、下振れする可能性もあるが、少なくとも、右下がりという話には多分ならないと思う。一時的に下がることあったとしてもまた拡大していく。これは間違いないと思う。

エヌビディア一強 どこまで続く?

――本当にエヌビディアは一強であり続けるのか?

ニッセイ基礎研究所 井出真吾氏:
エヌビディアにもリスクは大きく2つあると思っている。まず1つはライバルが出てくること。今、エヌビディアはGPU市場で独占状態。その結果、単価がものすごく高い。エヌビディアの営業利益率は50数%ある。1個売り上げたら、そのうち50数%が利益になるわけだから、相当単価が高い。そのぐらい殿様商売ができている。ということは、同じようなものを供給するライバル会社が出てきた瞬間に、単価が急に下がるリスクがある。ただ、エヌビディアの場合上手なのが、物を作って売るだけではなく、顧客と一緒にソフトウェア開発もやっている。データセンターと一口にいってもそのデータセンターによって取り組んでることが違う。システムの構成も違う。データセンターの先にいるクライアントも当然違うので、データセンターごとに違うソフトウェアが必要。ソフトウェアも一緒になって開発している。お客さんの課題解決を一緒にやっているので、エヌビディアの顧客にとっては、もう完全に業務に組み込んでいる。ライバルが出てきたからといって簡単に置き換えるわけにいかない。

――かゆいところまで手が届くということか?「だったらエヌビディアにお願いしよう」と。一度そのデータセンターを作ってしまえば、以降新しいものに変えるときも、エヌビディアのソフトウェアで出来上がっているから、エヌビディアの商品で置き換わっていくと。

ニッセイ基礎研究所 井出真吾氏:
よほど安いものが出てきたら変えようかなというユーザーも出てくるかもしれないが、今のところまだそういう状況にはない。ただもう1つのリスクとして、「GPUを必要としないAIの技術」が開発されつつあるらしい。

――それが実現されたら、厳しくなりそうだ。

ニッセイ基礎研究所 井出真吾氏:
GPUがいらないAI技術が確立されるという話になった瞬間に、エヌビディアは死ぬかもしれない。先ほども株価はまだ乱高下すると思うと言ったが、株価が上がったとき下がったとき、その背景に何があるんだと。単に人気だから、みんなが買って上がっているのか、実力を伴って上がってるのか、大きく下がることがあったとしたら、それはライバルが出てきたのか、そもそもGPUはもういらないという話になってきたのか、その背景をきちんとチェックしてから判断をしてほしいと思う。

――続いては、関連する分野を見ていく。

ニッセイ基礎研究所 井出真吾氏:
GPUに限らずAI半導体のブーム・需要拡大はまだまだ続くと思うが、やはりデータセンター関連の株は好調。データセンターに特化した不動産投資信託(REIT)も出てきている。データセンターは大量の電気を使うので発熱もすごいので冷却装置とかも一応、半導体関連で位置づけられる。実際、アメリカの冷却装置企業でも8割ぐらい株価上がっているところがある。

――しっかりと関連分野も上がってきていると。

ニッセイ基礎研究所 井出真吾氏:
エネルギー関連も、効率的にエネルギーを発電して供給する企業もある。あと注目は、半導体の部材。特にウエハーは半導体の基本材料だが、今主流はシリコンウエハー。そして次の新しいものが「シリコンカーバイド」。炭化ケイ素を使ったウエハーが出始めている。これは消費電力半分で済むので、中国も電力規制しているし、日本でも電力不足で、データセンターを全部作れるのかという疑問もあるが、消費電力が半分で済むとなるといずれ需要はシリコンカーバイドの方に移っていく。移り始めている。ただ生産コストの面でそこまで優位ではないので、一気に移るという事はないが、じきに移るのではないかと思う。半導体関連といっても色んな切り口があるので、幅広く投資しておくことで半導体の中でもリスク分散ができる。

まだ間に合う? AI・半導体ブーム

――では、改めてAI・半導体ブームに乗るには?

ニッセイ基礎研究所 井出真吾氏:
難しく考えなくていい。まだまだ需要は拡大する。ただ株価は乱高下する。アメリカの利下げ開始がもっと後ずれになるとか景気が腰折れするとかいろんなリスクがあるが、半導体の需要そのものが縮小するとは考えにくい。株価は下がったところで、少し買う、また下がったところを少し買うとか、難しく考えずに長期的には上がる、と投資していってもよいと思う。ただアメリカの半導体産業がここ数年すごく強いのは、政府の補助金のおかげでもある。株価が上がった、下がった、その理由を確認して欲しい。そもそも需要やライバルの存在、政府の補助金。バイデン政権が出している大規模な補助金制度が仮に2025年以降、次の大統領下で補助金の打ち切りや縮小という話になったら、当然厳しくなる。そういうところをよくチェックしてもらうといい。

――株価が下がった理由をしっかりと見極めて投資に生かしていくということが大事か。

――最後に投資のプロの井出さんから相場の格言です。「上がった相場は自らの重みで落ちる」。これはどういう意味でしょう。

ニッセイ基礎研究所 井出真吾氏:
バブルみたいなことをイメージしている格言。上げ相場は実力を伴った上げ相場だったらいいが、そうでなければ、行き過ぎた相場は一旦実力水準まで下がるということだと思う。今のアメリカの半導体・AI関連株は、若干高過ぎるし期待が高まり過ぎているので、多少10%ぐらいの調整余地はあると思う。だから日本の半導体関連も少し買われすぎていたので、ここのところ調子悪い。そういうことを言ってるだけの話。

――リスク分散する上では、先ほど紹介してもらった投資信託に十分含まれているので、そういうところからトライしていくのもよいか?

ニッセイ基礎研究所 井出真吾氏:
例えば「ナスダック100」は半導体以外のハイテク企業もたくさん入っているし、S&P500だったら、ハイテク以外の伝統的な産業も入っているので、リスク分散をするのもありだと思う。

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