加速する“前髪命”カルチャー、アイドル・美容系YouTuberの影響で「前髪クリップ」も定番化 立役者は意外な企業?

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2024年06月26日 08:00  ORICON NEWS

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女性に人気の前髪クリップ(C)2024 SANRIO CO.
 2010年代ころから、若い女性の間でかつてないほど重要度を増した“前髪”へのこだわり。ある調査では、実に8割以上が「前髪がきまると自己肯定感が上がる」と回答したほどだ。スタイリング剤やヘアアイロンといった前髪専用アイテムも増えているが、中でも「前髪クリップ」という商品はここ10年ほどで一気に定番に。その普及に貢献したのは、日本のカワイイ文化を牽引してきたあの会社だった!? 前髪がうねりがちな梅雨に、昨今の“前髪命”カルチャーについて深掘りしてみた。

【画像】衝撃!“あそこ”もしっかり再現…可愛すぎるサンリオ前髪クリップ

■AKB48から美容系YouTuber、そしてすべての女子へ…メイクよりも“前髪命”が常識に

 かつて前髪への強いこだわりを公言していたアイドルといえば、元AKB48の渡辺麻友さんだ。どんなに激しく踊っても乱れない完璧な前髪で知られた彼女だが、「前髪のスタイリングだけで2〜3時間かける」と明かし、メンバーを驚かせたこともあった。

 それから時を経て、今や“前髪命系女子”はアイドルだけではなくなった。ヘアスタイルの中でも、なぜピンポイントに前髪にこだわるのか? その答えを示唆するような調査を、ヘアケア剤を展開するメーカー・マンダムが2020年1月に行っている。

 同社が15〜29歳女性を対象に実施したアンケートで、「SNSにアップする写真を撮る前にやること」として「前髪を整える」と回答した人は74.7%。これは次点の「リップや口紅を塗る」(56.3%)よりもはるかに多かった。理由として最も多かったのが「前髪で印象が変わるから」というものだが、中でも目からウロコだったのが「髪型は画像加工がしにくいから」という回答だ。

 最近ではリアル嗜好も出てきたものの、若い女性にとって、ビューティ系カメラアプリで写真を撮り、さらに画像加工をした上でSNSにアップするのは常識だ。後からいくらでも修正できる肌感やメイクに対して、髪型、特に顔の印象を左右する前髪はカワイイを作る、いわば最後の聖域なのだ。かくして美容系YouTuberはこぞって前髪テクを発信し、SNSにも“#前髪命”のハッシュタグ付き投稿が数多く見られるようになった。

 前髪命カルチャーが広がる中、若い女性の間で新たな定番アイテムとなっているのが「前髪クリップ」だ。前髪クリップとは文字通り前髪専用のヘアクリップのことで、勉強やデスクワーク、食事、洗顔、メイクなどの際に前髪が邪魔にならないように仮留めするために用いられる。

 ポイントは通常のヘアクリップとは異なり、面で髪を押さえるため跡が付きにくいこと。構造はシンプルながら、跡をつけないための面の広さやクリップの強度など細かいこだわりが詰まっている。

 大切な前髪を乱れやうねりから守る便利なアイテム。とはいえ、ここまで普及したのには理由があった。キーワードは「カワイイ」だ。

 あくまで実用品ながら、昨今はアニメやマンガなどのキャラクター付きのカワイイ前髪クリップが目立つ。その起源を辿ったところ、「前髪クリップに初めてキャラクターを付けたのは当社だと自負しています」という証言を、日本のカワイイ文化を牽引してきたサンリオから得られた。

 「サンリオが初めて前髪クリップを発売したのは2013年。当時は今ほど一般的ではなかったものの、“前髪用”をうたったシンプルな形のヘアクリップはありました。キャラクターを付けるというアイディアは、『カワイイを作るためのアイテムなら、カワイイものが欲しい』という1社員の提案からでした」(サンリオ商品企画担当、以下同)

 商品第1弾は、ハローキティのリボンだけが付いた前髪クリップ。当初より売上は好調だったが、本格的にブレイクしたのは2014年にキャラクターの“顔”のデザインを付けた前髪クリップを発売してからのことだという。

 「その頃から、美容系YouTuberという存在が増えた印象があります。その方々がメイク動画でサンリオの前髪クリップを付けてくださり、それをご覧になって購入される視聴者さんも多かったのかなと思います。コツコツ売れていた前髪クリップですが、その頃から一気に人気商品へと駆け上がっていきました」

 本来は人に見せないメイクをする姿を、可視化させるのが美容系YouTuberの仕事だ。実用品でありながら画面映えもするキャラクター付き前髪クリップは、隅々までカワイイにこだわりたい美容系YouTuberにうってつけの商品だったのだろう。

 なお、2014年はInstagramが日本でサービスを開始した年でもある。また2017年にはTikTokが日本に上陸し、たちまち若者の間で人気に。“前髪命”カルチャーとSNSの関係は前述した通りで、前髪クリップが定番化していった背景には複合的な時代の後押しがあったようだ。

 今や前髪クリップもアニメやマンガのキャラクター、果ては食品サンプルが付いたものまで豊富な商品が世に出回っているが、パイオニアであるサンリオが他の追随を許さないのは、何よりも「機能面」であると自信を滲ませる。

 「第1弾商品の開発当時からもっとも重視してきたのは、『大切な前髪のカワイイを守る』ことです。クリップ部分はしっかりホールドしながら跡がつかない、うねらない、使いやすいという点にこだわり、オリジナルで型から起こしています」

 カワイイは大前提ながら、実用性にこだわってきた同社だけに、ユーザーの意外な使用方法に驚いたこともあったという。

 「最近は、外で当社の前髪クリップを付けている方を見かけることが増えました。もともとお家で使うことを想定した商品だったので、最初は『外し忘れたのかな?』と思ったんです(笑)。でも、今は推しのキャラクターグッズを身に付けるのが当たり前の世の中。実用を超えて、カワイイ目的で付けてくださるのはとてもうれしいです」

(文:児玉澄子)

(C)2024 SANRIO CO.,LTD. 著作(株)サンリオ

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