チャールズ国王のあいさつ全文=両陛下訪英

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2024年06月26日 11:01  時事通信社

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時事通信社

 25日夜、英国のバッキンガム宮殿で開かれた晩さん会で、チャールズ国王が述べたあいさつの日本語訳全文は次の通り。

 天皇皇后両陛下

 こよい、両陛下をバッキンガム宮殿にお迎えできることを、私と妻は大変うれしく思っております。英国に「お帰りなさい」。

 両陛下、私たちの間には、深い絆で結ばれたパートナーシップがあります。400年以上にわたり、日英両国は互いに刺激を与え合い、互いの経験から学び、いろいろな要素を取り入れたり共有したりしながら、産業や、食や、文化を豊かにしてきました。私たちの趣味ですら共通のルーツがあります。19世紀後半、ウォルター・ウェストンをはじめとする英国人の登山家たちが、日本で目にした風景に魅了され、日本においてレクリエーション登山を広めるきっかけを作りました。山登りを愛する気持ちは今や多くの日本と英国の国民の皆さんが共有しており、とりわけ個人レベルで言えば、陛下と私自身に当てはまりますね!

 日英両国のパートナーシップの核心にあるのは、深い友情です。それは、歴史の教訓、とりわけ暗い時代の教訓から生まれた、国際ルールと制度の重要性に対する相互理解に基づくものです。今日、私たちはこれらの原則がかつてないほど問われる世界に直面しています。私たちが共有している自由、民主主義、法の支配という普遍的価値観が今ほど重要になったことはありません。

 日英両国のパートナーシップは、また、絶えず成長し、花開き、新たな芽や枝を伸ばし続けていくものでもあります。私たちは諸外国とは異なる絆を共有しています。どちらも島国である日英両国は、協力と技術革新の力によって、社会のための新たな解決策の創造や適応する能力を進歩のよりどころとしてきました。実際、日英両国の国民は、伝統と革新がどのように結び合いながら強化され、我々の目指す未来について理解を共有していると思います。

 このことで思い出すのは、1970年に初めて日本を訪れ、大阪で日本初の万国博覧会を見学した時のことです。当時21歳だった私は、そこで目にした技術革新の数々から、東西文明それぞれの伝統を融合し、すべての人々のために科学技術を進歩させていくことの力について強い印象を受けました。

 その後4度、私は日本を訪問し、長年日本の国民の皆さんや企業の皆さんと関わり、両国の経済やビジネスの間に築かれた見事なつながりが、このような同じ理念の上に築かれてきたのだと確信するに至りました。過去50年間、日本より英国経済へ多大な投資をしていただきました。そして、わが英国が日本企業の力強い成長の場となってきたことを誇りに思います。同時にまた、多くの英国企業が日本に進出するようになりました。

 日英両国の優秀な科学者たちもまた、共同で研究や技術に取り組み、喫緊の地球規模の諸課題に対処しています。私たちが直面している気候変動や自然環境の危機の深刻さと緊急性は、いくら強調してもしすぎることはありません。今日の私たちの世代は、力強さと決意と創造力をもってこれらの大きな課題に立ち向かうことを、将来世代への責務として負っています。両国の文化には、伝統的に自然を深く尊ぶ文化があり、民間部門においては重要な役割を担っています。日英両国の企業が、現実的かつ資金調達可能なイニシアチブの創出をけん引し、また、地球環境の理解と保護に取り組んでいる両国の研究者たちが、名誉あるブループラネット賞や日本国際賞を数多く受賞していることは、大変喜ばしいことです。

 さらに日英両国は共通の安全保障のために、かつてないほど緊密に協力しています。世界の平和と安全保障における永続的なコミットメントを表明した二つの大国として、両国は、ハイレベルな軍事演習を行い、専門的知識を共有しています。エネルギー、自然環境から、サプライチェーン、半導体に至るまで、そして、サイバーセキュリティーや持続可能な食糧供給から、防衛と産業界の協働に至るまで、日英両国政府は安定した世界を将来世代に残していくために協力しています。

 このような共通の努力のすべてを支えているのは、地理的な隔たりを乗り越えた日英両国民間の永続的な絆です。それは単にお茶を楽しんだり、天気の話をしたりすることだけを意味しているわけではありません!

 天皇皇后両陛下、私は40年近く前、日本の国会で演説をさせていただきました。その際、日英両国が文化的な交流を増やし、それによって私たちの創造性を豊かにしていきたいとの強い願いを表明しました。現在、両国間で驚くほど多種多様な文化交流や共同制作がますます盛んに行われている様子を目にし、どれほど励まされる思いであるか言葉に表せません。ちょうど本日、日本の神奈川県民ホールでは、サー・アントニオ・パッパーノ率いるロイヤル・オペラ・ハウスのメンバー130人が公演を行いました。一方、スタジオジブリのアニメは世界中の観客を魅了し続け、今年初めには宮崎駿監督の素晴らしい作品である『君たちはどう生きるか』が、アカデミー賞を受賞しました。今晩、ロンドンの劇場、ロンドン・コロシアムでは、舞台『千と千尋の神隠し』が満席の観客を前に上演されます。

 これと同じく、日本文化のシンボル的な存在の背景に英国の物語があると知るのもうれしいことです。おそらくここで、今年50歳になる、ある方について取り上げるのもお許しいただけるかと思います。彼女はロンドンの郊外で双子の妹と一緒に育ち、自らの力で起業家となり何十億ドルもの富を築いた上、UNICEFの子ども大使にもなりました。この方、ハローキティのお誕生日を、ぜひお祝いしたいと思います!

 現在、いまだかつてないほど大勢の若者が、日英両国にある世界一流の教育機関において学び、働き、生活しています。天皇皇后両陛下をはじめとして、皇族の多くの方々が英国の大学を留学先に選ばれてきたことを大変光栄に感じております。天皇陛下は、オックスフォード大学に留学した時のご経験を素晴らしい回想録に書き残されており、また、私自身もオペラ鑑賞や、フライフィッシングをご一緒しましたのでよく覚えておりますが、このように海外で過ごすという機会は、生涯にわたる友情と思い出を育みます。ところで、フィッシングについて言うと、残念ながら、最近はあまり成果が上がっていないとご報告しなければなりません。あのポケモンの名セリフ、「全部ゲットだぜ!」は、私の孫たちにはぴったりくるかもしれませんが、私自身にはちょっと高望みかもしれませんね。

 両陛下、1613年に徳川家康公は、私の先祖であるジェームズ1世にこう書き送りました。「雲と潮により何千里も隔てられてはいても、我々の領土はまるで互いに近接しているかのようです」と。あれから400年以上たった今でも、この思いは私たちの友情の中心に生き続けています。

 このように敬愛と希望をもって、私は天皇皇后両陛下と、日本国民の皆さんに、そしてこれからの日英関係の新たな400年のために乾杯をささげます。カンパイ!。 

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