「Apple Vision Pro」に約60万円の価値はあるのか? 約4カ月間使って“後悔しなかった”理由

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2024年06月27日 06:10  ITmedia Mobile

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米国での発売時から使用している「Apple Vision Pro」

 Appleの空間コンピュータ「Apple Vision Pro」が6月28日に日本でも発売される。注目度の高い製品がいよいよ日本に上陸するが、何せ「59万9800円(税込み)」と高額だけにためらっている人も多いだろう。


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 筆者は2024年2月2日の米国発売時に、ハワイに行って購入した。4カ月ほど使い続けている中で「60万円の価値があるか」を改めて考えてみたい。


●Vision Proを装着する際の注意点 かぶったまま歩いても問題なし


 Apple Vision Proは世間的にはVRやXRのデバイスという位置付けで見られているが、Appleとしては「空間コンピュータ」というコンセプトを貫いている。実際、単にバーチャル空間に入ってコミュニケーションやゲームを楽しむというよりも、さまざまなアプリケーションによって幅広い用途が期待できるデバイスだ。単機能ではなく、「次世代のMac」と言った方がしっくりくる。


 Apple Vision Proは頭に装着して使用する。後頭部を支えるバンドは、Apple Watchで腕時計のバンドを手掛けているAppleらしく、しっかりとしたホールド感で着け心地は悪くない。


 ちなみに、普段メガネをしている人がApple Vision Proを装着する場合、オプションの補助レンズが必要だ。またコンタクトレンズはソフトであれば問題ないが、ハードには非対応となっている。


 Apple Vision Proをかぶると最初は真っ暗だが、OSが起動すると目の前が一気に明るくなり周りが見渡せるようになる。もちろん、カメラで撮影した周りの様子を、目の前にディスプレイに表示していることになるのだが、これが実に美しい。まるでリアルに周りを見ている感覚になるのだ。


 Apple Vision Proをかぶった状態で部屋の中を歩いても、机やイスの角に足をぶつけることはない。このあたり、見え方のズレも存在しないようだ。また、長時間装着して、頭を動かしても酔うということはない。筆者はMeta「Quest 3」も経験済みだが、あちらも見え方はきれいなものの、若干のズレを感じてすぐに酔ってしまった。


●新感覚のUIにほれぼれ MacBook Proと接続して仕事がはかどる


 Apple Vision Proを使っていてすごさを感じるのは操作性、UI(ユーザーインタフェース)だ。目の前にアイコンが浮かぶのだが、起動したいアイコンを注視すると反応してくれるので、あとは右手の人さし指と親指をポンとはじく起動してくれる。


 基本的には画面上の押したいボタンを注視して、指でポンとはじくという動作を繰り返していく。この一連の操作が実に未来的で、全く新しいUIにほれぼれするのだ。


 ただ、もちろん、本来起動したいアプリではないアイコンを見ているときに指をはじいてしまい、別のアプリが起動してしまう、という操作ミスもたびたび発生する。とはいえ、このあたりはかなり慣れてくれば、そうしたミスも減っていくことになる。


 実際にApple Vision Proでよく使っているのが、MacBook Proとの接続だ。Apple Vision Proで手元にあるMacBook Proを見ると、2つのデバイスを連携することが可能となり、MacBook Proに表示している内容を、目の前の空間上に浮かび上がらせることができるようになる。


 例えば、自宅の狭い部屋や、出先のシェアオフィスや電話ボックス大のワークスペースなど、モニターがないような場所でも、Apple Vision Proがあれば、40型近い大きさに表示して、メールやWebでの調べ物、プレゼン資料の作成が可能となる。


●映画やスポーツ中継の視聴も楽しんでいる


 他によく使っているのが映画やスポーツ中継の視聴だ。Apple Vision Proを装着すれば、目の前に大画面が浮かび上がるので、大迫力で映像を楽しめる。


 個人的にはモータースポーツが大好きで特にF1はかならず見ているのだが、Apple Vision Proによって、メインの画面だけでなく、オンボードカメラや順位表などをまとめて見られるチャンネルを大画面にして楽しんでいる。


 ただ、本来であれば、スポーツ中継をしているDAZNがiPad向けアプリをApple Vision Proにも解放してくれればいいのが、なぜかそうした対応をしてくれていない。そのため、WebブラウザからDAZNにつないで視聴している。このあたりの煩わしさが解消してくれるといいのだが。


●英語のみ対応がネックも、VisionOS 1.2で待望の日本語に対応


 実際のところ、2月2日に購入してから6月までの間は、VisionOSが英語のみの対応、さらにはApp Storeも米国版のみしか使えないということで、Apple Vision Proも積極的に活用しているわけではなかった。


 英語のみとなると、仕事で活用したくても、メールの返事も英語でしか書けないため、実用性がかなり低かったのだ。そのため、「MacBook Proと接続する」あるいは「映画やスポーツを大画面で見る」程度しか使えなかったのだ。


 しかし、6月10日にAppleの開発者向けイベント「WWDC」の基調講演後、VisionOSが1.2となり、日本語が使えるようになった。メールの返信やWeb閲覧、原稿執筆などもやるようになった。日本語環境が整ったことで、ようやく仕事の道具として使えるようになったのだ。


 さらに6月20日には日本のApp Storeがオープンした。これにより、日本市場にしか流通していないアプリもダウンロードして楽しめるようになった。早速、「TVer」をダウンロードし、ドラマ「古畑任三郎」を大画面で見まくっている。


●「対応アプリの少なさ」「首への負担が大きいこと」が不満


 Apple Vision Proは2023年に発表された際、「iPhoneやiPadのアプリがそのまま使える」という触れ込みであったが、実際にApp Storeを検索してみると、NetflixやYouTube、電子書籍系のアプリなどは出てこない。


 恐らく、アプリ提供者側としても、動作検証などをしっかりと行ってから配布するというスタンスなのだろう。とはいえ、Apple Vision Proのユーザーはさほど多くないと思われるため、アプリ事業者としては「後回し」にしている可能性が極めて高そうだ。


 アプリの拡充がApple Vision Proにとっては重要となってくるだけに、アプリ事業者には早急に対応してもらいたいものだ。


 「対応アプリが少ない」という以外にも不満点はある。正直言って、デバイスがかなり重いのだ。目の前に装着しているため、とにかく首への負担が大きい。


 実際、筆者も使用を始めて1週間ほどで肩甲骨あたりが痛くなり、3週間ほどApple Vision Proから遠ざかっていた時期もある。その後は、リクライニングチェアに座るなどして、極力、首に負担をかけないようするなどの配慮をしながら使っている。


 既にApple Vision Proを使っている知り合いなどは、別に頭を支えるベルトや布を装着するなど、頭や首に負担がかからないよう、工夫している人も多い。筆者は2025年に50歳を迎えるということで加齢が原因であることは間違いないのだが、これから購入を考えている人も気をつけた方がいいだろう。


●初代iPhoneをハワイで購入したときと同じ満足感


 とはいうものの、Apple Vision Proを購入し、後悔などは全くしておらず、むしろ買ってよかった満足感の方がはるかに大きい。


 この感覚は、初代iPhoneをハワイに買いに行った2007年と全く同じだ。当時の初代iPhoneも英語しか使えず、アプリストアもなければ機能自体はとてもチープであった。しかし、翌年、日本でiPhone 3Gが発売され日本語に対応。App Storeも登場し、iPhoneの使い方が一気に変わった。iPhoneの登場によって、世界でスマートフォン革命が起き、さまざまな産業がスマートフォンに向くようになった。


 Apple Vision Proが、iPhoneやAndroidのように世界中の人が使うという未来は想像できないが、少なくとも、新しいコンピュータのカタチとして、MacBookやWindowsノートPCの置き換えにはなる可能性は秘めている。


 もちろん、60万円という価格設定では、大して普及はしないだろう。しかし、最近の報道で、Appleは廉価版の開発にシフトし始めたというのがあった。


 当然、自社開発のチップが進化し、処理能力が上がれば、いままでのようにカメラやセンサーを大量に搭載する必要もなくなり、簡素化され、コストは下がっていくだろう。部品が減れば、本体も小さくなり、首への負担も軽くなるのは間違いない。


 また、Apple Intelligenceに対応すれば、視線や手の動きなどで操作する必要もなくなり、全てSiriにお任せしての操作が可能となる。


 そんな未来のコンピュータを一足先に体験したいという人は、取りあえず購入するかしないかは別として、まずはAppleストアでApple Vision Proのデモを体験できる予約をするといいだろう。


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