イギリス総選挙で揺れる“移民政策”「ルワンダ計画」で金と引き換えに移民をアフリカへ強制移送【news23】

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2024年06月27日 15:12  TBS NEWS DIG

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新たな視点と独自の取材でお伝えする「eyes23」。来週、総選挙が行なわれるイギリス。争点の一つとなっているのが「移民政策」です。資金援助と引き換えにアフリカに不法移民を強制移送する「ルワンダ計画」が議論を巻き起こしています。

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「家族とともにここにいたい」“医療・介護就労ビザ”家族帯同を禁止

イギリス東部の老人ホーム「ドリフトウッド ハウス」の入居者は全員イギリス人ですが、介護を担うスタッフのほとんどは移民です。

3年前にインドから来たリシュマさん(30)も、その1人です。

入居者「とてもよくしてくれますよ。そうでしょ?」
リシュマさん「はい」

いま、人手不足が指摘されているイギリスの介護業界。医療・介護職のうち16%(約95万人)を移民が担っています。ところが、2022年にイギリスが公的に受け入れた移民の数は、過去最高の76万人に達し、政府は「年間30万人の削減」を打ち出したのです。

2024年春からは、「医療・介護就労ビザ」で働く外国人の家族帯同を禁止すると発表しました。

インド出身 リシュマさん(30)
「家族とともにここにいたい。ここで高齢者のお世話をして、愛情を注ぎ、全てを捧げていますが、私たちにも家族の支えや愛情は必要です。家族帯同を禁じるなら、イギリスには来ませんでした」

移民の強制排除「ルワンダ計画」 経済的援助と引き換えに

そしていま、移民をめぐる計画が議論を巻き起こしています。

5月にイギリス政府が公開した映像には、手錠をかけられ連行される男性の姿が映っていました。入国管理局による不法に入国した移民取り締まり強化をアピールした内容です。強制排除された不法移民が行き着く先は…

イギリス スナク 首相(4日)
「不法入国してきた人々に、“ここにいることは許されない、出ていくのだ”と伝えなくてはいけない。もし私がまた首相に選ばれたら、“ルワンダ計画”を実行します」

不法移民をイギリスから第三国へ強制移送する「ルワンダ計画」。イギリスは、なぜ強制排除に乗り出したのでしょうか。

2022年、ドーバー海峡をボートで入国しようとした人は4万人を超え、2018年の統計開始から最多になりました。

イギリス 有権者
「移民は受け入れるな。私たちが貧しくなるだけだ。住宅も医療もひっ迫している。移民を受け入れれば、受け入れるほどコストがかかる」

来週行われる総選挙で歴史的な大敗を喫するとの見方が強まる与党・保守党は、保守層の支持を取り戻すため、強行的な移民政策を打ち出しました。

こうした“強制排除”の動きに、国連は「難民条約に違反する危険な前例を作りかねない」などと、イギリス政府に慎重な対応を求めています。

ルワンダ政府は、経済的援助と引き換えに移民を受け入れるとしていて、イギリス政府はルワンダ側に、すでに約540億円(2億7000万ポンド)を支払っています。

「状況が良くなることだけを願って」母国で性暴力に苦しみ続けてきた女性は

ルワンダ計画の対象となりうる難民申請者からは不安の声が聞こえてきました。

南部アフリカ・ナミビア出身のヴェムさん(仮名・38)は、2年前に11歳の娘とイギリスに逃れてきました。母国で叔父からの性暴力に苦しみ続けてきました。

ナミビア出身 ヴェムさん
「6歳にして歩けなくなるほど虐待されることが想像できますか?そのうえ身内からは、『嘘をついている』『悪い子だ』『呪われている』『恥さらしだ』と罵倒されます」

被害は数十年に及び、恐れていた事態が起こりました。

ナミビア出身 ヴェムさん
「(当時9歳の)娘にも被害が及ぶようになり、逃れることを決心したんです。正直な話をすると、もしまだナミビアにいたら私の命はなかったと思います」

ヴェムさんは、娘から「ルワンダ計画」について聞かれることが多くなったといいます。

ナミビア出身 ヴェムさん
「“ルワンダ計画”について娘は知っています。何が起きているのか答えてあげたいのに、私自身分かりません。状況が良くなることだけを願って大丈夫と言い聞かせています」

移民の移送計画 支持・反対ともに41% 国民の間に「犯罪の温床になるのでは」という恐怖も

小川彩佳キャスター:
移民の移送計画について世論調査では、支持・反対ともに41%となっていて、イギリス国民の意見は半々となっています。

小説家 真山仁さん:
「イギリスはひどい国」と思うかもしれませんが、ブレグジットの際も移民はすごく重要な問題でした。

移民に寛大だったイギリスをはじめヨーロッパに余裕がなくなってきているということと、「犯罪の温床になるのではないか」という恐怖が広がっている現実もあるように感じます。

(支持・反対41%)という数字はあり得ないと思います。選挙期間中に、移民を追放するという政策はあり得ませんが、それくらいしないと有権者の不安に対応できないということなのかもしれません。

「イギリスはひどい」と言う人もいるかもしれませんが、日本はよほどのことがない限り移民を受け入れていないということを考えると、どちらがひどいのでしょうか。

こういうニュースを見て、日本では「だから移民はダメ」と言い出す人もいますが、そういう問題じゃないと思います。

トラウデン直美さん:
イギリス国内のことで日本と全く状況が違い、深刻な問題もあるからこそ、こうした動きが出ているのだろうと思います。

イギリス政府がルワンダに経済的援助をして“強制移送”というのは、人権上の大きな問題があると思いますし、他に方法がないのかと考えてしまいます。

難しい問題ですが、難民が出ないように、いかに世界が難民を出す国にサポートの手を差し伸べられるかというのも大きなポイントだと思います。

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<プロフィール>
トラウデン直美さん
慶応大学法学部卒
環境問題やSDGsについて積極的に発信

真山仁さん
小説家 「ハゲタカ」「ロッキード」など 最新著書に「疑う力」

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  • 「日本はよほどのことがない限り移民を受け入れていないということを考えると、どちらがひどいのでしょうか」⇒ バッカじゃねえのw
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