楽天モバイルの「プラチナバンド」は1.7GHz帯との“ベストミックス”で展開 5G速度も向上させ1000万回線の早期達成を目指す

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2024年06月27日 21:41  ITmedia Mobile

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「つながりやすさも最強へ。」をうたってネットワーク品質の向上をアピールする

 楽天モバイルが6月27日、同社のネットワークについて、2つのアップデートを発表した。1つが5G通信品質の改善、もう1つがプラチナバンドの商用サービス開始だ。同日に開催されたプレスカンファレンスで、楽天モバイルの三木谷浩史会長がネットワーク戦略について改めて説明した。


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●ネットワーク改善は「1000万回線の早期達成に向けた最重要戦略」


 三木谷氏には、携帯事業参入当初を振り返り、基地局、ユーザー、ノウハウがゼロからのスタートだったことを振り返る。2020年4月の本格サービス開始から約50カ月がたった2024年6月16日にはMNOサービスの契約数が700万を突破。2024年4月の650万回線突破から2カ月あまりで50万回線が増加し、3カ月の純増数が過去最高を記録した。


 サービス開始時からの累計契約数の推移を楽天カードと比較すると、楽天モバイルは約1.8倍のスピードで契約数が伸びているという。三木谷氏は「できるだけ早いタイミングで1000万回線に到達したい」と意気込みを語った。そして今回発表したネットワークのアップデートは、「1000万回線の早期達成に向けた最重要戦略」だと強調する。


 楽天モバイルは「つながりやすさも最強へ。」をうたい、ネットワーク品質が優れていることも訴求していく。通信キャリアのネットワーク品質を調査しているOpensignalが2024年4月に発表したレポートでは、5部門において、楽天モバイルが単独トップだった。また、楽天モバイル契約者に対して実施したアンケートによると、77.8%のユーザーが通信品質の改善を実感したと回答したという。「4Gと5Gとも、体感値でとても高い評価を得ている」と三木谷氏も手応えを話す。


●基地局の出力アップとソフトウェアアップデートで通信速度が向上


 今後は5Gエリアの拡大に注力し、3.7GHz帯で運用しているSub6の基地局が、2024年5月末時点で1万7210局に達した。


 さらに、Sub6と共用している衛星通信との干渉条件が緩和されたことで、関東地方で既存5G基地局の出力を上げることが可能になり、2024年5月から年内をめどに、関東地方での5Gエリアを2024年1月比で1.6倍まで順次拡大していく。


 なお、東海地方と近畿地方は衛星通信との干渉がないため、2023年8月から2023年12月にかけて、東海地方は約1.7倍、近畿地方は約1.1倍、5Gエリアを拡大している。


 基地局にアップデートを掛けることでも通信品質を向上させている。無線アクセス装置のDU(分散ユニット)とCU(集約ユニット)のソフトウェアアップデートを実施することで、2024年6月に全国でMassive MIMOのビームフォーミング機能を拡張した。これによって基地局のキャパシティーが増強され、通信速度と安定性が大幅に向上したという。パラメーターを最適化することで、4Gと5Gのハンドオーバーをよりスムーズに行えるようにもなるとする。


 基地局の出力アップとソフトウェアアップデートにより、セルあたりの5Gトラフィックが約2.3倍になり、5Gにつながるユーザー数が約1.5倍に拡張されたという。東京都内では、5Gエリアにおける下り速度が50Mbpsの低速セルが約64%減少し、50Mbps〜300Mbpsの高速セルが約106%上昇したデータも示した。


 「(データ通信を)使っている人も使っていない人も、基地局に近くて(通信が)速い人も速くない人も、どんどんスピードが上がってきている。より楽天モバイルは世界の最高水準に近づいている」(三木谷氏)


 米ASTと提携して国内での提供を目指している衛星通信サービス「スペースモバイル」の進展も順調だという。2024年5月には、ハワイと東京で衛星通信によるビデオ通話に成功した。スペースモバイルの提供は2026年を予定しており、「日本全国津々浦々、ブロードバンドが入る。面積カバー率100%を増やしていく」を三木谷氏は改めて意気込みを語った。


●プラチナバンドは1.7GHz帯との“ベストミックス”で展開する


 6月27日に提供を開始した700MHz帯のプラチナバンドは、狭い路地や屋内でも電波が届きやすい性質を生かし、既存の1.7MHz帯を補完するバンドとして運用していく。1.7GHz帯で運用しているデュアルバンド対応のアンテナに、700MHz帯に対応した無線機を併設することで、エリア拡大のリードタイムを短縮し、コストを抑えて展開できることも同社は強調する。


 700MHz帯の試験電波は2024年4月30日から発射している。商用サービスは主要都市部から順次エリアを拡大していく。なお、6月27日時点では東京都の一部エリアのみカバーしているとのこと。楽天モバイルの矢澤俊介社長は「かなり前倒しでスタートできたので、このペースでスピードを上げていきたい」と意気込みを語った。


【訂正:2024年6月28日10時20分 初出時、「6月24日時点」としていましたが、正しくは「6月27日時点」です。おわびして訂正いたします。】


 27日のカンファレンスでは、三木谷氏がボタンを押すと同時にプラチナバンドが開通するセレモニーも実施した。


 その後、700MHz帯エリアにいるスタッフから、700MHzに接続したスマートフォンから三木谷氏に通話をかけるデモも実施。現地の楽天モバイルスタッフが、接続しているバンドが分かるアプリを用い、700MHz帯のBand 28に接続していることも示した。三木谷氏も電話がかかってくるまでは「本当につながるのかな?」と半信半疑の様子だったが、実際に通話ができて「ちゃんと聞こえているね。よかった」「ウソじゃないってことだよね」と安堵(あんど)した様子だった。


 プラチナバンドを大々的にアピールする楽天モバイルだが、同社に割り当てられているのは下りと上り、それぞれ3MHz幅にとどまる。700MHz帯で通信速度の向上を図るというよりは、1.7GHz帯でカバーしきれない“カバレッジホール”を埋める手段として700MHz帯を運用していく。


 楽天モバイル 執行役員 副CTO 兼 モバイルネットワーク本部長の竹下紘氏は「1.7GHz帯を高密度に打っているが、周波数特性からどうしても届きにくい場所がある。全国規模でカバレッジホールを把握しているので、そこに対してプラチナバンドを打っていくケースもある。帯域幅が狭いので、都市部のカバレッジホールは1.7GHzも使ってベストミックスで打っていくのが基本的なポリシー」と説明する。


 帯域幅の少ない700MHz帯にトラフィックが集中してパケ詰まりが起こるケースも懸念されるが、「1.7GHz帯があるところでは1.7GHz帯を優先させることを基本的なポリシーとしてやっていく」(竹下氏)。Open RAN対応の完全仮想化ネットワークの知見も生かし、矢澤氏は「ベストミックスで最適な周波数を提供できるようにやっていく。そこは強い自信を持っている」と話す。


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