バレー界の「二刀流」水町泰杜が海外で見た理想の風景「ビーチバレーを老若男女が楽しんでいて...たまらない」

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2024年06月28日 10:40  webスポルティーバ

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 中学、高校、大学と、男子バレーの各カテゴリーで日本一を経験し、同年代をリードする選手としてキャリアを重ねてきた水町泰杜(たいと/22歳)。早稲田大を卒業後、Vリーグのウルフドッグス名古屋に入団すると、この春からはトヨタ自動車ビーチバレーボール部にも在籍。インドアとビーチバレーボールとの"二刀流"の道を選ぶ。

 プロのビーチバレーボーラーとして本格的に活動をスタートさせた水町は、5月頭からスロベニアでの海外遠征を実施。そして、5月10日〜11日にイタリアで開催された「AeQuilibrium Beach Volley Marathon」に参加し、実戦デビューを飾った。初めての環境、初めてのペア、初めての勝ち負け。現地で体験したこと、ビーチバレーボーラーとして目指していることを水町が明かした。

【ビーチならではの難しさと楽しさ】

――ビーチバレーボール選手としての活動は海外での遠征合宿から始まりました。どのような環境で過ごしたんですか?

「トヨタ自動車ビーチバレーボール部に入団する時から、スロベニアに行く話は聞いていました。『2週間くらいかな?』と想像していたのですが、実際は1カ月近く期間を設けていただいて、その長さに驚きましたね(笑)。トヨタ自動車の青木晋平コーチが、スロベニアで活動するクラブチームに派遣されており、そこに僕も加わって練習する、という感じでした」

――これまでもアンダーエイジカテゴリーの日本代表として、短期の遠征や国際大会に出場するために海外へ行ったことはあると思いますが、今回のような長期滞在は初めて?

「そうですね。インドアと違ってチームとして動くことがないので、今はひとりで時間の使い方や予定を決める必要があります。自由度も高いですが、その分きちんとやらないといけない。基本的には毎日、午前と午後の2部練習です。慣れないうちは練習もタフでしたが、楽しいですね」

――日本を発つ前は言葉の不安も口にしていましたが......。

「少し英語も勉強してこっちにきましたが、周りが使うのはスロベニア語なので、どうしようもないです(笑)。でも英語なら、少しずつ会話ができている実感があるのでうれしいですね」

――ビーチのデビュー戦となったイタリアでの「AeQuilibrium Beach Volley Marathon」は、初日の予選ラウンドを突破。翌日の決勝ラウンドでは不戦勝や敗者復活戦も含めて勝ち上がり、全体39位相当の成績を収めました。デビュー戦の手ごたえはいかがですか?

「言い方は悪いですが、やはり"初心者"なので予選ラウンドの初戦と敗者復活戦の2試合だけで大会を終えることも頭にはありました(笑)。だけど結果的に、2日間で12試合(1セット21点マッチ)をプレーできたのでよかったです。

 相手のスパイカーがどこに、どうやって打ってくるのか、こういうタイプの選手だからボールはここにくる、といった傾向が試合を通して見えてきて、そこに合わせて自分が動いていくのはとても楽しかった。それがハマって、ボールを拾えた時は気分が上がります」

――本格的に取り組んでみて、インドアとビーチの違いをどこに感じますか?

「ビーチは砂の上で跳ぶことや、一対一の駆け引きが難しいですね。砂に足を取られるんですが、それに対応できれば、もっとうまくプレーできると思います。アタックのジャンプも全然違いますよ。しっかりと踏み込まないとズルッと滑ってしまう。いったん止まるくらいに踏み込んで、両足で跳ぶという感覚です。まだうまくできない時もありますが、できる回数は増えてきました。

 一方で、レシーブに関しては、"捨てる・捨てない"ボールの区別がついていないので、どれも100%で追いかけてしまうから、かなり体力を消耗してしまいます。力を入れるところ、抜くところを体で覚えていきたいです」

――今大会で初めてペアを組んだ、スロベニア籍のヨシュト・レニッチ選手との関係はいかがでしたか?

「年齢は彼がひとつ下でしたが、いろんな部分で気にかけてくれましたし、日本人っぽい人柄です。僕のことは『タイト』と呼んでくれました。ただ、最後の試合(2日目の決勝ラウンド第7試合)では、ラインジャッジで相手チームと揉める場面があって、かなりヒートアップしていました。

 そこで僕から、落ち着かせる声かけができればよかったのですが、言葉の壁もありますし、『外国人選手は気にかけすぎると逆に嫌なのかな』と思うこともあって。『オッケー』『ネクスト』と言うだけでした。相手チームはふたりでしっかりと話をして、冷静さを失っていなかった。そのあたりは大事だと思いますし、僕が熱くなってしまう場面もあるかもしれない。ペアに対してどのようなアプローチをするかも、プレーしながら覚えていきたいです」

【日本でもビーチバレーボールをもっと身近なものにしたい】

――海外で初めて参加した今大会の感想は?

「これだけ大規模な大会(※)で、大勢の人たちがビーチバレーボールを楽しんでいる空間が心地よかったです。みんながワイワイ、ガヤガヤとやっているのはすごくいいなと感じました。日本だとまず見られない光景でしたから」

(※)大会は3日にわたって開催された。ビーチに100面以上のコートが張られ、同時進行で試合が行なわれる。カテゴリーは2人制、3人制、4人制いずれも男子、女子、混合が設けられ、水町が参加した2人制男子は総勢320組で争われた。

――うらやましく感じることも?

「ビーチバレーボールを通して、流れる時間や空間を本当に楽しんでいるのがいいですよね。それはスロベニアでも目にしたんです。活動拠点の施設で、僕たちが練習している隣のサンドコートで、一般の方々がビーチバレーボールをしていました。それも、高齢の方、小さい子供など、男女関係なく。施設の利用料もかかるはずなのに、それでもやりたいと思えるくらい身近なものなんだって。その風景がたまらなかったです。

 ひとりの選手として高いレベルを目指すのはもちろんですが、どちらかというと僕が実現したいのは、日本でも公園にビーチバレーボールコートが併設されていたり、そこにBARなどが出店して、規模の大小を問わず大会が開催されるといった空間を作ることなんです」

――海外でそれらに触れたわけですが、実現のために必要なことは?

「きっかけは何であれ、まずはビーチバレーボールに目を向けてもらうことから、でしょうか。日本で人気がある野球やサッカーみたいに『観戦しながらビールを飲みたい』でもいい。実際にイタリアの大会では、周りの人や選手も飲んでいますから(笑)。

たまたま遊びにきた海辺で大会が催されている、でもいいと思うんです。そうして会場が人で溢れる状態にしたい。そのためにもまずは僕が表に出て、ビーチバレーボールそのものの認知度を高めることも必要だと考えています。どうすれば広がるのかは......難しいけれど向き合っていきます」

――インドアとビーチバレーボールの二刀流を選び、海外で経験を積む。漫画『ハイキュー!!』の主人公、日向翔陽にその姿を重ねるファンも多いと思います。こうしたチャレンジを選択する面白さを感じたりはしましたか?

「日本では絶対に経験できないことを味わえていますから。最高ですよ! 確かに、『ハイキュー‼』の日向のようにサイズ的な違いや不利は、ビーチバレーボールでも感じました。でも、『やれないことはないな』とも。僕のよさはスピードや瞬発力にあると思っています。相手のブロックが完成する前に打つ、速い攻撃を展開する。ビーチバレーボールの場合、最後は一対一になるので、攻略の仕方はいくらでもあるのかなと感じます」

――日本でプレーする姿を楽しみにしているファンもいると思います。

「ビーチバレーボールのことを、少しでも『面白い』『いいな』と思ってもらえるように頑張りたいです。インドアが好きな人だったら、きっとビーチバレーボールも好きになれると思うんですよ。なので、僕が楽しんでいる姿を見て、『楽しい』と感じてもらえるような選手でありたいですね」

――プロビーチバレーボール選手として活動し、ご自身のSNSも以前より積極的に運用しているのはそのためですか?

「シンプルにビーチバレーボールのことを広めたい、という思いで投稿を増やしています。とはいえ、根はSNSオンチなので(笑)。これから頑張っていきます!」

【プロフィール】
水町泰杜(みずまち・たいと)
2000年9月7日生まれ、熊本県出身。トヨタ自動車ビーチバレーボール部、ウルフドッグス名古屋所属。身長181cm。インドアではアウトサイドヒッター。中学時代のJOCジュニアオリンピックカップ全国都道府県対抗中学大会では熊本県選抜を日本一に導き、地元の名門・鎮西高校では1年生時にインターハイと春高の高校二冠に貢献、早稲田大学でも下級生時からレギュラー入りを果たし、4年間のうち3度の全日本インカレ制覇を達成した。インドアと並行して、本格的にビーチバレーボール選手として活動する"二刀流"を選び、競技のさらなる発展を夢に描く。

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