Googleの検索システムに関する内部ドキュメントが漏えいしている――こうした内容の情報提供が5月17日、ソフトウェア会社である米SparkToroのRand Fishkin(ランド・フィシュキン)CEOに匿名で寄せられました。
ランド氏はこの内部ドキュメントを友人のMike King(マイク・キング)氏と分析、両氏が一連の経緯やドキュメントの要点をまとめた記事を公開し、大きな話題を集めています。またGoogleがこの内部ドキュメントを本物であると認めていることも注目すべき点です。
内部ドキュメントには、個人が運営している小規模サイトであることを示す特定のフラグや、サイトの権威性を計算するスコアリング機能など、大手サイトを「優遇」していることが推察できる指標がいくつか見られました。
やはり中小規模サイトは大手サイトに勝てないのでしょうか? 本記事ではその真相について解説します。
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●秘密1:ドメインの権威性
まず注目したいのは、内部ドキュメント上に「SiteAuthority(ドメインの権威性)」という指標が存在したことです。
今までGoogleの広報担当者は「ドメインの権威性」という指標の存在を否定してきました。しかし、この内部ドキュメントによると、ランキングに使われているかどうかは不明ですが、指標自体は存在していたようです。
ドメインの権威性については、SEO専門家の間では長年その指標の存在が予測されていました。内部ドキュメントからは、実際の計算方法や順位への反映の仕方は分かりませんでした。しかしもしこの指標がランキングに使用されていたら、一般的にドメインの権威性が高いといわれている大手サイトや人気サイトが検索順位で優遇され、中小サイトや新興サイトなど新しいプレイヤーは競争においてやや不利な面があります。
●秘密2:新しいドメインサイトのサンドボックス
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次に注目したいのは、「hostAge」という指標です。
この指標の存在により「サンドボックス」と専門家たちが呼ぶ、新しいドメインサイトが公開直後に上位表示され、その後に順位を下げ、ユーザーの信頼を獲得することで数カ月後に順位がまた上がってくる現象の説明ができるようになります。
サンドボックスの期間中は、新しいドメインサイトがユーザーへの信頼を築くための時間となります。例えば高品質なコンテンツや信頼できる外部リンクの獲得によって信頼性を証明できれば、検索順位が徐々に安定していきます。
Googleの広報担当者は過去にこのサンドボックスの現象について認める一方で、ランキングに関係する指標の存在は否定していました。しかし今回の情報漏えいによって指標が存在していたことが明らかになり、ここでも過去の発言との矛盾が生じています。
もし、この「hostAge」の指標がランキングに使用されていれば、新しいドメインサイトにおいて比較的早くユーザーの信頼を集めやすい大手サイトが有利で、ユーザーの信頼獲得に時間を要する中小や新興の新しいドメインサイトは、公開直後の競争においてはやや不利な面があります。
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●秘密3:小規模な個人サイトは特別扱い
続いて注目したいのは、「smallPersonalSite(小規模な個人サイト)」という指標です。
小規模な個人サイトの定義は不明ですが、専門家の間で推測されていたフラグが存在しており、これによりGoogleが意図的に小規模な個人サイトを特別扱いしている可能性があることが分かりました。
内部ドキュメントの情報だけでは小規模な個人サイトがSEOで有利か不利かの判断はできませんが、もしこの指標がランキングとして使用されていれば、小規模な個人サイトは何らかの基準に応じて検索順位が上下している可能性があります。
●秘密4:経験・専門性・権威性・信頼はさほど重要ではない?
次に注目したいのは、経験・専門性・権威性・信頼(「E-E-A-T」と呼ばれる指標)がさほど重要な指標ではない可能性があることです。
かねてよりGoogleの広報担当者はこの指標のランキングの使用を否定してきましたが、内部ドキュメントにおいても、Googleマップのレビューへの貢献に関する簡単なものと、E-E-A-Tの要素として著者情報を認識している、という2点以外は目立った情報が確認できませんでした。
E-E-A-Tが高い小規模サイトよりも、低い大手サイトの方が検索上位に表示されているケースは度々起こっています。そして、内部ドキュメントでほとんどE-E-A-Tについて記載されていないことからも、E-E-A-Tは確かにランキング要因ではなく、小規模なサイトが大手サイトに勝つ要素となるほどの重要な指標ではないことが推測できます。
●秘密5:ブランドの重要性
最後に注目したいのは、Googleはブランド名、公式サイト、関連するソーシャルアカウントなどを認識し、ランク付けやフィルタリングに使用している可能性があることです。
これは、Googleが単なるキーワードの一致だけでなく、ブランドの信頼性や社会的影響力を評価に取り入れていることを示唆しています。
大手ブランドは既に確立された知名度と信頼性を持ち、さらに公式サイトや関連するソーシャルメディアアカウントが多くのリンクやシェアを獲得しています。検索エンジンはこれを信頼性の証と見なし、ランキングに反映させている可能性があります。
一方で、中小サイトや新興サイトは、このような確立されたブランド力を持ちません。たとえテクニカルな施策やコンテンツの高品質化を徹底したとしても、大手サイトと同じ評価を得るのは難しくなります。
●リークを受けて企業は今後SEOとどう向き合うべきか?
ここまで、内部ドキュメントにおける大手サイトの優遇が推察される指標について解説してきました。リークされた1万4014個の属性(機能)と2596個のモジュールを確認する限り、確かに中小サイトよりも大手サイトが高く評価される可能性のある要素が確認できました。しかし、小規模個人サイトのフラグやE-E-A-Tの要素もあるため、これらがどのように扱われるかによっては中小サイトが大手サイトより上位に表示されるチャンスはあると思います。
コードが読める方はぜひ実物を読むこともおすすめしますが、このドキュメントの取扱には注意点があります。
それは、内部ドキュメントに記載されていた指標は、必ずしも現在のランキングに使われているとは限らないということです。今回の流出についてGoogleは公式に認めている一方で、「断片的な情報、古い情報、または不完全な情報のため、不正確な憶測(おくそく)には注意が必要」と忠告しています。
確かに、内部ドキュメントはGoogleの広報担当者の過去の発言、Google検索セントラルなどの公式文書と矛盾する点が多々あり、どれが正確な情報であるかの判断が難しいです。私の見解としては、今回の内部ドキュメントはあくまでGoogleアルゴリズムを知る参考情報に留め、引き続き公式発表の順守をおすすめします。
結論、今回の内部ドキュメントの漏えいを受けて、SEO担当者としては特段戦略を変更する必要はありません。また、もし今回の流出情報を悪用した施策を行えば、Google側もスパム行為としてすぐに対処することが予測されるため、注意が必要です。
また、今はAI Overviewといった新しい検索への変換期でもあります。次世代の検索アルゴリズムでは、コンテンツやUIが優れているサイトであれば、中小規模のサイトであっても大手サイトより上位に表示されることをGoogleに期待したいところです。
引き続きコンテンツの品質やUIにこだわり、回遊しやすいリンク構造に改善するなど、Googlebot向けではなくユーザーを意識した施策に集中しましょう。
●筆者プロフィール:田中雄太
株式会社デジタルアイデンティティに2023年にジョイン。前職の株式会社アダムテクノロジーズでは執行役員。現在はSEOエヴァンジェリスト、コンサルタント。SEO集客からの売り上げ・問い合わせ増加など、セールスファネル全体のコンサルティングが可能。『薬機法管理者』の資格を有し、表現の規制が厳しい薬機法関連分野のマーケティングにも精通。
X(旧Twitter):@yuuta_tanaka88
会社HP:https://digitalidentity.co.jp
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