「冷静じゃなかったかもしれない」昨季J1昇格を逃した清水エスパルス・秋葉忠宏監督が明かす今季の戦略とは

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2024年06月29日 07:20  webスポルティーバ

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 昨季、清水エスパルスは第41節終了時点で2位だった。最終節の水戸ホーリーホック戦に勝てばJ1に自動昇格できたが、ドローに終わり、4位にまで順位を下げた。この結果がプレーオフにも影響し、J1昇格を果たせなかった。

――昨シーズンは、最終的にJ1昇格プレーオフを戦うことになってJ1昇格を逃してしまいましたが、今あらためて振り返って、昇格できなかったことについて、どう考えていますか。

「いろいろ原因があります。たとえば、最終節の水戸戦は、僕の古巣で勝たないといけない試合で、どう準備していけばいいのか、すごく考えました。思いきり『ここで決める』という覚悟を持って試合に入るのか、普段どおり入るのか、それともアウェーなので慎重に入るべきか、ミーティングする際に3つのバージョンを用意していたんです。

 最終節で自動昇格が決まる試合だったので、結局いつもどおりにいくというのを選んだのですが、結果が出なかったので、違う選択をしたほうが良かったのかなとか思いました。こうことを含めて僕がマネジメントしきれなかった結果、昇格できなかったんだと思います」

――昇格を逃したのは、試合やそこまでのプロセスも含めて、マネジメントできなかったことも要因のひとつだと考えているのですか。

「そうですね。試合までの1週間をどう過ごすのか、ミーティングで話す内容もギリギリまで悩んで決めています。今もですが、試合まで毎日が決断の連続です。

 プレーオフの時で言えば、準決勝のモンテディオ山形戦はレギュレーション(ドローならリーグ戦の順位が上のチームが勝利)をうまく使っていくということを徹底し、ドローでしっかり勝ち上がることができました。でも、決勝の東京ヴェルディ戦は勝たないと昇格できなので、点を取ることばかり考えていた。その時点で、冷静じゃなかったのかもしれないです」

――リーグ戦のヴェルディ戦では、ホームで2−1(第8節)、アウェーでも1−0(第29節)で勝利していました。

「この2試合は、得点を挙げたあと、DFの選手を入れて逃げきる用意をして、しっかり勝てていたんです。でも、プレーオフの時は『勝たないといけない』『点を取らないといけない』という意識が強く働いてしまい、ベンチに攻撃的な選手ばかり入れ、リーグ戦で勝った時のようにディフェンスの選手を入れていなかった。だから、後半に追いつかれてしまったのかなと......。

 あの時、宮本(航汰)とかを入れていれば、1−0で勝てたのかもしれないですが、大事な試合で勝ちパターンを変えてしまった。その試合を含めて、本当にいろんなことを考えていたら、オフがあっという間に終わりました」

 清水は昨季、秋葉監督になってからは20勝6敗9分 だったが、終盤に藤枝MYFCやロアッソ熊本に負け、水戸に引き分けるなど、勝負弱さが指摘された。今年は、「勝負強さ」をテーマに掲げているが、それを実現するために、どんな取り組みをしているのだろうか。

――勝負強さを実現するために、どんな取り組みをしたのでしょうか。

「メンタル的なタフネスを求めるため、90分間相手を圧倒するため、フィジカルトレーニングのボリュームをかなり上げています。そのためにフィジカルコーチを2人体制にしました。ラクして勝てるならいいですが、勝負の世界はそんなに甘いもんじゃない。まずは、自分に打ち勝つ、キツいことから逃げないことをテーマに、かなり厳しい走るメニューをやってきました」

――「エスパルス陸上部」と言われるぐらい走るトレーニングが多いと聞きました。

「エスパルスの選手は技術レベルが高いんですが、我慢強さとか、辛抱とか、メンタル的なところが少し足りないのが昨年、見えたんです。甘えというか、どこかで自分から逃げているから、大事な試合を取りこぼしたりするんじゃないかと思ったんです。

 そのメンタルを強くするには、フィジカルのベースが必要なんです。練習は嘘つかないですし、練習量に裏打ちされた自信がすごく大事です。人がやりたくないことを逃げずにやりきる。それも1回ではなく、2年、3年を通して続けることでチームに強さが浸透していくと思うし、その厳しさに目を向けながら楽しむことも求めていくようにしています」

――具体的に、どんな練習をしたのですか。

「ボールを使用しない走りはもちろん、インターバル走やシャトルランなど、かなり走るトレーニングを増やしました。日本人はスピードがあるんですけど、スピード持久力が足りないとよく言われますし、スプリントの回数も外国人選手のほうが多いんです。僕はその両方を諦めたくないので、必然的に厳しい練習になります。

 もちろん年齢やポジションによってスピードや距離は変えますが、ギリギリのところを狙って限界を超えられるようにGPSを使って管理してやりました。試合後もGPSで距離とスピードを把握しているので、足りない選手は試合後のグランドが使える場合は、走らされています。『マジかよ』って選手は言いますが、その積み重ねが選手を強くしていくんですよ」

 フィジカルが強く、パワー系にシフトしているエスパルスだが、J1で上位に名を連ねるFC町田ゼルビア、鹿島アントラーズ、ヴィッセル神戸、サンフレッチェ広島もパワー系だ。そのスタイルは悪くないが、今季J2第16節の横浜FC戦と第18節のレノファ山口FC戦では、相手の出足の鋭さと球際での戦いに屈し、完全に後手に回った。

――強度が高いチームと戦うとプレーの精度が落ちて、苦戦する傾向にあります。

「そのとおりで、横浜FC戦も山口戦もGPSで見ると、スプリントも距離もいつもの平均以下でした。特に横浜FC戦は(相手が)前からくるのはわかっていましたし、『ここで勝てば(横浜FCとの)勝ち点差を15にできるので、かなり優位に立てる。ここで一気に(相手の)息の根を止めにいくぞ』という話をしたんです。

 でも、0−2という結果のとおり、圧倒されてしまいました。プレーの成功率も低くて、自分たちの繋ぐ展開がほとんどできなかった。もっとフィジカルが強くて、競り合いのところで負けなくなればプレーの成功率が下がることはないんですけど、まだギリギリのところで戦っているので、そこの弱さが試合に出てしまうんです」

――その2試合もそうですが、今季はアウェーで振るわない印象があります。これは、どういうところに原因があると思いますか。

「うーん、改善すべきところが戦い方なのか、メンバー選考の在り方なのか、アウェーでの過ごし方なのか、食事を摂る時間なのか、散歩のやり方なのか......いろいろ考えています。

 ただ、アウェー12試合(第21節終了時点。以下同)でもう6敗もしているので、同じことを繰り返すわけにはいかないですし、何か変化を与えてトライしていかないといけない。これとこれをやったら効果が出るかなというのはあるので、まずはやって反応を見てみたいですね」

――逆にホームでは9試合で8勝1分と強さを見せています。

「アイスタは、サポーターやファミリーが作ってくれる雰囲気が最高なんですよ(笑)。発揮できる力が2倍にも3倍にもなるので、本当に感謝しかないですね。

 試合数の2倍が優勝ペースの勝ち点だと考えているので、現在21試合で勝ち点43は、いいペースできている感じです。ただ、勝ち点は取りすぎるということはないので、できるだけ取って終盤に余裕を持って戦えるようになりたいですね。余裕が出てくれば、来年を見越して若い選手の起用も試してみたい。

 この先も甘くないし、苦しい時があると思いますが、うまく軌道修正して、乗りきってチャンピオンになったという成功体験を持って昇格したい。来シーズン、優勝を争うような展開になった時、『あの時の経験が活きるぞ』と選手に言えるし、自信を持って戦えると思うんです」

――シーズン前、秋葉監督は昇格に200%の自信があると宣言しました。シーズン後は、それを証明することになりますね。

「エスパルスは伝統があり、予算規模や、サポーター、ファミリーの数から、何から何までJ1にいないといけないクラブですし、そこでトップを争うようなクラブじゃないといけない。町田が今季J1に上がって首位争いをしていますけど、守備だけではなく、攻撃も全体を動かしながらゴールを奪っているので本当に素晴らしいですし、強い。僕らもJ2で優勝して、来年はという気持ちがあります。

 ただ、その前にこのリーグ戦をしっかり戦っていかないといけない。今は21試合で25失点と、失点がちょっと多いと思うので、その修正にしっかり取り組むこと。そして、もう連敗をしないこと。最後のホームで開幕前に言ったことを結果で証明し、サポーター、ファミリーのみなさんに喜んでいただきたいですし、僕はうまい酒を飲みたいと思っています」

■Profile
秋葉忠宏(あきばただひろ)
1975年10月13日生まれ。市立船橋高卒業後、1994年にジェフユナイテッド市原(現ジェフユナイテッド千葉)入り。1995年、U-20日本代表としてFIFAワールドユース選手権(現U-20W杯)に出場。翌1996年には28年ぶりにアジア予選を突破し、アトランタ五輪にも出場した。1997年、アビスパ福岡に移籍。その後、国内クラブを渡り歩き、監督兼選手としてプレーしたSC相模原で2010年に現役を引退した。翌2011年から水戸ホーリーホックのヘッドコーチを務めたあと、ザスパクサツ群馬の監督、U-21日本代表コーチなどを歴任し、2023年に清水エスパルスのコーチに就任。同年4月から監督として指揮を執る。

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  • 前節の首位陥落のゲームはつらいので途中からバスケットの試合をみていたよ。負けると辛いのはファンも同じ。連敗しないでせめてここで順位を維持してほしいね。
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